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  》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《

                         第324号(2016.5.15)
                      	   日本商工会議所
                     商工会議所年金教育センター

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             〉〉〉CONTENTS〈〈〈
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【企業年金レポート】
1〉確定拠出年金法改正を考える(第2回) 
  受託者責任の再考
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2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
  答案練習(全8回)
  2016年度試験対策 [第1回] 
  A分野:わが国の年金制度
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【勉強会の開催情報】
3〉大阪で開催する勉強会のご案内    
  「第7回 ホンネで語り合う企業年金事情」(再掲)
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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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 このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
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1〉確定拠出年金法改正を考える(第2回) 
  受託者責任の再考   上田 憲一郎
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 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(DC法改正法案)は、4月15日に
参議院本会議で可決され、再度、衆議院へ送付されました。いよいよ、改正事
項の実施が現実味を帯びてきたわけです。そこで、第2回は、DC法改正と受託
者責任の関連について考えたいと思います

 今回のDC法改正の背景には、社会保障審議会企業年金部会の議論があると思
われます。審議会の議論では、法改正項目と受託者責任との関連について(例
えば、運用商品数の抑制や指定運用方法に関する規定の整備について)委員か
ら指摘がありました。しかし、残念ながら、本格的な議論への展開は無かった
模様です。

 今回のDC法改正の項目は、特に上記の点において、忠実義務や注意義務とい
った、いわゆる受託者責任の発揮が、従来以上に求められる可能性があると考
えられます。なぜなら、運用商品数の上限に制約を設けるのであれば、限られ
た運用商品数の中から選定を行う加入者等に対し、商品や選定の有効性を確保
するために、忠実義務や注意義務と関連した議論と検討が必要であると考えら
れるからです。

 したがって、改正項目と受託者責任との関連について、具体的にはどのよう
な場面で、どのような内容の責務の発揮が求められるのか、法改正成立後の政
省令や法令解釈通知の改正の際、明確化することが必要になると考えられます。

 また、事前に確認しておくべき点として、受託者責任の概念についての整理
が挙げられます。何故なら、我が国では、そもそも、同概念について未整理の
部分を残置したまま、企業年金の業務の中で認識されている可能性があると思
われるからです。

 例えば、課題として挙げられるのが、裁判の判断ポイントと企業年金実務の
乖離です。企業年金に関する判例では、本質的には注意義務という受託者責任
の問題と思われる事案でも、判決の中では、契約条項の有無や解釈、責任の所
在や分担など、民法上の契約に関する事項に検討が集中しています。そして、
注意義務を真正面から検討された形跡はなく、受託者責任という言葉も出てき
ません。つまり、裁判における判断では、契約上の義務を重視しており、いわ
ゆる受託者責任や企業年金に関連する法令上の注意義務・忠実義務は裁判規範
として機能していないのではないかとの印象を持っています。

 しかし、今般のDC法改正法案に関しては、運用商品数の上限設定や運用商品
除外規定など、受託者責任の関連について、一層の検討が必要であると考えら
れる項目が入っており、今後、実務上は、一段と受託者責任を重視せざるを得
ないでしょう。今一度、受託者責任の概念や内容を整理しておく必要があると
考えられます。

 一方、留意しなくてはならないのは、受託者責任を巡って、英米法と大陸法
の流れをくむ日本法の考え方との間に、概念の相違が無いのかどうか、という
点です。 

 もともと、受託者とは信託の概念と言われています。そして信託とは、一方
当事者が他方当事者に置いた信認(confidence)又は受益者と受託者の信認関
係(fiduciary relation)に基づき、受託者は職務の執行に際して忠実義務(我
が国の信託法では22条)、善管注意義務(同20条)を負うとされています。

 我が国の企業年金において、この点を確認すると、受託者責任の定義として
は、英米法上の「fiduciary duty」の訳語であるとの指摘や、企業年金の資産
管理や運用に関与する者が契約上あるいは信義則上、当然負っている義務など
の指摘があります。また、受託者責任に関して企業年金連合会は「元来は英米
における信託受託者が負う義務を指すが、今日では‘他人のために裁量性をも
って専門的能力を提供する者’に拡大されており、厚生年金基金の運営に対し
ても幅広く適用されている。受託者責任の具体的義務として特に重要なのは
‘忠実義務’および‘注意義務’であり、受託者は業務を遂行するにあたり、
受益者の利益を確保するためこれらの義務を果たさなければならない」と解説
しています。

 企業年金、特に、今般の改正法案により大きく発展することが期待されるDC
の一層の発展と充実のためには、日本における受託者責任の明確化が必要では
ないかと思われます。

 今後、社会保障審議会企業年金部会や企業年金連合会DC小委員会等における、
更なる議論の深化が期待されます。

(本稿は、昨年開催された第35回日本年金学会での報告を基に執筆しております。
 日本年金学会の活動にご興味ある方は、同学会HPをご参照ください)。

 ※執筆者紹介
  上田 憲一郎 
  帝京大学 経済学部 経営学科 教授


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2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
  答案練習(全8回)
  2016年度試験対策 [第1回] 
  A分野:わが国の年金制度
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【問題】(2016年1月出題)

 次の設例に基づいて、下記の各問(《問1》~《問3》)に答えなさい。

《設例》
  下記の文書は「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保
険法等の一部を改正する法律」の施行に伴い、厚生年金基金(以下、「基金」
という)の解散を決定した際の通知書である。

