簿記で広がる無限の可能性
(城西大学簿記塾OBの皆さん)

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簿記の大会で数々の賞を受賞している城西大学簿記塾の1期生で、学生時代に日商簿記1級を取得したOBの皆さんと、簿記塾を創設した顧問の蛭川教授に、社会での活躍ぶりと、簿記に対する熱い想いを語っていただきました。

社員全員が学べば仕事がしやすくなる

-お仕事をするうえで、簿記はどのように役立っていますか?

03_interview_photo_01(中島)私が勤めるスーパーでは月次決算を出していて、各店の店長から私に、数字について質問が寄せられます。例えば仕入について、各店が発注するのですが、それが、決算のどの数字に反映されるかは、あまり意識されていません。ある費目の支出金額が大きい時には「そこには何が入るの?」と聞かれます。

いろいろな部門の社員と話して痛感するのは、簿記を会社の「共通言語」にすれば話が通じやすい、ということです。経理だけでなく、どの部門でも、また、社員でもパートさんでも、例えば仕入、売上、減価償却といった用語の意味を正確に知っていると、お互いに「会社として考える」ことになり、仕事がしやすくなって、会社のために大いにプラスになると思います。

会社全体の動きがよくわかる

03_interview_photo_01(猪鼻)コストに対する視野が広がりました。私はメーカーに勤務しており、現場では日々、売り上げと原価が強く意識されていて、経費や残業の削減、設備投資の吟味などが行われています。それ自体は正しいことですが、ともすると「経費を減らす=利益が出る」という意識になりかねません。大事なのは売上・原価・減価償却のバランスであり、経費を減らした結果、売上の機会損失を発生させては元も子もありません。私がそういった意識を持つことができたのは簿記を学んだおかげです。

決算書をつくり、数字を見ていると、会社全体の動き、これからの動向が良くわかります。簿記塾にいた時も、ただ問題を解くのではなく、「なぜこの会計処理を行うのか」「何のためにこの計算を行うのか」を重視するようにしていました。そのおかげで会社全体の情報・流れをつかむことができ、「自分が会社を動かしている」、という実感を持つことができています。

「なぜ」から思考力が養われる

03_interview_photo_01(木田)日商簿記の魅力は、まず、資格としての知名度が高いということがあります。もう一つは、私が高校で生徒に簿記を教えていて感じることで、「問題を正しく読むことで論理的な思考力が養われる」ということです。また、数字の意味をきちんと理解し、数字を読む力がつきます。勉強を進めていくと、ともすると惰性で問題を解くことになりがちですが、必ず、「なぜそうなるのか」を考えながら勉強することで、こうした力がつくのだと思います。

3級、2級、1級で見える景色が変わる

-簿記を勉強中、あるいは、これから始める方にメッセージをお願いします。

(猪鼻)簿記は、家計簿から国家予算まで、あらゆる場面でその考え方が使われます。会社であれば経理だけではなく、営業・企画・管理等他の部門にも深く関係します。また、世界中の人に通じる「共通の言語」であるため、海外との仕事・コミュニケーションでも役立てることができます。1級でも、2級でも3級でも構いません。大事なことは簿記の考え方を身に付けることです。そうすれば、必ず自分の「引出し」を増やすことができます。

03_interview_photo_01(木田)問題を解く時にはいつも、「なぜこの仕訳になるのか」「なぜこの数字になるのか」など、「なぜ」を持ち続けるよう教えています。すぐにわかったら面白くありません。時間をかけながらも、考えることを続けて欲しいのです。簿記を通じて「勉強する」という概念が変わる、ということを、これから始める方たちにはぜひ、伝えたいです。

(中島)どのような仕事に就くとしても、どの会社に就職するにしても、経理の仕事は必ずありますので、「何をやりたいかがわからない」という方には、簿記を勉強することをお勧めします。決して無駄になることはなく、将来、役に立ちます。

(蛭川)これから簿記を勉強する方にお伝えしたいのは、3級、2級、1級と進むにつれて、見えてくる周りの景色が変わってくる、ということです。例えば、3級に合格した段階で「公認会計士を目指してみよう」と考える人は少ないですが、2級に受かるとこうした気持ちを持つ人が増えます。資格を取る喜びを知ることで、行政書士など他の資格を取ろうとする人も出てくるのです。夢が広がるわけですね。

1級は合格率1割前後で、一般の学生にはかなりの難関です。それでも簿記塾の学生に挑戦させるのは、磨くことで彼らが「ダイヤモンド」に変わる可能性があるからです。ともに試練を乗り越えようとする中で、簿記塾の学生は強い人間関係を築いていきます。だから私は簿記塾で簿記教育を続けているのです。

Profile

蛭川幹夫 Hirukawa Mikio
1947年、愛知県生まれ。城西大学経営学部マネジメント総合学科教授。高崎経済大学卒業後、埼玉県立高校の教員に就任。熊谷商業高等学校簿記部顧問をはじめ高校教員として簿記教育に従事。1997年、城西大学に移り簿記塾を創設。2008年より現職。著書に「基本簿記」など多数。

木田大輔 Kida Daisuke
1981年埼玉県生まれ。埼玉県立上尾高等学校教諭。

中島康成 Nakajima Yasunari
1983年埼玉県生まれ。同県下を中心に展開するスーパー、株式会社マミーマート財務部チーフ。

猪鼻直樹 Inohana Naoki
1985年埼玉県生まれ。コイル製造の東光株式会社経理センター経理財務部勤務。