流通・小売業の「地図」を持ち、生活者と企業をつなぐマーケターへ。 販売士の学びを実務と後進育成に活かす
(株式会社クレオ 岡部 紗也加さん)
資格を生かして、社会で活躍する方を紹介する本コーナー。
大学在学中にリテールマーケティング(販売士)検定2級を取得し、就職後、見事1級に合格された株式会社クレオの岡部紗也加さん。マーケティング支援の最前線でクライアントに伴走しながら、最近では母校で寄付講座の教壇にも立ち、後進の育成にも携わっています。
「資格の学びは、日々の業務の目的や立ち位置を教えてくれる『地図』になる」と語る岡部さんに、資格取得の経緯や独自の勉強法、そして実務での活用エピソードについてお話を伺いました。

1. リテールマーケティング(販売士)検定との出会いと、仲間と乗り越えた2級取得
―販売士の学習を始めたきっかけや、学生時代のエピソードを教えてください。
大学時代は商学部に所属し、流通・小売業のマーケティングや経営を専門とするゼミで学びました。その取り組みの一環としてリテールマーケティング(販売士)検定の存在を知り、さらに大学で開講されていた寄付講座を履修したのが直接のきっかけです。
ゼミでは、「流通・小売業の知識を深めよう」という有志で販売士の勉強を始めました。販売士ハンドブックの1チャプターごとに学生がスライドを作り、「自分はこう理解した」と発表し合う輪読スタイルを取り入れていました。単なる暗記ではなく、リテールマーケティングの本質をみんなで議論しながら深く理解していく過程がとても楽しく、試験勉強特有のピリピリした空気は全くありませんでした。「ひとつの課題をみんなで乗り越えよう」という一体感のなか、大学2年の終わりに2級に合格できたことは、大きな成功体験になりました。
2.社会人としての壁と、1級合格に向けた独自の学習法
―就職後、お仕事をされながら1級に合格されています。社会人になってからの学習は大変だったのではないでしょうか。
入社1年目の時、会社の「チャレンジ目標(業務外で自由に目標を設定し、成長を評価する制度)」に販売士1級の取得を登録しました。会社に宣言することで「やらなきゃ!」という半強制的な環境を自分で作ったんです。
とはいえ、最初は業務に慣れるのに精一杯で、時間の確保にとても苦労しました。合格するまでに2年ほどかかりましたが、「会社の行き帰りのスキマ時間での反復」と「週末のまとまった時間の活用」を徹底し、毎日必ずテキストに触れることだけは続けました。ハンドブックを常に手元に置き、市販の過去問題集と照らし合わせながら知識を定着させていきました。
また、社会人になると急な業務などで学習の計画が立てづらいこともありますが、ネット試験(CBT方式)は、学習の進捗や業務の都合に合わせて「自分の受けたいタイミングで受けられる」ので、働きながら1級を目指すうえで大きな後押しにもなりました。
―独学でのモチベーション維持はどのように工夫されましたか?
もともと学ぶこと自体が好きだったこともありますが、私にとって資格勉強は良い「気分転換」になっていました。実際のマーケティング実務では明確な正解がない中で、常に考え続けて最適解に近づけていくことが求められます。一方で資格試験は、「なぜそうなるのか」という論理が明確で、ある程度答えが決まっているため、学習を進めることで頭の整理につながり、日々の業務のリフレッシュにもなりました。また、なかなか覚えられない用語があっても、「やっていればいずれ覚えられる!」とゲーム感覚でポジティブに取り組めたことが、モチベーション維持につながったと思います。
また、結果が出ない時も、お昼休みにテキストを広げて勉強している姿を上司が見てくれていており、「結果だけでなく過程も大事」と温かく見守り評価してくれた会社の企業風土にも、本当に助けられました。
3.実務で活きる販売士の知識。「業界の地図」と「現在地」を知る強み
―現在、株式会社クレオでの担当業務において、販売士の知識はどのように活きていますか。
現在は、東日本マーケティング本部にて、メーカーや流通・小売業に対するマーケティング支援(販促企画やプロモーションなど)を担当しています。
日々の業務のなかで、販売士の知識がダイレクトに直結するというよりは、クライアントの課題を深く理解するための「強力なインプット」として機能していると感じています。
新入社員や若手にとって一番ハードルが高いのは、流通・小売業の「商流」や、店頭から本部に至るまでの「大きな流れ」を把握することです。現場のパートスタッフさんや本部のバイヤーさんが、毎日、毎月、年間を通して何を考え、どう動いているのか。販売士の学習を通じてそうした「流通・小売業界の大きな地図」を頭の中に描けているからこそ、自分が提案するマーケティング施策が「流通・小売業の業務プロセスのどこに位置づけられるのか」「何のためにこの仕事をやるべきなのか」を俯瞰して理解することができます。
上辺だけの理解ではなく、しっかりと地に足のついた、生活者と企業を結びつける「リアルなマーケティング」を提案するうえで、販売士の知識は間違いなく大きな武器になっています。

