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  》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《

                         第292号(2015.1.15)
                      商工会議所年金教育センター                       

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          〉〉〉CONTENTS〈〈〈
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【連載記事】
1〉「退職給付会計のポイント」(全3回)
   第3回 IFRSの退職給付制度の費用処理
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【勉強会の開催情報】
2〉大阪で開催する勉強会の参加者を募集しています。
  【大阪開催】「ホンネで語り合う企業年金事情 Ver.0」
  ——————————————————————
3〉今さら人には聞けない 年金財政運営『超』入門
         〜 財政運営の理論(理想)と実践(現実)〜(再掲)
───────────────────────────────────
【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉商工会議所年金教育センターのホームページ閉鎖のご案内
  ——————————————————————
5〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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 このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
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1〉「退職給付会計のポイント」(全3回)
   第3回 IFRSの退職給付制度の費用処理
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 日本では、商社や製薬会社などの大手企業を中心に、2014年10月時点で上場
会社46社(適用予定会社を含む)が国際会計基準(IFRS)を適用しており、今
後も増加が見込まれます。日本企業の退職給付に関する財務状態を把握するた
めには、IFRSの退職給付会計IAS19号の理解を深めておくことが重要と考えら
れます。

 連載最終回は、IFRSの退職給付会計IAS19号のポイントを解説します。なお、
本稿中の意見に関する部分は筆者個人の見解であり、所属する組織・法人のも
のではありません。

〇 IFRSの退職給付会計IAS19号とは
 IAS19号は「従業員給付」という名称で「従業員が勤務提供の見返りとして
事業主が与える給付全般」を取扱います。すなわち、企業年金のような「退職
後給付」に加えて、給与・賞与や有給休暇などを取扱う「短期従業員給付」、
リストラによる給付などを取り扱う「雇用終了給付」、一定の勤務期間を条件
に支給される長期休暇などを取り扱う「その他の従業員給付」があります。

 本稿では、日本の退職給付会計基準と同様の範囲を取り扱う「退職後給付」
について、日本基準との相違点を中心に解説します。

〇日本基準との相違点
 日本基準とIAS19号の相違点は、「費用処理」、「アセットシーリング」、
「過去勤務費用の処理方法」、「割引率に関する重要性基準」、「期間帰属方
法(IAS19号では給付算定式基準のみ)」、「開示」などです。

(1)費用処理
 前回解説したとおり、日本基準では退職給付に関する費用の全てを合計して
「退職給付費用」として計上します。また、数理計算上の差異・過去勤務費用
は遅延認識することが可能です。

 IAS19号では「即時認識・分解表示」がキーワードになります。
 まず、過去勤務費用ですが、IAS19号では遅延認識を行わず「勤務費用」に
含めて即時認識します。2011年以前のIAS19号では、「受給権が確定している
部分の過去勤務費用は即時認識、受給権未確定の部分は確定するまでの期間で
遅延認識」としていました。現在のIAS19号では「受給権が確定しているか否
かに関わらず、制度変更は企業の人件費として、即座に退職給付債務に反映さ
せるべきである」という考え方に基づいて発生時点で一括処理する方式としま
した。

 また、日本基準とは異なり、退職給付に関する費用は構成する要素の性格に
応じてそれぞれ、区分計上(「分解表示」といいます)します。具体的には、
勤務費用(過去勤務費用を含む)は人件費の性格を持つ費用として、純利息費
用(=(退職給付債務−年金資産)×割引率)は支給時期の繰り延べに伴う費
用として、ともに企業の「純損益」に計上します(当期純利益に影響)。一方、
勤務費用と純利息費用以外の退職給付債務・年金資産の変動に伴って発生する
損益(日本基準の数理計算上の差異に相当)は「再測定」としてその他の包括
利益に計上します。再測定は日本基準のようにリサイクル(その他の包括利益
に計上した未実現損益を損益計算書を通じて実現損益(=利益剰余金)に振り
替える処理)は行いません。

 この結果、企業の損益に影響を与えるのは勤務費用と純利息費用のみとなり、
市場環境の変動等によって発生する再測定は、純損益に反映されなくなります。
再測定をリサイクルしない理由は「再測定は退職給付債務・年金資産の評価額
の変動に起因するものであって、実際に実現した損益とは異なる」というもの
です。

(2)アセットシーリング
 日本基準では「退職給付債務−年金資産」がマイナスの場合、差額の全額を
貸借対照表に「退職給付に係る資産」として計上しますが、IAS19号では「貸
借対照表への計上額は企業が実際に得ることのできるメリット(「経済的便益」
といいます)の範囲内で計上する」という制限があります。この制限を「アセ
ットシーリング」といいます。

