自分もブレーンとして、よりコアな部分から経営を支えたい
(フリーランス薬剤師 橋本健之介さん)

簿記資格を生かして、社会で活躍する方を紹介する本コーナー。

今回は、大学卒業後に新卒で薬局に勤務し、現在はフリーランスの薬剤師として複数の調剤薬局と業務委託契約を結びながら活躍されている橋本健之介さんにお話を伺いました。

橋本さんは、社会人5年目に日商簿記3級・2級に合格。その簿記の知識を土台としながら、現在は税理士試験科目合格に向け、日々学習を続けられています。

-薬剤師として仕事をされながら、簿記の学習を始められたきっかけを教えてください。

私自身、薬局を経営する両親の背中を見て薬剤師を目指し、現場での仕事にやりがいを感じていました。次第に、より主体的に働きながら、さまざまな現場で多くの知見と経験を積みたいと考えるようになりました。そこで、フリーランスの薬剤師として複数の調剤薬局と業務委託契約を結ぶ道を選びました。通常、一つの薬局で勤務することが一般的な薬局勤務の薬剤師の働き方ですが、私の場合、曜日ごとに契約を結んでいる薬局で勤務する形になります。

フリーランスとして多くの薬局経営者の方々と接する中で、薬局の財政状態や経営課題について話す機会が増えました。薬剤師として薬学に関する知識はあるものの経営に対して直接的に貢献できない無力感をおぼえ、「自分もブレーンとして、よりコアな部分から経営を支えたい」と強く感じるようになりました。

経営を支える専門資格として、税理士と社会保険労務士の2つの選択肢を検討しましたが、個人事業主として働くなかで税金に触れる機会が増え、次第に税そのものへの関心が高まったことから、税理士を目指すことを決意しました。

また、薬局経営者の多くは薬剤師免許を持たれていますが、税理士とのコミュニケーションに苦労されている方も少なくありません。そのため、「薬剤師の現場感覚と税理士資格の両方を持った人がいれば非常に助かるのではないか」と考えたのも大きな理由です。実際に経営者の方々にお話を伺うと、9割以上から「そのような税理士がいたら本当に助かる」と背中を押していただき、高い需要があることを確信しました。

ただ、いきなり税理士試験の学習に入ると挫折しやすいと聞いていたとともに、分野との相性も見極めたかったため、その前段階としてまず日商簿記3級、そして2級の取得をステップとして踏むことにしました。

-仕事をされながら簿記を学習し、合格するまでの過程で、苦労されたことはありますか。

私は、簿記3級は今年(2026年)の5月に学習を始めて3週間後に合格し、簿記2級はその後すぐに学習を始めて2か月後の8月に合格しました。

簿記は語学と同じで、とにかく毎日触れ続けることが大切だと聞いていたため、アプリや動画を活用し、1日も簿記に触れない日を作らないことを心がけました。週6日勤務のため自由に使える時間が限られています。そのため、電車での移動時間はYouTube動画によるインプットに充て、自宅などで机に向かえる限られた時間はすべて問題演習のアウトプットに使うようにして、効率的に学習ができるよう工夫しました。

動画でインプットした直後でも、市販の問題集に取り組むと最初は2〜3割程度しか正解できませんでした。この時期が最も苦しかった時期です。しかし、同じ問題集を何度も繰り返し解いていくうちに、自然と解き方が身についていきました。「ある瞬間、急に解けるようになる」という合格体験記をよく目にしますが、まさにその通りで、辛くてもとにかく問題に向き合い続けることが大切だと実感しています。

-簿記を取得したことで、現在のキャリアや生活にどのような変化がありましたか?

薬剤師という職業において直接的な影響があったわけではありませんが、経営者の方との雑談レベルでは役立っているというのが素直な答えになります。

ただし、個人事業主として確定申告や経費処理など実生活の部分ではとても役立っています。以前は「数字に間違いがないか」という不安がありましたが、仕訳や仕組みを理解できたことが精神衛生上大きな効果がありました。

また、現在取り組んでいる税理士試験の学習において、日商簿記2級・3級の知識が強固な土台・アドバンテージになっています。もし段階を踏まずに始めていたら行き詰まっていたと感じるほどで、ステップとして選んで大正解でした。

-日商簿記をはじめ、資格取得や、リスキリングを目指している方々にメッセージをお願いします。

資格取得において大切なのは、「資格取得そのものをゴールにしないこと」だと思います。

「その資格を取ってどう活かすか」「どう生きていくか」という明確な目的意識を持って取り組むと、学習効率やモチベーションが格段に上がります。私の場合は、税理士試験の合格をゴールにして、そこから逆算していつまでに日商簿記2・3級を取得しなければならないのかを考えました。そのため、事前に「〇月までに合格する」とスケジュールを逆算して受験日を予約してしまうのも1つのやり方だと思います。

働きながらの学習となると、それぞれの状況があり、個々人でペースが異なると思います。ですが、新しい分野を学ぶことや資格取得に向けた挑戦そのものが素晴らしい一歩ですので、ぜひご自身を褒めてあげてください。

そして、自分が掲げる目標に向かって小さな積み重ねを続けてみてください。私もまだ税理士試験合格に向けて挑戦の途中です。一緒に頑張りましょう!

Profile

橋本 健之介 Kennosuke Hashimoto

1996年秋田県生まれ。薬剤師国家試験合格後、薬局に数年間勤務。その後、フリーランスの薬剤師として、複数の調剤薬局と業務委託契約を結び勤務しながら、税理士試験合格に向けて挑戦中。(2026年9月取材)