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  》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《

                        第348号(2017.5.15)
                          日本商工会議所
                    商工会議所年金教育センター

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          〉〉〉CONTENTS〈〈〈
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【連載記事】
1〉「信託の基本と使い方を学ぼう」 全4回
   第4回  信託の視点からみた企業年金(最終回) 
───────────────────────────────────
2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
  答案練習(全8回)
  2017年度試験対策 [第1回] 
  A分野:退職給付会計
───────────────────────────────────
【勉強会の開催情報】
3〉大阪で開催する勉強会のご案内    
  「第11回 ホンネで語り合う企業年金事情」(再掲)
───────────────────────────────────
【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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 このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
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1〉「信託の基本と使い方を学ぼう」 全4回
   第4回 信託の視点からみた企業年金(最終回) 谷内 陽一
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 第1回から第3回にかけては、菅野真美先生から信託の基礎および資産承継
や事業承継における信託の使い方について解説いただきました。最終回である
今回は、菅野先生に代わりまして、企業年金について信託の視点から解説いた
します。

◆信託の分類でみた企業年金
 信託は、その目的、設定方法、受託財産の種類、信託終了時の信託財産の返
還方法および運用方法など、さまざまな分類方法があります。

 まず、信託財産として金銭を預けるか金銭以外(有価証券、不動産など)を
預けるかによって、「金銭の信託」と「金銭以外の信託」に大別されます。
次に、金銭の信託は、信託終了時に金銭として返還を受ける「金銭信託」と、
金銭以外で返還を受ける「金銭信託以外の金銭の信託」(金外信託)に分類さ
れます。さらに、金銭信託は、運用指図および運用方法によって分類すること
ができます。運用指図による分類には運用の目的物を具体的に特定する「特定
金銭信託」と運用の目的物の種類を大まかに指示する「指定金銭信託」がある
ほか、運用方法による分類には信託された財産を合同して運用する「合同運用」
と、単独で運用する「単独運用」があります。

 企業年金などの年金信託は「金銭の信託」に分類されます。厳密には、確定
給付企業年金信託や厚生年金基金信託など、受託者(信託銀行等)に運用裁量
を委ねる信託は「単独運用指定金銭信託」に分類されます。一方、年金特定信
託(年金特金)や確定拠出年金信託のように、受託者以外の者(年金特金では
投資顧問会社等、確定拠出年金信託では加入者等)が運用の裁量を有している
信託は「特定金銭信託」に分類されます。

◆年金信託の特徴
 年金信託とは給付に要する費用に充てることを目的とした信託であり、わが
国では厚生年金基金や確定給付企業年金など企業年金において広く普及してい
ます。他の信託と比較した年金信託の特徴としては以下のものが挙げられます。

<特徴その1>制度形態によって受益者が異なる(自益信託・他益信託)
 年金信託でも、他の信託と同様、委託者(信託をする者)、受託者(委託者
に代わり信託財産を管理する者)、受益者(信託による利益を受ける者)の三者
が存在します。ただし、制度の形態によって、委託者や受益者が異なる場合が
あります。

 例えば、確定給付企業年金(規約型)や確定拠出年金では、事業主が委託者、
信託銀行等が受託者、受給権者が受益者となります。この形態は、委託者以外
の第三者が受益者となることから「他益信託」といいます。

 一方、確定給付企業年金(基金型)や厚生年金基金では、信託銀行等が受託
者となる点は共通していますが、基金が委託者と受益者を兼ねる形となります。
このように、委託者自身が受益者となる信託を「自益信託」といいます。

<特徴その2>信託法・信託業法とは別の法令の規制を受ける
 年金信託も信託の一種である以上、信託法による規制を受けます。また、
信託業を営む金融機関等が受託者となる場合は、信託法に加えて、信託業法の
規制も遵守しなければなりません。

 これら信託法・信託業法上の規制に加え、年金信託では、各企業年金制度等
の根拠法令(確定給付企業年金法、確定拠出年金など)による規制も受けるこ
ととなります。例えば確定給付企業年金の場合、一口に決算といっても、信託
法に基づく「信託財産決算」と確定給付企業年金法に基づく「財政決算」とが
あり、それぞれ実施することが義務付けられています。

