1. 小売業の類型

第5問

 カジュアル衣料品をめぐる専門店業界の業績に関する問題です。その中で、独立系専門店(業種)は低迷傾向にあり、専門店チェーン(業態)は横ばいから上昇傾向にある背景をデモグラフィック要因とライフスタイル要因をそれぞれあげ、その内容を説明するというものでした。
 本問では、近年の専門店業界の業績推移が理解できていることと、その要因はさまざまありますが、それを種類の異なる要因として認識する(できる)必要があります。「デモグラフィック」と「ライフスタイル」という言葉もそうですが、きちんと理解する必要があり、その上で状況を観察するということが必要になります。特に現場で顧客に対応している方は、そこで得た知識をうまく区分して整理することも必要かもしれません。それが今後の課題解決につながると思います。
 解答にあたっては、やはりキーワードとなる言葉が必要です。デモグラフィック要因では「団塊の世代」「団塊ジュニア」、ライフスタイル要因では「カジュアル化」は必ず入れなければならない言葉でしょう。

第6問

 循環型社会を形成するために必要な「3R」を構成する要素をあげ、説明する問題です。3Rについては、日常の場面においても取り上げられることが多いため、全体的に3R自体についてきちんと理解できているという印象でした。ただ、その説明となると混乱していたり、独自の解釈が多く見られたりしました。おそらく流れとしての理解ができていないためと思われます。廃棄物の「発生抑制」、回収した製品を「再使用」、そして製品を回収し「再利用」という流れが頭の中でできていれば、おそらく容易に解答できるでしょう。単語として覚えるのではなく、流れとして理解する必要があります。またこれらの言葉がキーワードとしてきちんと入れられている必要があります。
 解答にあたっては、わずか1行の説明でしたが、誤字が多く見られました。また平易な漢字であっても平仮名表記が目立ちました。日頃から目だけて覚えるのではなく、書きながら覚え、自らのものとしていく努力が必要でしょう。

2. マーチャンダイジング

第5問

 物流ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)のメリットについて問う問題です。
 物流ABCは、物流の現場における様々な作業の1つひとつを細かく分析し、より実態に合ったコストを把握する管理会計の手法です。同一の商品であっても、取引先に対してバラで納品する場合と、ケースで納品する場合は、商品1個当たりにかかる物流コストは異なります。それがどれくらい違うのかを求めるのが物流ABCです。
 採点していて気づいた点は、少なからぬ受験者が、物流ABCではなく売上ABC分析について記述していた点です。売れ筋商品あるいは死に筋商品の管理等のメリットを記述していました。また例えば「物流を改善し、物流コストを下げる」という点に対し、「輸送コストを削減できる」「配送コストを削減できる」「在庫保管コストを削減できる」のように、1つの内容を細分化し、それを書いている答案が見受けられました。
 物流ABCは、コスト削減だけでなく、現場における無駄の発見、取引先の選別、共同物流施設の利用料金の公平な設定への活用、取引制度の改訂への活用など、様々な利点があります。ぜひその意義や利点について、理解を深めてください。

第6問

 スケマティックプラノグラムについて問う問題です。スケマティックプラノグラムは、一般的にプラノグラムと呼ばれるカテゴリーごとの単品のディスプレイ手法です。
 本問では、プラノグラムの概念と開発のポイントについて、それぞれの内容を尋ねています。概念については、棚割に関する考え方だという点はわかっているものの、商品カテゴリー全体の売上と利益を引き上げるという点や、需要予測を前提とした棚割システムであるという点を理解していない答案が散見されました。また開発のポイントについては、顧客にわかりやすいように商品と商品の組み合わせを工夫するという点や、商品回転率に応じたスペース配分が重要であるという点を理解していない答案が散見されました。
 プラノグラムの考え方によって、売場の販売効率や収益性に格差が生じることを理解し、覚えるようにしてください。

3. ストアオペレーション

第5問

 与件より、店舗における①人件費総枠、②従業員合計の1人時単価、③今期の総人時、を計算する問題です。問題文に計算手順が示されていたことから、多数の方が高得点となりました。計算問題を苦手に感じている方は少なくないかもしれませんが、ストアオペレーション科目の中に難解な事例はないので、しっかり学習していれば着実に得点できるのが計算問題です。
 また、計算問題を出題した際に毎回みられるのが、単位の記載漏れです。今回の問題においても計算結果の解答欄に①円、②円、③人時、という単位の記載漏れが目立ちました。計算結果には必ず単位を記載してください。