 経済的便益には「年金資産の返還による便益」と「将来の掛金減額による便
益」があります。

 年金資産の返還による便益は、制度の継続中や制度終了時などに超過資産が
無条件で事業主に返還される場合に存在することになります。日本の確定給付
企業年金制度では事業主への年金資産の返還は禁止されているため、年金資産
の返還による便益はありません。しかし、退職給付信託の場合は、超過額を事
業主に返還することができるため、年金資産の返還による便益が存在し、アセ
ットシーリングによる退職給付に係る資産計上額の制限には該当しません。

 将来の掛金減額による経済的便益ですが、「将来の勤務費用の予測額と将来
の標準掛金(今後発生する給付に充当する掛金)の差額」に基づいて算定しま
す。実際に計算してみないとアセットシーリングによる資産計上額の制限に該
当するか否か判りませんが、多くの場合は一定の経済的便益が存在すると思わ
れます。

(3) その他の相違点
 その他、日本基準にある「割引率に関する重要性基準(退職給付債務の変動
が10%以内と見込まれる場合には割引率の変更は不要)」や「小規模企業にお
ける簡便法(300人未満の企業は退職給付債務として、要支給額や年金財政上
の債務を使用してよい)はIAS19号には存在しません。

 また、IAS19号の開示では「退職給付制度の運営に伴い事業主が負うリスク」
に関する詳細な注記が必要となっているなど、いくつかの相違点が存在します。
IFRSを採用している企業の従業員給付に関する財務報告を見る際には、対象と
する制度の範囲が異なることに加えて、上記の相違点にも留意することが必要
でしょう。

◇ 退職給付会計の課題
 最後に、退職給付会計の課題について触れたいと思います。
 現在の退職給付会計は(IAS19号も含めて)、「給付額=最終給与×支給係数」
のような伝統的な確定給付制度を想定した債務測定に基づいた処理が前提とな
っています。

 しかし、我が国では「金利水準によって給付額が変動するキャッシュバラン
ス制度」の普及が進んでいたり、海外の事例では「市場の指標に連動して給付
額が決まる(ただし、最低保証あり)制度」や「確定給付による給付額と確定
拠出による給付額を比較して、いずれか大きい額を給付する制度」など、制度
の多様化が進んでいます。

 例えば、債券インデックスと株式インデックスを一定の比率で組み合わせて
得られる収益率に基づいて給付額を計算する制度の場合、将来時点の退職予想
額には収益率が反映されて期間帰属され、退職給付債務を計算する割引率は債
券の利回りで設定されます。この場合、「収益率>割引率」となるのが一般的
なため、「退職給付債務>その時点の給付額(元利合計)」となり、その時点
で退職した場合には退職給付債務と給付額の差額が数理計算上の差異(利益)
が発生します。

 また、確定給付と確定拠出の給付額のうち大きい額を支給する制度の場合、
どちらの制度の会計処理を行うのが適切か不明です。

 このように、現在の退職給付会計の考え方では給付債務と給付額に差異が
あったり、どのように処理したらよいか不明な制度が増加しており、海外で
も「退職給付会計はこのままで良いのか」という点が繰り返し議論されてい
ます。

 現時点で将来どのようになるかを予測することは困難ですが、10年後の退職
給付会計が現在とは大きく異なる可能性があることを指摘しておきたいと思い
ます。

 今回で退職給付会計に関する連載を終了します。退職給付会計は「判りにく
い会計」であるといわれることがあります。読者の皆様の退職給付会計に対す
るご理解を深める一助になれば幸いです。

*執筆者紹介
 佐野 邦明
 株式会社 シーエーシー 専門顧問
 年金数理人、日本アクチュアリー会正会員

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2〉大阪で開催する勉強会の参加者を募集しています。
  【大阪開催】「ホンネで語り合う企業年金事情 Ver.0」
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 大阪支部主催のDCプランナー勉強会では、企業年金に関わる制度改正等の
トピックスを、なるべく旬な時期に、制度に精通した専門家をお呼びして、都
度都度の最新情報を提供してきました。この基本的姿勢は今後も継続していき
ますが、来年度の勉強会では、より「ホンネのところはどうなのか」という観
点から企業年金の現状や将来を解説する機会を、できるだけ定期的に(四半期
程度のペースで)設けていこうと考えております。

