1. 小売業の類型

第5問

最近の小売業の国際展開に関連する出題でした。海外進出には進出元の国内要因(プッシュ要因)と進出先の現地要因(プル要因)があります。つまり国内から海外へ“背を押す”要因、海外側が“引きつける”要因があるというわけです。この二つは様々に絡み合い、またそれぞれの国内要因、現地要因も複雑であるということを理解してもらいたいと思い出題しました。
国内要因としては、例えば①少子高齢化や消費の成熟化による国内市場の縮小、②改正まちづくり三法などによる出店規制の強化、③出店競争によるオーバーストア――といったものが挙げられます。一方、現地要因としては、例えば①中間所得層の増加による消費市場の拡大、②物流などのインフラの整備促進、③資本の自由化などの規制緩和――が考えられます。
このように一つの要因だけではなく複数の要因を挙げ、国内要因と現地要因の相関を指摘した解答が意外に少なかったように感じられました。また、小売業の海外進出を問う当問題にも関わらず、製造業の海外進出と誤って書かれたと解答も散見されました。

第6問

ホームセンターにおける住宅関連需要を問う問題でした。やや暗記的な要素があったため、テキストに則った回答で「満点」を採る人もいましたが、ホームインプルーブメントとホームファーニシング、ホームデコレーションという似た用語を整理して解答するのに苦労して人も多かったようです。
ホームインプルーブメントは住居を機能面で維持していくために必要な「義務的なメンテナンス」です。ホームファーニシングは日常生活をより快適にすることを目的に機の面の充実を図ることであり、ホームデコレーションは日常生活を送るうえで必要な空間の飾り付けを意味します。
こうした用語の意味に加え、ホームセンターとしてどのように取り組むべき課題を持つ3分野なのかを理解した解答を求めました。特にホームファーニシングは家具専門店や百貨店が先行しており、ホームセンターとして展開余地があること、ホームデコレーションもアップスケールではなく、普段の生活の中での提案ができる業態がまだ少ないことを指摘していれば加点しました。

2. マーチャンダイジング

第5問

本問は、商品カテゴリー別の採算状況を把握するために用いられる分析方法について尋ねたものです。商品カテゴリー別の販売計画を立案する際には、各カテゴリーの採算状況を分析することが重要です。売上構成比に対して貢献度が高いカテゴリーを抽出することによって、残りの問題のあるカテゴリーについても把握することが可能となります。
本問は、粗利益貢献度分析と交差比率貢献度分析について、それぞれの意味と違いを尋ねたものですが、粗利益や交差比率と商品カテゴリー別の売上構成比を掛け合わせる点を理解できていない解答が散見されました。一方、交差比率(=粗利益×商品回転率)の内容については多くの人がよくわかっているようでした。

第6問

本問は、仕入管理や在庫管理を行う際、おさえておくべき必要な事項について尋ねたものです。総売上高、純売上高、売上原価、純仕入高の関係をきちんと理解しているか、さらにはそれらを正確に算出出来るかどうか、を尋ねました。
純売上高を求めるには、総売上高から、売上戻り、値下げ、割引などを差し引きますが、このうち1部のみを差し引いている解答が散見されました。また売上原価は、純売上高に(1-売価値入率)を掛け合わせますが、純売上高でなく総売上高を乗じているものがありました。当期純仕入高に関しては、前問で求めた売上原価をベースに、期首と期末の在庫高及び減耗高を調整して求めますが、期首と期末の在庫高の加減を逆にしている回答が比較的多くみられました。また全体を通じ、式は正解しているのに計算ミスをしているもの、単位を付け間違えているものなどもありました。
これらの事項は、実際の実務においても非常に重要なものです。その概念等をハンドブック等で今一度しっかり理解し、正確な解答が出来るよう、繰り返し勉強していただければと思います。

3. ストアオペレーション

第5問

売上高=客数×客単価という基本的な計算問題です(1日当たり平均売上高×利用客1人当たり平均来店頻度でも計算可)。
小売業に限らず実務上においては、社内の様々なデータを組み合わせて自社の業績を算出することが多いと思います。その意味からすると、目的の数値を算出するために、まず多様なデータのなかから必要な情報だけを選び出す作業があります。今回の出題はそれに倣うもので、与えられたデータのなかには、直接計算に使用しない情報も含まれています。
計算問題は満点答案の方とゼロ点など低得点の方に二極化して、差がつきやすい傾向がありますが、今回も同様の傾向がみられました。難易度の高い問題ではないので確実に得点しておきたいところです。
計算式の記入欄に、解答すべき式以外に、自分の頭の中を整理するためのメモを走り書きしている方がいましたが、採点に支障を来す恐れがあるので、その場合は問題用紙のほうにメモしてください。
また、ケアレスミスが目立つのも計算問題の特徴です。折角、計算式が正解しているのに、計算結果が所定蘭に未記入であったり、記入されていてもゼロの数が多過ぎたり少な過ぎたり、値が正しくても単位(今回は円または¥)をつけ忘れたり、カンマの位置がずれていたり(4桁以上の数値にカンマは必須)、といった答案が散見されました。
計算結果が計算式記入欄に記載されていても、計算結果欄に未記入では減点となります。上記その他のケアレスミス等についても減点対象となります。答案は必ず見直すよう心掛けてください。