4.実務家としての母校に凱旋
―先日、母校の寄付講座に、今度は「実務家・講師」としてご登壇されたと伺いました。
所属ゼミの先生からお声がけをいただき、今年初めて教壇に立たせていただきました。かつて自分が学んだ場所に実務家として戻れたことは感慨深かったです。
講義では、「クレオという会社がどんな仕事をしていて、それが小売業の実務にどう落とし込まれているのか」をお話ししました。学生たちに「なぜこの業務が存在するのか」を言語化して伝える作業は、私自身にとっても、クライアントと伴走する自分たちの仕事の存在意義を再確認する素晴らしい機会になりました。「マーケティングってやっぱり楽しい学問だな」と心から思えました。この気づきを機に、自身の学びや視点もさらにアップデートしていきたいと考え、先日、日本販売士協会が提供する10代~20代の若い世代の販売士が交流するコミュニティ「みんなの販売士」に初めて参加しました。同じ世代の様々な立場の販売士との交流を通じ、自身の知見が広がってきていると感じています。
5.学習者へのエール
―最後に、これからリテールマーケティング(販売士)検定試験の受験を検討されている方へメッセージをお願いします。
資格試験は、どうしても「合格すること」自体が目的になりがちです。しかし、本当に大切なのはその背景にある「なぜこの理論が生まれたのか」「どう実務につながっていくのか」という本質を理解することだと思います。
販売士の学習を通じて得た知識は、自分の仕事の意義を教えてくれる羅針盤になります。ぜひ、「取らなきゃいけない」というプレッシャーではなく、「学ぶことの楽しさ」や興味をひとつでも見つけて、試験勉強を楽しんでみてください。そのプロセスで得た知識は、必ず皆さんのキャリアを豊かにしてくれるはずです。
Profile
岡部 紗也加 Sayaka Okabe
株式会社クレオ 東日本マーケティング本部 マーケティング企画部
日本大学商学部卒業。在学中の大学2年次にリテールマーケティング(販売士)検定試験2級を取得。
卒業後、株式会社クレオに入社。現在はメーカーや流通・小売業向けのマーケティング支援(販促企画・プロモーション等)業務に従事する傍ら、社会人として働きながら学習を継続し、同検定1級を取得。
現在は、一般社団法人日本販売士協会の登録講師としても活動し ており、母校である日本大学の寄付講座の実務家講師として教壇 に立つなど、産学連携や後進の育成にも積極的に取り組んでいる。
株式会社クレオ について

「生活者の半歩先の価値観」を捉え、マーケティング・プロモーション・クリエイティブなど多様な領域から企業の課題解決を支援するマーケティングカンパニー。「生活者マインド大全」の発刊や、産学連携プロジェクトの積極的な推進など、生きたデータに基づくリアルなマーケティングを強みとしている。

