1. 小売業の類型

第5問

改正まちづくり三法のひとつ、改正中心市街地活性化法に関する出題でした。改正中活法ではTMO(タウンマネジメント機関)に代わり、商工会議所・商工会やまちづくり会社などで構成する「中心市街地活性化協議会」を法制化しました。市町村は基本計画作成にあたって同協議会から意見を聞き、計画に盛り込んだ事業について同協議会のメンバーが推進主体となりました。そして内閣総理大臣を本部長とする「中心市街地活性化本部」が総合調整に当たり、都市機能の集約やにぎわい再生を目指して市町村が作成する基本計画を認定します。
具体的な国の支援策としては、まちづくり交付金の市町村の提案事業枠の拡大(限度額に対する割合を全体の1割から2割に引き上げ)、共同住宅の共用部分や入居者の福祉のための施設の建設費用の3分の1を国が補助する措置、大規模小売店舗立地法(大店立地法)の手続き緩和などが盛り込まれました。
本問の平均点は比較的高く、よく勉強している方が多かったと思います。一方で、意欲的な中心市街地の「選択と集中」的な支援、コンパクトシティ、都市機能の集約といった大事なキーワードが盛り込まれていない回答も散見されました。

第6問

チェーンストアの基本的な運営に関する出題でした。チェーンオペレーションは多くの小売業が採用し、規模の拡大を図るための手法と認識されていますが、地域での競争の中で弊害も指摘されています。メリットとしては販売機能の分散による事業規模の拡大、集中仕入れによる収益力の向上、マニュアル化によるコスト削減、本部への機能集中による専門力の強化、フラットな組織による迅速な意思決定――などが挙げられます。一方、デメリットとしては市場の変化への対応力の不十分さ、地域特性に対する対応力の不十分さ、オペレーションの硬直化、現場社員のモラールの低下――などがあります。
メリットとデメリットは様々あり、多くの方が双方を理解して回答していました。ただ、フランチャイズチェーンのメリットとデメリットを挙げる回答もあり、よく設問を理解しないまま回答した答案も散見されました。

2. マーチャンダイジング

第5問

本問は、月初適正在庫高の算定方式について尋ねたものです。その月の初めにどの程度の在庫を持つかは、その月に設定された売上高予算とのバランスで算定されます。年間の平均値である商品回転率を適用して在庫高を算出することも可能ですが、季節変動がある商品カテゴリーなどでは、他の算定方式を利用して各月別の在庫高を計算する必要があります。
本問では、月初適正在庫高の算定方式のうち、基準在庫法と在庫・販売比率法について、それぞれの内容を尋ねています。基準在庫法については、売上高予算に安全在庫としての基準在庫を加えるという点はわかっているものの、安全在庫の算出方法を理解していない答案が散見されました。また、在庫・販売比率法については、在庫・販売比率の内容を理解していない答案が散見されました。該当する月の実績月初在庫高を実績売上高で割って比率を求め、当月売上高予算に掛けるという算定順序を理解し、覚えるようにして下さい。

第6問

商品カテゴリーごとの採算状況を把握する代表的な手法に、①粗利益貢献度分析、②交差比率貢献度分析、の2つがあります。本問はこのうち、②の一部に関するものです。商品カテゴリーごとの売上高構成比、粗利益率(売上総利益率)、交差比率、積数を求める問題を出しましたが、本来はこの後、これら数値を使って、カテゴリーごとの交差比率貢献度を計算します。そして売上構成比に比べて貢献度が高いカテゴリー、低いカテゴリー、貢献度自体が高いカテゴリーなどを特定し、品ぞろえ計画や仕入れ計画などに活用します。
本問は、比較的高得点の受験者が多かったように思います。ただし、売上構成比、粗利益率の2問だけ正解の人、5問全部正解の人というように、習熟度合いによって、二極分化しているように感じました。決して難しくない計算ですので、何度も練習して、実務で活用できるようにしてみてください。また後半の問題が正解しているのに、前半の問題を間違えるなど、他のカテゴリーの値を算出したのか、計算ミスをしたのか、ケアレスミスが散見されました。検算や写し間違いをなくすなど、細心の注意を払って回答するように心がけてください。

3. ストアオペレーション

第5問

ビジュアルプレゼンテーションの3つの表現方法について解説する問題ですが、指示文が「各々の表現方法について、所定の解答欄に2行程度で解説せよ。」となっているのに、1行または1行にも満たない答案が散見されました。また、とても大きな文字で行数を稼ぐような答案も見受けられました。これらは総じて答案としての完成度が低く、高得点にはなりません。
このような問題では、各々の違いを分かりやすく解説することがポイントで、今回の出題でいえば、各表現方法の採用に適した商品の特性、その表現方法の狙い、表現上の特徴などを、2行程度という指示のなかで端的に答えることが重要です。
また、③複数表現について、クロスマーチャンダイジングと勘違いした方が多かったのですが、クロスマーチャンダイジングは異なる品種の商品ではあるものの、利用シーンが重複していたり、同時購入されやすい商品などを、同一の売場で関連展開することによって、顧客の購入想起を促すとともに、わざわざ他の売場に回らなくてもその場で購入できる利便性を提供することで、購買点数のアップを狙う手法です。これに対して複数表現とは、同一品種の商品について色・柄・サイズなどが豊富な場合、複数の品目を集合展開することによって、品ぞろえのバラエティ演出を狙う手法です。
第5問は全体的に高得点が少数であったのに対し、第6問は比較的中得点に集中しており、第5問の得点多寡が本科目の記述式総得点の格差になったように思われます。そして、第5問、第6問ともに白紙答案が多数ありました。記述式問題は諦めずに回答することで、高得点することは困難にしても部分点として評価されるケースもあります。

