1. 小売業の類型

第5問

 フランチャイズビジネスのロイヤルティの算出方法に関する問題です。ロイヤルティはフランチャイズチェーン(FC)の本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)から受け取る経営指導料です。その内容は商標や商号の使用、各種マニュアルの使用、スーパーバイザーから継続的に受ける経営指導などの対価で、フランチャイズビジネスの根幹にかかわるものです。本部がきちんと経営指導ができなければ、加盟店は収益が上げられず本部にロイヤルティが払えなくなります。
 解答にあたっては、外食の場合は売上高、コンビニエンスストアの場合は営業総利益(粗利益)にそれぞれ一定割合を掛けて算出することに加えて、その算出方法をなぜ採用するのかの背景・狙いについても解答欄に書かれていればベストでした。設問の要求が2~3行ですから、用語の理解度と出題の意図をくんだ解答がきちんとセットになっていることが重要です。一部にイニシャルフィー(加盟料)と混同する解答も見受けられましたが、総じて設問の内容を理解していたようです。特にロイヤルティの種類のなかで、コンビニエンスストアの粗利益分配方式が特殊な算出方法とされています。この算出方式を理解していれば、第5問はさほど難しくなかったのではないでしょうか。

第6問

 百貨店ビジネスの特徴的な商習慣についての理解度を問う問題です。百貨店の業態特性について学ぶ際には、委託・返品制度や派遣社員制度、消化仕入れなどの商習慣は避けて通れません。こうした商習慣がフルラインマーチャンダイジングを可能にし、鮮度感がある売り場や、専門性が高い販売を実現できる利点がある一方、収益性や百貨店自身の〝売り切り力〟をそぎ、小売業界における地位低下につながったという指摘も多いわけです。
 解答にあたっては、①の委託・返品制度については、委託を「する」あるいは「される」のが百貨店なのかメーカー・問屋なのかをきちんと理解していない答案が多く、百貨店側がメーカー・問屋から販売手数料を受け取る仕組みについても言及が多くありませんでした。また、消化仕入れと混同した答案も散見されました。①がきちんと解答できた人は、②の委託・返品制度の弊害と同制度に依存する理由についてもきちんと説明できていました。ただし、設問は百貨店が依存する理由を問うているのにもかかわらず、メーカーや問屋側の依存理由だけを挙げた答案も見受けられました。設問をよく読み、意図をくんだ解答をするようにしてください。

2. マーチャンダイジング

第5問

 販売予測の方法に関する問題です。販売予測の方法には、販売員などの判断による方法、消費者調査による方法、統計的手法による方法などがあります。
 本問では、過去の販売実績からその傾向を把握し、将来の予測をする諸手法の中から、目安法と最小自乗法の内容を尋ねています。目安法については、過去の販売実績に基づくという点はわかっているものの、グラフを作成し、目測で傾向線を引いて予測を行う点を理解していない答案が散見されました。最小自乗法については、販売傾向を方程式によって捉えるという点はわかっているものの、過去のデータと計算値の間の誤差に着目するという点を理解していない答案が散見されました。同様の販売予測の方法には、両分法や移動平均法などもあり、どのような方法を採用するかは小売業の状況によっても異なりますが、予測の信頼性や費用面の経済性などを基準として、適切な方法を選択できるようにしてください。

第6問

 商品カテゴリー別の採算状況を把握する代表的な手法について問う問題です。
 粗利益貢献度分析は、商品カテゴリー別の売上構成比に粗利益率を掛け合わせた積数を、百分率で示すことによって分析します。一方、交差比率貢献度分析は、商品カテゴリー別の売上構成比に交差比率(粗利益率×商品回転率)を掛け合わせた積数を、百分率で示すことによって分析します。前者は最寄品を主体に扱う小売業のように、商品回転率が高く在庫負担の軽い業種で、後者は買回品を主体に扱う小売業のように、商品回転率が低く在庫負担の重い業種で使用します。
 答案では、粗利益貢献度分析や交差比率貢献度分析がどのようなものであるか、分からないままに記述されたものが多く見られました。また例えば「全体の粗利益に占める、各カテゴリーの粗利益の比率」を、「全体の売上高に占める…」としたものや、「単品レベルの粗利益の比率」としたものも散見されました。
 これらは実務においても有効で大変重要な分析手法です。具体的な数字を使用した求め方は、ハンドブックに計算表が載っていますので、各自確認し、覚えるようにしてください。

3. ストアオペレーション

第5問

 A店に関する与件にもとづいて、①労働分配率、②人時売上高、③人時生産性を計算する問題です。採点結果が、満点を含む高得点の方と、ゼロ点を含む低得点の方に二極化しました。
 また、計算結果に%や円といった単位が記されていなかったり、計算式が正解しているのに計算結果が桁違いであったり、といったケアレスミスが散見されました。計算結果には必ず単位を記載するようにしてください。
 労働分配率、人時売上高、人時生産性などは、小売業の経営管理上において重要な指標にしている企業が多く、ストアオペレーションの効率化の結果が、これらの指標に反映されます。とくにチェーンストアでは、労働分配率を一定水準に保ちつつ、人時売上高や人時生産性を高めていくことが、常に大きな課題といえるでしょう。
 なお、労働分配率は粗利益に占める人件費の割合ですが、売上高に占める人件費の割合として計算している答案が散見されました。また、人時生産性は労働時間1時間あたりの粗利益ですが、労働時間1時間あたりの売上高を計算している答案が見受けられました。小売業にとっての粗利益=付加価値であり、ストアオペレーションの効率化と同時に付加価値を高めることも、労働分配率を一定水準に保ちつつ、人時生産性を高めるためのポイントといえます。