 今回の勉強会は、そのキックオフ的な場になります。基本的には講師の作成
したレジュメをもとに進行する「講義」ではありますが、厚生年金基金、確定
給付企業年金、確定拠出年金等、各企業年金の動向や現場の動き、実際の改革
事例、退職給付会計の動向、基金やDBの資産運用動向、DC投資教育の動向、
諸外国の年金動向、税制改正大綱から見る改正動向等最新トピックスなど幅広
い内容をもとに、年金基金の担当の方、企業の人事・労務担当の方、財務部門
の方、事業主の方、運用機関の方、コンサルタント等、それぞれの立場から自
由に意見を語り合える場にもしてまいります。企業年金にご関心のある方のご
参加をお待ちしております。

◆日 時:平成27年2月14日(土)17:00〜19:00 (受付開始16:45)

◆講 師:企業実務研究会大阪支部 登録講師
     1級企業年金総合プランナー(DCプランナー)  

◆会 費:3,500円(お支払方法は、お申込み完了後お知らせいたします)

◆会 場:追手門学院大阪城スクエア 6階 大手前ホールB
     大阪市中央区大手前1丁目3番20号
     会場へのアクセス
     http://www.otemon-osakajo.jp/outline/index.html

◆定 員:25名(先着順)

◆幹 事:企業実務研究会 大阪支部 

 お申し込みは、下記サイトより承ります。
    http://www.benkyou-j.com/study/detail.php?sid=183

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3〉今さら人には聞けない 年金財政運営『超』入門
         〜 財政運営の理論(理想)と実践(現実)〜(再掲)
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 1月5日付のメルマガでご案内しましたように東京で勉強会を開催します。
 定員にまだ余裕がありますので、参加を希望される方は、お早めにお申し込
みください。

昨年7月に実施して好評を博した「今さら人には聞けない」シリーズが
装いも新たにパワーアップ。
第2弾では、企業年金の財政運営をテーマに、DCプランナーならば最低限
押さえておきたい年金財政運営のイロハを、初級者の視点に立って丁寧に解説
いたします。
企業年金の実務担当者の知識整理にはもちろん、DCプランナー試験対策(A
・C分野)としても有用です。

<主な構成(予定)>
 ・年金財政、年金数理の簡単なおさらい
 ・企業年金の財政運営【理論編1】〜収支相等の原則と「成熟化」
 ・企業年金の財政運営【理論編2】〜過去勤務債務(先発債務)とは
 ・企業年金の財政運営【実 践 編】〜後発債務と財政再計算・財政検証

◆日 時:平成27年1月22日(木)18:30〜20:30(受付18:00〜)

◆会 場:港区虎ノ門

 お申し込みは、下記のURLからお願いします。
   http://www.benkyou-j.com/study/detail.php?sid=182

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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉商工会議所年金教育センターのホームページ閉鎖のご案内
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 皆様にご利用いただいてきました、商工会議所年金教育センターのホーム
ページにつきましては、平成26年12月末を持って閉鎖いたしました。
 なお、本メールマガジンのバックナンバー、1級試験対策の答案練習シリー
ズ、企業年金に関する勉強会情報等につきましては、日本商工会議所の検定
ホームページ内(DCプランナーコーナー)に順次移行予定ですが、移行終了
までの期間、閲覧が出来なくなりますのでご了承ください。
 詳細につきましては、決まり次第、改めて本メールマガジン等でご案内いた
します。
 

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5〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが以下の連絡先まで、メールかFAXにて、
ご連絡いただきますようお願いいたします。
 なお、FAXにてご連絡いただく場合は、併せて受信確認の電話をお願い
いたします。
 変更のご連絡がない場合、メールマガジンや会報、資格更新のご案内など
に関する連絡文書等が届かなくなりますので、必ず手続きをお願いいたしま
す。

※このメールは送信専用のメールアドレスから配信されています。
 住所変更等のご連絡につきましては、必ず以下の連絡先にお願いいたし
ます。

≪手続き・ご連絡先:検定支援センター≫

E-Mail:kentei@msa.biglobe.ne.jp
FAX:03−3402−7966
TEL:03−3402−2109

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 次号(第293号)は、2月1日(日)に送信予定です。
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【企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン】
  
編集・発行:日本商工会議所 商工会議所年金教育センター  

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 このメールマガジンの内容に関するご意見・ご感想は、編集部までお寄せく
ださい。
  E-Mail:nenkin@jcci.or.jp
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《禁・無断転載》
 このメールマガジンの著作権は、上記の発行者に帰属します。
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