第6問

第5問に比べると、得点にバラつきは少なく、満点答案が少ない一方、白紙答案も少ないという状況でした。
生鮮食品のロス管理について、発注、加工、在庫段階の3ステップにわけてロス抑制策を問いましたが、ステップを無視した解答が目立ちました。勿論、各ステップにまたがる共通的な施策もあるので、解答の仕方が適切であれば加点しています。
例えば、共通的な施策例として、教育訓練やマニュアル化などがありますが、単に「・・・ロスを抑えるための教育訓練」、「・・・ロスを抑えるためのマニュアル作成」といった解答では加点になりません。このようなケースでは、どんな教育訓練あるいはマニュアル作成なのか、‘How’に相当する説明がなければ採点者側に意味が伝わりません。
また、箇条書きで解答する指示ではありますが、「効率化」、「省力化」といったような単語が一語だけ記載された解答も散見されました。これらも何の効率化なのか(What)、またはどのように効率化するのか(How)を説明する必要があります。
記述式問題では、1行程度の箇条書きや、2~3行程度の文章で説明を求める出題がなされることが多いですが、5W1Hのうちどこまで含めて解説すれば、採点者に解答意図が伝わりやすくなるかを考えてください。そうすることで得点力は飛躍的にアップすると思います。

4. マーケティング

第5問

第5問はハフの確率モデルの前提とする経験的規則性を問う問題です。
ハフの確率モデルは都市内の商業施設の売上高予測に用いられるモデルであり、スーパーマーケットをはじめとした小売店の出店に際して活用されるモデルでもあります。このモデルの経験的規則性としては、所与の小売施設を愛顧する消費者の割合は、距離、商品構成の幅と深さ、商品のタイプによる距離の相違、競合小売施設の近接性が挙げられる。モデル式はこれらの諸変数を反映させたものになります。
解答の間違いとしては、都市の小売引力を示したライリーの法則やコンバースの法則との取り違えが多々見受けられました。モデルがどの範囲を対象にしているかをきちんと押さえて学習しましょう。

第6問

第6問はストアコンパリゾンにおけるPFグラフの作成手順を問うたものです。PFグラフとは、自店と競争店の品ぞろえの相違を価格とフェイジング数で比較し、価格政策や主力の価格ラインの相違を発見する方法であり、これによって自店の品ぞろえを改善するためのツールです。作成に当たってはPF調査票の価格をランク別に分け、フェイジング数を集計していきます。

解答の間違いとしては名称を確実に記述することができず、また競争店を「競走店」と誤記する答えも多く見受けられました。学習方法としてはフローチャートとしてPFグラフの作成手順とその内容を捉えて、理解したほうがよいでしょう。

 

5. 販売・経営管理

第5問

第5問は、人事考課の評価方法に関する出題です。人事考課の評価方法は、記録法と絶対評価法と相対評価法の3つに大別できます。今回は絶対評価法のなかのプロブスト法と図式尺度法について問うています。
プロブスト法は短文チェック法とも呼ばれており、従業員の勤務態度・能力などに関する標語(短文)を相当数ランダムに列挙しておき、評価者が該当する項目にチェックを入れていく方式です。この評価方法の特徴は、論理誤差やハロー効果等の評価エラーを抑えることができる反面、項目選定等の準備などに大きな手間がかかるという短所があります。
プロブスト法の解答では、成績表語法・人物標語法、執務基準法を解答された受験者が見られました。
図式尺度法は、信頼性や知識度等の評価要素ごとに段階的な評価基準の目盛りを設定し、該当箇所をチェックしていく方法です。この評価方法の特徴は、可視的でわかりやすい反面、ハロー効果や寛大化傾向になりやすいなどの短所があります。
図式尺度法の解答では、段階択一法と混乱した解答も見られました。
種々の評価法については、その特徴のみならずそれぞれの手法の長所・短所を合わせて確認しておくとよいでしょう。

第6問

第6問は、RFIDタグ(電子チップ)に関する出題です。RFIDタグは、電波によって「リーダ/ライタと交信し識別情報を交換するため、ゲートを通過させるような簡単な方法で情報を識別ことができる点が大きな特徴です。
今回は、そのRFIDタグがバーコードより優れている点に関する出題です。RFIDタグのメリットはいくつかありますが、作業効率面や情報量や情報内容に関する側面からの解答が望まれます。
RFIDタグは無線を用いた自動識別技術で、バーコードと異なり非接触でデータを読み込めますので、入荷チェックや棚卸しなどの際の作業効率が大幅に向上します。また、無線ですので、箱の中に入っていても移動中でも、またホコリ等で汚れていても瞬時に大量に読み込むことができます。さらに大きな特徴としては、RFIDタグには書き込み可能なタイプもあるので、流通過程の履歴情報などの書き込みも可能になります。
今後流通過程においてRFIDタグはますます普及していく可能性がありますので、SCM(サプライチェーン・マネジメント)やトレイサビリティと関連した活用方法等についても確認していく必要があると思われます。