原作:髙見啓一(鈴鹿大学講師)
イラスト:高木


ーここは、周囲を山々に囲まれた最奥の台地。雪降りしきる中、見るからに怪しい4人の男たちが歩いている。

戦闘員A 「統領、ここどこですか?」
戦闘員B 「ブルブル・・・寒いっす。」
統領 「うむ。どうやら最北の地らしい。」
戦闘員C 「サイホク・・・埼北??聞いただけで寒そう!」
ー彼らは悪の秘密結社「ZAIM」の統領と戦闘員たちである。日本の都市部で特撮ヒーローたちを相手に戦い続けたものの、全く勝てず、この地に左遷されてきたのである。
戦闘員B 「左遷の身は辛いよな・・・あ、なにかが上空を飛んでるぞ。」
「グガーッ!(炎)」
ー夢でも見ているのかと、目をこする戦闘員たちであった。
戦闘員A 「ちょっと待って・・・あれ、ドラゴンじゃないか?」
戦闘員C 「埼玉じゃないのは間違いない・・・。」
統領 「何をしておる、お前たち。我々の新しい勤務地はここじゃ。降りるぞ。」
ーザッザッザッザ・・・洞窟の入口にたどり着いた一行は、どこかで聞いたことのある効果音を鳴らしながら洞窟へもぐるのであった。
戦闘員B 「ここどこっすか?松明の火が必要って、古いなぁ。」
戦闘員C 「(カチャ!)ん?なんだこりゃ。暗くてよく見えないけど、ガイコツの標本?」
「どうもっす。」
戦闘員C 「ぎゃあああ!ガイコツが、しゃべった!」
戦闘員A 「まさか、スケルトン?」
戦闘員B 「(ベチャ!)んんん?俺は何か踏んだみたいだ・・・。」
「(プルプル)え~ん痛いよ~。」
戦闘員B 「こいつもしゃべりやがる。スライムか?」
戦闘員C 「子どもの頃、洗濯のりで作ったよな。」
戦闘員A 「のんきなこと言ってる場合じゃないだろ。統領、ここはもしかして・・・?」
統領 「そう。お前たちも遊んだことがあるだろう。RPGの世界だ。」
戦闘員ABC 「げえーっ!まさか?!」
ー4人が赴任した新しい職場は「モンスター製造工場」であった。
統領 「うむ。我々はこの世界を支配する魔王軍の管理下に入り、モンスターの製造を任されることとなった。」
戦闘員A 「もう、何がなんだかわかりません。」
戦闘員B 「まあ、俺たち特撮のメンバーもフィクションみたいな存在じゃん。」
ー次第に落ち着きを取り戻す戦闘員たちであった。
戦闘員C 「てか、モンスターって無尽蔵にいるもんだと思ってたぜ。」
戦闘員B 「ここで作ってたのかぁ・・・。」
戦闘員A 「意外と近代的だったんですね。あ、製造方法のレシピもある。」
統領 「そう。ここで次々とモンスターを生産し、勇者たちを撃破する。そして、魔王様まで近づけないこと。それが我々に与えられた使命じゃ!」
ここで登場人物の紹介をしておこう。
戦闘員A:統領の右腕。簿記の勉強をしたこともあり、割と賢い。
戦闘員B:Aほど賢くはないが、Cほどオバカではない。恐妻家。
戦闘員C:宴会担当。なぜかタメ語でも許されるキャラクター。
統領:中小企業診断士の資格を保有している経営のスぺシャリスト。だが人望はない。
戦闘員B 「でも、我々がRPGの世界にいるのってミスマッチじゃないっすか?」
統領 「特撮モノの世界は、ハイペースな製品開発がウリじゃからな。タイムベース競争じゃ。」
戦闘員C 「たしかに、毎週日曜日には新しい怪人を送り込んでたもんな・・・。」
ーここで疑問が湧く戦闘員たちであった。
戦闘員A 「でも統領、魔王軍側ってゲームに「終わり」がなくないですか?」
戦闘員B 「勇者たち側には魔王を倒したり、姫を助けたりっていうクリアがあるけどな・・・。」
統領 「我々の勝利条件か?プレイヤーたちが、あまりの難しさに攻略を諦めて、このゲームを中古屋に売ればゴールじゃ。」
戦闘員C 「うわ!クソゲーじゃん。」
統領 「ククク・・・「ZAIMの挑戦状」と呼ばれるくらいの難易度にしてやろうぞ。」
戦闘員B 「迷作のにおい・・・。」
統領 「見ておれ、勇者ども!現代経営学のノウハウを持つ我々が来たからには、モンスター軍団を常勝軍団に変えてみせようぞ!」
ー悪のポンコツ組織ZAIMによるモンスター製造工場の改革は、魔王軍を勝利に導くのか?

次回予告

これまでの魔王軍は、モンスターを作ってはやられるムダな経営をしていた。
ここに、原価計算の考え方を取り入れたZAIMが、メスを入れる!
次回「モンスターはタダじゃない」お楽しみに!