第6問

「集中化」や「平準化」は、労働集約的で生産性が低いといわれる小売業のストアオペレーションにとって基本的な課題であり、とくにチェーンストアでは、仕入や販促企画、財務・人事など本部に集約できる諸々の管理業務は集中させ、加工・入荷検品などは物流センターに集中、食品加工ではプロセスセンターに集中させるなどして、生産性向上に取り組んできました。
また、小売業の店舗では、季節・曜日・時間帯などによって繁閑が生じるのはある程度やむを得ないことですが、その波動が大き過ぎると繁閑に応じたムダのない適正人員配置が難しくなるため、出来る限り波動を少なくする業務量の平準化が必要になります。
今回出題範囲外としましたが、今後のIoT/AI/ロボティクスの進展によって、「機械化」や「アウトソーシング」なども益々重要な対応課題となっていきます。
小売業のオペレーションと労働生産性の向上は、利益に直結する課題であり、今後のIoT社会ではテクノロジー活用の得手・不得手が、企業間格差や競争力に大きく影響することも併せて学習しておいて欲しいと思います。

4. マーケティング

第5問

 CVSの革新的マーケティングシステムの体系についての問題です。CVSのマーケティングシステムの体系は、店頭を起点とした顧客ニーズへの対応、マーケティングシステム型店舗運営、生産・流通システムの革新、そして組織構造の統制という体系からなります。このうちマーケティングシステム型店舗と生産・流通システムの革新について問いました。
正答率は一定程度ありましたが、誤字脱字や体系をしっかりと理解できていない答案も見受けられました。
CVSの提供する独自の価値をどのように創出するのかということを理解しながら体系図を勉強することをおすすめいたします。

第6問

イベントベース・マーケティングの実践ポイントについての問題です。イベントベース・マーケティングは、ライフステージ、購買商品、購買行動の変化などが示す顧客ニーズの発生や変化をイベントとして日々自動的に捕捉し、顧客行動を予測することで各々の顧客が購買モードになるタイミングを把握し、適切な手段とタイミングで提供する方法のことです。
イベントベース・マーケティングを実践する上では4つのポイントがあり、そのうちの2つを問いましたが、正答率はあまり高くありませんでした。この点についてはマーケティングの自動化など話題になっている面でもありますので理解を深めていただきたいと思います。また解答においては「購買」を「購売」としてしまうなどの誤字が見受けられました。

 

5. 販売・経営管理

第5問

第5問は、戦略的キャッシュフロー経営を行っていく上で必要不可欠となるキャッシュフローベースの経営指標に関する設問です。
解答は、大別すると、2問ともほぼ正答であったものと、逆に2問ともほぼ手つかずであったものに分かれました。
キャッシュフローは、現金や現金同等物の流れ、すなわち実際のキャッシュ出入りを指します。キャッシュフロー経営は、これまでの長期にわたる景気低迷による不良債権問題などに対応するため、財務諸表にもとづく計数管理では読み取ることが難しい「企業が現金をつくり出す能力と支払能力」を見極め、利益を評価するのに役立つものです。
(1)キャッシュフローマージンは、営業キャッシュフローを売上高で割って算出します。この指標は、キャッシュフロー版売上高営業利益率になり、営業活動を行った結果、現金収支がどうであったかをみる指標です。
(2)株価キャッシュフロー倍率は、株価を1株当たりのキャッシュフローで割って算出します。この指標は、株価収益率をキャッシュフローに応用した指標であり、対象となる株価が適正な水準か、割高か割安かなどを判断する際の指標となります。

第6問

第6問は、職場の教育訓練についての設問です。
職場の教育訓練を教育内容別にみると、知識・技能・態度・問題解決・創造性などに関する領域が存在します。今回はそのうちの、態度に関する教育についての説明を求めました。
態度教育には、集団討議法と集団決定法がありますが、集団決定法のなかのセンシティビティ・トレーニングとマネジリアル・グリッド・セミナーについて問うています。
集団決定法の他の教育方法であるロールプレイングや職場ぐるみ訓練などと混乱してしまった解答もみられましたので、しっかり整理しておいてください。
(1)センシティビティ・トレーニングは、感受性訓練のこと集団的帰属意識を切り離した状況下での集団参加への不安や不満からコミュニケーションや対人共感性の重要性に気づかせたりするものです。
(2)マネジリアル・グリッド・セミナーは、ブレーク&ムートンが開発したマネジリアル・グリッドにもとづき、5つのリーダーシップの類型に合わせて、自己評価や相互評価を行い、理想的な管理者像に変容させることを目的としたセミナーです。
【第5問】【第6問】いずれも、管理者としてしっかりした内部統制を行っていく上で重要な事項ですので、再確認しておいてください。