第6問

 特売(ハイ&ロー・プライシング)と対比して、EDLP政策を採用した場合の小売店側のメリットについて問う問題です。EDLP政策のメリットというよりも特徴説明、あるいは特売と対比せずにEDLP政策のメリットのみを説明する答案が散見されました。そのほか、小売店側のメリットよりも顧客のメリットに重点を置いて説明している答案も見受けられました。問題文はよく確認して、出題の意図を把握してください。
 EDLP政策は、ローコストオペレーションとセットで実施するのがセオリーで、特売のような頻繁な売価変更や陳列変更などは行わず、チラシ広告なども原則として行いません。それによって、特売に比べて店内作業が省力化され、広告費も抑制されます。
 また、価格を低価格に一定化することで、特売に比べて日々の需要変動が少なく、需要予測の精度が高まるので、仕入数量を適正化して販売機会ロスや廃棄ロスを削減することも期待できます。さらには、需要の平準化が日々の作業量の平準化にもつながり、LSPの精度が高まることによって、無駄な人員配置を抑制します。
 そして、こうした省力化や効率化によるコスト削減分を、売価引き下げに反映できるような状態をつくりあげることで、顧客の支持を得て客単価アップやストアロイヤルティの向上を図ります。

4. マーケティング

第5問

 ネルソンの立地選定の8原則のうちで、中間阻止性、累積的吸引力、および競争回避の原則についての要点を問う問題です。
 全体の傾向として、競争回避の個所は記述できていたものの、中間阻止については十分な回答をされている人は少ないようでした。また都市レベルの商圏に関するライリーの法則を記載している答案も見受けられました。
 立地論は現実的にはケース・バイ・ケースです。そのために、学習の際には、結果として抽象度の高い理論や原則論を学習することになりますが、実際に適用する際の基本になるのでしっかりと要点を把握した学習をすることが望ましいと言えます。
 これらの原則論を学習する際には、一覧表を作成して取り組むことをお勧めします。表にして整理し、見直した方が理解しやすく、頭に入りやすいと思います。

第6問

 マルコフ・モデルのマーケット・シェアに関わる3つの要因とその内容について問う問題です。
 全体の傾向としては、ほとんど回答できていませんでした。P.コトラーの市場細分化の基準を回答されている答案が目立ちました。
 勉強の仕方としては、テキストの索引に出てくる用語をノートにまとめたり、表にすることをお勧めします。たとえば今回のマルコフ・モデルの場合、確率の考え方や数式などが出てきますが、こうした細かい点を理解するというよりはむしろ、用語の要点として何が言いたいのか、何がポイントなのかを抑えるような勉強をするとよいでしょう。

5. 販売・経営管理

第5問

 管理者によるカウンセリングに関する問題です。管理者が行うカウンセリングの目的は、従業員の置かれている状況を把握し、適切な助言をすることが基本になります。
 一般に、カウンセリングには、非指示的方法と指示的方法の2つがあります。今回はそれぞれの方法についての説明を求めました。非指示的方法は、カウンセリングを受ける者(クライアント)を中心にして進めて行きます。具体的には、管理者はクライアントに自由に自分の感情的な態度を表現させ、それを通してクライアント自身に自分が今後どのように行動するのかを決めさせていく方法です。
 これに対して指示的方法は、カウンセラーを中心とする方法です。具体的には、医師が問診をしながら病気を診断していくように、クライアントに関係する情報を集めて質問したり、問題点やその原因を考えたりして、クライアントが解決法を決めるための判断を助けたり助言したりする方法です。
 全体的に概要を把握した答案が多かったのですが、OJT(職場内教育訓練)とOff-JT(職場外教育訓練)のことを解答しているものや、CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)の内容を解答しているものなどが見受けられました。
 出題した非指示的方法と指示的方法には、どちらもメリットだけでなくデメリットもありますので、ハンドブックで確認しておいてください。

第6問

 店舗施設などのリース契約とレンタル契約の相違に関する問題です。リース契約とレンタル契約には、利用者にとってのメリットやデメリットも含め、さまざまな相違点があります。出題では、そのなかの「中途解約の相違点」と、「保守・修理等の費用負担の相違点」について問うています。
 まず、「中途解約の相違点」ですが、リース契約は中途契約解除が困難であるのに対し、レンタル契約は比較的自由であるということです。具体的には、リース契約は中途解除が契約上禁止されている(ノン・キャンセラブル)場合が多く、中途解約する場合は、残りのリース料全額を支払わなければなりません。一方、レンタル契約の場合は、早期契約清算金が発生する場合もありますが、中途契約解除が比較的自由に行えます。
 次に、「保守・修理等の費用負担の相違点」ですが、リース契約の場合、メンテナンスリース契約を結べばメンテナンス・サービスを受けることもできますが、費用は一般的にユーザー負担となります。また、レンタル契約はレンタル会社負担となります。リース契約は、特定のユーザーとの長期的、かつ、専属的な使用契約であるのに対し、レンタル契約は、不特定多数のユーザーとの短期的、かつ、単発的な使用契約となっています。
 リース契約とレンタル契約についてはその他の相違点もありますので、ハンドブックで確認しておいてください。