<特徴その3>「年金規約」の存在
 信託は、委託者が設定する信託目的について、「信託契約の締結」「遺言」
あるいは「公正証書等による意思表示」のいずれかの方法を行うことにより、
その効力が発生します。

 しかし、年金信託は、年金信託契約を締結しただけでは年金制度として機能
しません。確定給付企業年金や企業型確定拠出年金では、年金制度の加入条件、
給付内容その他制度の運営に必要な事項を「年金規約」に定めなければならず、
当該年金規約は、厚生労働大臣の認可あるいは承認を受けてはじめて効力が発
生します。

 また、年金信託契約は信託財産の管理に必要な事項のみを規定しているため、
年金制度として必要な事項(例:給付の支払など)なども委託する場合は、
「業務委託契約」や「総(副)幹事契約」等を別途締結する必要があります。

◆企業年金と受託者責任
 イギリスやアメリカでは、受認者(受託者)が他者のために専門能力を提供
して履行すべき義務のことを「フィデューシャリー・デューティー(fiduciary 
duty)」といい、日本では「受託者責任」あるいは「信任義務」と訳されます。
わが国では、ここ数年、金融庁を中心にこのフィデューシャリー・デューティー
という言葉が喧伝されていますが、実は、日本におけるフィデューシャリー・
デューティーの最初の旗振り役は、かつて代表的な企業年金制度であった厚生
年金基金でした。

 厚生年金基金制度では、1990年代に資産運用に係る規制が大幅に緩和・撤廃
されましたが、同時に、基金の資産運用関係者の役割やそれに伴う責任の内容
を明確化・具体化するための法整備も進められました。1989年には、厚生年金
保険法に基金理事の忠実義務が明文化され、1997年4月には「厚生年金基金の
資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」が制定されました。
 このガイドラインによって、法整備が十分でなかった当時の状況下において、
「運用受託機関の忠実義務」「善管注意義務」等について網羅的・体系的な整理
が行われました。また、ガイドラインでは米国のエリサ法など英米における
「信認」「受託者責任」の考え方を援用したため、これにより受託者責任の概念
がわが国社会に広く紹介される契機となり、その先駆的な意義は極めて大きな
ものだったと筆者は考えます。


*執筆者紹介
 谷内 陽一 (たにうち よういち)
 りそな銀行 りそな年金研究所 担当マネージャー
 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、社会保険労務士、
 証券アナリスト(CMA(R))


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2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
  答案練習(全8回)
  2017年度試験対策 [第1回] 
  A分野:退職給付会計
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【問題】(2017年1月出題)

 次の設例に基づいて、下記の各問《問1》~《問3》に答えなさい。

《設例》
   X社(サービス業)では、退職給付制度の改定を検討するため、プロジェ
 クトチームを発足させて退職給付会計の状況を確認することにした。Aさん
 はプロジェクトチームのメンバーだが、最近他部署から異動してきたことも
 あり、退職給付会計に関する十分な知識を持ち合わせていない。そこで、X
 社でコンサルティングを依頼しているDCプランナーのBさんに相談をする
 ことにした。

             
《問1》 まずAさんは、退職給付会計の内容についてBさんに質問した。
 Bさんが説明した「退職給付会計に関する会計基準」等に基づく退職給付会
  計に関する次の(1)~(4)の記述のうち、適切なものには〇印を、不適
  切なものには×印を解答用紙の所定の欄に記入し、不適切なものについては
  その理由を簡潔に述べなさい。
 
 (1)「退職給付会計では、基本的な会計処理の枠組みとして現金主義がとら
   れ、実際に支払が行われたときに費用の認識が行われます」
 (2)「退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額は、期間定
   額基準に基づいて算定しなければなりません」
 (3)「退職給付会計における年金資産とは、退職給付に充てるために積み立
   てられた資産のことをいい、該当するのは、確定給付企業年金および
   厚生年金基金の資産の2つです」
 (4)「連結財務諸表では、未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費
   用は、その他の包括利益で認識したうえで、純資産の部のその他の包括
   利益累計額に計上し、翌期以降一定期間で費用処理します」