第6問

 LSPの導入に当っての作業標準化手順に関する問題です。
 第5問に比べると全体的に得点が伸びませんでした。一方、①~④の手順に分解して、①と④の手順については問題文中に記載されているので、しっかり学習していた方には解答のヒントとなり、高得点の方も散見されました。
 販売士ハンドブックにも記載されているとおり、LSPの導入に当っては、店舗で行う各作業が的確に標準化(マニュアル化)されていることが不可欠な条件であり、標準化はチェーンストアの効率的なストアオペレーションにとって生命線の一つとなる重要テーマです。
 なお、ハンドブックP92(図4-1-2)の内容をそのまま一行の箇条書きで解答している方が散見されましたが、問題文では2~3行で説明するように指示しており、箇条書き部分を補足するような説明も欲しい、というのが出題の意図です。箇条書きのみでは満点解答とはなりませんのでご注意ください。

4. マーケティング

第5問

 P.コトラーの提唱したマーケティング・コントロールについての問題です。小売業のマーケティングミックスの実施プロセスには、予想外の事柄が発生する場合が多く、継続的な業績の把握と統制が必要になります。その4つのコントロール手段である、年間計画コントロール、収益性コントロール、効率性コントロール、戦略コントロールのうち、後者3つについて問う問題でした。
 3つのコントロールの内容について、部分的な理解に留まる回答や、収益性や効率を高める具体的手段のみを回答しているケースが目立ち、完答に至った答案は限られていました。コントロールの目的と手段について、整理して理解を深めてください。

第6問

 需要カテゴリーを基軸としたライフスタイルアソートメント(LsA)の展開フローについて問う問題です。ライフスタイルの様々な場面から商品を取り揃え、テーマ設定と売り場づくり、購買促進活動などを通じて需要を創造していく、LsAの一連のプロセスを問いました。
 正答率はあまり高くなく、まったく回答されていないか、完答されているか、という両極端な回答傾向が見受けられました。展開フローをただ暗記しようとするのではなく、具体的な実例を想定し、フローの順序の背景や理由について学習することによって、LsA型小売業のカテゴリーマネジメントの実践について理解が深められるでしょう。

5. 販売・経営管理

第5問

 職場の教育訓練方法のひとつである「イン・バスケット法」に関する問題です。解答は、概ね理解しているものと、できていないものに分かれました。
 イン・バスケットとは未決箱を指し、進め方は、未決箱に入っている数十通の未決裁書類を受講者が短時間で処理し、アウト・バスケット(既決箱)に移すという方法で行われます。
 出題では受講対象者を問いましたが、主な対象は「管理者やその候補者」となります。それほど多くはありませんでしたが、「新入社員」、「バート・アルバイト」、「配転して間もない従業員」などの解答も見受けられました。
 この訓練は、決裁能力や意思決定能力を高めることを目的としています。これらの能力を高めるためには判断力、読解力、分析力、決断力などを高めていく必要があります。そのためこの訓練では、比較的短時間に比較的多量の未決裁書類を次々と処理させていきます。また進め方として、管理者が日常置かれている状況と似た場面を設定し、切迫感のある環境下で行われることもあります。その後、決裁を行った受講者が集団討議を通して相互啓発などを行います。

第6問

 人事考課における心理的誤差のうち、「対比誤差」と「近接誤差」に関する問題です。
「対比誤差」については、比較的正答が多く見受けられました。これは、評価者の能力や性格など主観的価値が評価に現れてしまう誤差です。たとえば、自分が几帳面だと普通の人でもだらしなくみえるという評価をしてしまうというようなバイアスです。
 この出題の誤答として、「ハロー効果」と間違って回答しているものも見受けられました。
「近接誤差」については、「近接」という文字からか、「身近にいる評価対象者」や「近しい間柄の評価対象者」に対する評価が甘くなってしまうという解答が少なからず見受けられました。
 「近接誤差」は、時間、または評価項目の配列が近接しているために現れるバイアスを指します。たとえば、最近の評価は過大にとらえ、数か月前の評価は過少にとらえて評価してしまうなどです。また、評価要素が近いものが近くに配列されていた場合、評価結果が類似してしまうなどのバイアスが現れることがあるなどです。