             【基金解散決定通知】
   当基金は関連業界で働く皆さまの老後の生活安定と福祉の向上を目的とし
 て設立されてから30年以上が経過しましたが、バブル崩壊後のデフレ経済や
 少子高齢化等により、基金を取り巻く環境は大きく変化し、近年では運用成
 績の低迷に苦しんでまいりました。受給者の皆さまには給付の引下げをお願
  いする一方、事業主の皆さまには再三にわたる掛金の引上げにご協力いただ
 きましたが、基金運営は依然として厳しいものがあります。

  上記のような現状に鑑み、当基金では理事会や代議員会等において、今後
 の基金のあり方について何度も議論を重ねてまいりましたが、年金受給者数
  が加入員数を恒常的に上回り、年金給付費が掛金収入で賄えなくなっている
 状況では、近い将来、代行割れに陥る可能性が極めて高いといわざるを得ま
 せん。

  加えて、このたび施行された(A)「公的年金制度の健全性及び信頼性の確
 保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」で示された基金存続の
 ための基準は高く、これを実現するために事業主の皆さまに今以上のご負担
 をお願いすることは、企業の雇用維持や存続そのものに重大な影響を及ぼし、
 ひいては基金運営がますます困難になるものと判断し、やむなく(B)「当基
 金を解散」することに決定いたしました。

 ※上記以外の条件は考慮せずに、各問に従うこと。


《問1》 (A)「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保
       険法等の一部を改正する法律」の概要等に関する以下の文章の空欄(a)
       ~(f)に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のイ~ソ
       のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
 
(1) 同法のうち、基金制度の見直し等は、平成( (a) )年4月1日から施
  行され、施行日以後は基金の( (b) )が認められていない。
(2) 施行日から( (c) )年間の時限措置として特例解散制度を見直し、分
  割納付における事業所間の( (d) )をはずすなど、基金の解散時に国に
  納付する最低責任準備金の納付期限・納付方法に関する特例が設けられて
  いる。
(3) 施行日から( (c) )年後以後は、代行資産保全の観点から設定した基
  準を満たさない基金については、厚生労働大臣が( (e) )命令を発動で
  きる。
(4) ( (f) )給付の受給権保全を支援するため、基金から他の企業年金等
  への積立金の移行についての特例が設けられている。

                〈語句群〉
イ.3  ロ.5  ハ.7  二.25  ホ.26  へ.27  ト.新設 
チ.変更  リ.合併  ヌ.連帯債務  ル.共同債務  ヲ.保証債務 
ワ.清算  カ.改善  ヨ.解散  タ.上乗せ  レ.代行  ソ.老齢
 

《問2》 (B)「当基金を解散」して、(1)確定給付企業年金へ移行する場合
  と、(2)確定拠出年金へ移行する場合の移行支援策(移行要件の緩和)に
  ついて、それぞれ一つずつ挙げなさい。

《問3》 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等
  の一部を改正する法律に基づく、特例解散制度等に関する次の記述(1)~
  (4)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙
  に記入しなさい。また、不適切な記述については、その理由を簡潔に説明
  しなさい。

 (1) 代行部分に対する積立比率が1.0以上の基金は「健全」とされ、基金を
   存続することが可能となる。
 (2) 特例解散制度の適用を受ける予定の基金の受給者は、当該解散認可申
   請以後、上乗せ部分および代行部分の給付が支給停止となる。 
 (3) 代行割れしている基金が特例解散制度による「納付計画」を適用する
   場合、最低責任準備金に対する不足額を分割納付する際における利息は、
   変動金利(運用実績連動)が適用される。
 (4) 代行割れはしていないが、上乗せ給付部分が積立不足である基金は、
   特例解散制度を適用し、積み立ててある上乗せ資産を他の制度に移換し
   て退職給付を継続することができる。

 ※ 本練習問題の解答・解説については、資格登録者のみに公開しています。


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3〉大阪で開催する勉強会のご案内    
  「第7回 ホンネで語り合う企業年金事情」(再掲)
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 下記のとおり大阪で勉強会を開催いたします。

 厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等、各企業年金の動向や現
場の動き、実際の改革事例、退職給付会計の動向、基金やDBの資産運用動向、
DC投資教育の動向、諸外国の年金動向など幅広い内容をもとに、年金基金の
担当の方、企業の人事・労務担当の方、財務部門の方、事業主の方、運用機関
の方、コンサルタント等、それぞれの立場から自由に意見を語り合える場にも
してまいります。企業年金にご関心のある方のご参加をお待ちしております。


◆日 時:5月29日(日)10:00~12:00 (受付開始9:30)
     ※いつもの時間帯と異なり、午前中の開催となります。

◆会 費:3,500円(お支払方法は、お申込み完了後にお知らせいたします)

◆講  師:登録講師
      1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

◆会 場:大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
     大阪府大阪市中央区大手前1丁目3番49号
    【アクセス】
     https://www.dawncenter.or.jp/shisetsu/map.html

◆定 員:10名(先着10名の少人数勉強会となります)
          残席僅少につき、キャンセル待ちしていただく可能性もある
     ことをお含みの上、お申込みをご検討ください。
     
◆幹 事:みなとグローバル研究会 大阪大手門勉強会

◆申込先:参加を希望される場合は、下記のURLからお申込みください。
     http://benkyou-j.com/study/detail.php?sid=76


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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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 DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが以下のいずれかのサイトから登録情報の変更
をご連絡ください。ご連絡をいただかないと、情報誌や資格更新に関する案内
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 次号(第325号)は、6月1日(水)に送信予定です。
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