               
《問2》 次にAさんは、X社では簡便法が適用されていることを知り、簡便法
 による会計処理についてBさんに質問した。Bさんが説明した次の文章の空
 欄(a)~(e)に入る適切な語句を、下記の〈語句群〉のイ~ヨのなかか
 ら選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
   
  原則法のもとでは、((a))は退職により見込まれる退職給付の総額の
  うち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算しますが、
  簡便法ではより簡便な計算方法が認められます。
   計算方法は複数あり、実態に基づいて合理的と判断される方法を選択しま
  す。たとえば、退職一時金制度のみの場合は、退職給付に係る((b))を
 (a)とする方法があり、企業年金制度のみの場合は、直近の年金財政計算
  上の((c))の額を(a)とする方法があります。
  なお、個別財務諸表における各項目の計算方法は、以下のとおりです。

  ((d))=簡便法により計算された(a)-年金資産
  ((e))=期末の(d)-(期首の(d)-企業年金制度への掛金拠出
        額-退職金支払額)

               〈語句群〉

 イ.退職給付費用  ロ.勤務費用  ハ.利息費用
 二.定年まで勤務したときの退職金額  ホ.退職給付債務  
 へ.数理債務  ト.数理計算上の差異  チ.退職給付見込額  
 リ.比較指数  ヌ.期末自己都合要支給額  ル.期末会社都合要支給額
 ヲ.退職給付引当金   ワ.最低責任準備金   カ.掛金累計額
 ヨ.過去勤務債務


《問3》 最後にAさんは、Bさんの説明をもとに簡便法による退職給付会計
  の項目を計算してみることにした。今期の退職給付会計の状況が下記のとお
  りであったとき、(1)期末の退職給付引当金の額 (2)今期の退職給付
  費用の額を、計算過程を示して答えなさい。
 答は百万円単位とする。なお、X社は、退職一時金制度は実施しておらず企
  業年金制度のみを実施しており、事業主からの退職給付支払額はない。

 〈今期の退職給付会計の状況〉  (単位:百万円)
  ・退職給付債務         450(期首)  600(期末)
  ・年金資産           400(期首)  520(期末)
  ・企業年金制度への掛金拠出額  85
  ・年金資産の運用益       35


 ※ 本練習問題の解答・解説については、資格登録者のみに公開しています。


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3〉大阪で開催する勉強会のご案内    
  「第11回 ホンネで語り合う企業年金事情」(再掲)
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 下記のとおり大阪で勉強会を開催いたします。

 新年度になりました。予定利率もマイナスが可能になり、個人型DC、いわゆ
るiDeCoとリスク分担型DBが始動し、企業年金も大きく変わろうとしてい
ます。イルカのイデコちゃんやカトパンで普及を図る動きもあり、厚生労働省に
企業年金の普及を推進するための組織も生まれました。

 平成28年度末の導入実績から、各年金のニーズを図り、その留意点を解説した
いと思います。また、平成30年5月までに予定されている改正、例えばDCから
DBへの逆ポータビリティ、小規模事業主掛金納付制度、運用商品選定数の上限
設定、デフォルトファンド等も目白押しで、これらの解説や問題となるところも
ご紹介いたします。

◆日 時:6月3日(土)15:00~17:00 (受付開始14:45)

◆会 費:3,500円(お支払方法は、お申込み完了後にお知らせいたします)

◆講  師:登録講師
      1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

◆会 場:大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
     大阪府大阪市中央区大手前1丁目3番49号
    【アクセス】
     http://www.dawncenter.jp/shisetsu/map.html

◆定 員:20名
         
◆幹 事:みなとグローバル研究会 大阪大手門勉強会

◆申込先:参加を希望される場合は、下記のURLからお申込みください。
     http://benkyou-j.com/study/detail.php?sid=205


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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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 DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが以下のいずれかのサイトから登録情報の変更
をご連絡ください。ご連絡をいただかないと、情報誌や資格更新に関する案内
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 次号(第349号)は、6月1日(木)に送信予定です。
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