プロラグビー選手からM&Aの世界へ。異色のキャリアチェンジを支えた「日商簿記2級」と「先を見据えた準備と行動」
(ソーシング・ブラザーズ株式会社 石塚弘章さん)
簿記資格を生かして、社会で活躍する方を紹介する本コーナー。
今回は、大学を卒業後、2016年にヤマハ発動機株式会社に入社し、プロラグビー選手として9年間活動。2025年6月に現役を引退され、その後、社業に専念したのち、現在は新たな舞台(M&A業界)でキャリアを進まれている石塚弘章さんにお話を伺いました。
石塚さんは、社会人2年目に簿記3級、社会人10年目に簿記2級に合格。その簿記の知識を土台としながら、現在はビジネスの第一線で活躍されています。

-ラグビーのプロ選手として長くご活躍されていましたが、日商簿記の学習を始められたきっかけを教えてください。
実は、簿記との最初の出会いはヤマハ発動機に入社して2年目の頃でした。人事部に配属され社業も行っていましたが、ラグビー部員向けの自己啓発の一環として「社内の財務部の人が簿記を教えてくれる」というサポート体制がありました。せっかくの機会だから受けてみようと週に1回講義を受け、約3ヶ月の勉強を経て「日商簿記3級」を取得しました。
ただ、その時はまだ現役の選手でしたし、実務で使うわけではなかったので、3級の知識だけではビジネスの現場で「財務状況を見ることができる」という実感までは持っていませんでした。
その後、現役引退を視野に入れた際、次の舞台としてM&Aの世界に挑戦したいと決めたことが、2級取得を目指す大きなきっかけになりました。企業の財務状況を正しく把握することが欠かせないM&A仲介の仕事において、簿記の知識はとても大切です。転職先の企業からも入社前に簿記検定の取得を推奨されていたため、結果的に良いモチベーションとなりました。
それに加えて、「今までラグビーしかしてこなかった人間」と思われるのがどうしても嫌だったという強い思いもありました。「自分はビジネスパーソンとしても、きちんと勉強して成果を出すことができる」ということを客観的に証明したい。そのため、自分の「ステータス」として、かつて取得した3級の知識を活かし、より難易度の高い「日商簿記2級」に挑戦しようと決め、引退を控えた2025年4月から本格的に学習をスタートしました。

-フルタイムで仕事をしながらの学習は大変だったかと思います。どのような苦労がありましたか?
2級を受験する時は、色々と考えた結果、独学で挑戦することを決めましたが、かなり苦労しました。引退後はフルタイムで社業に従事していたため、時間を作るのが難しく、テキストや過去問、YouTubeの解説動画を見ながら一人で進めるスタイルだったので、分からない部分をすぐに人に聞けないのが辛かったです。
3級はスムーズに合格できましたが、2級は合格するまでに4回ほど受験しました。今のネット試験は自身のタイミングで何度でも挑戦できるので、諦めずに打席に立ち続けました。途中で転職活動の面接などが重なり、数ヶ月間学習をストップした時期もありましたが、最終的に12月に合格できた時は本当にホッとしました。
-取得された簿記の知識は、どのように活かせていますか。
今、実務で多くの経営者様から企業の財務諸表をお預かりしていますが、「2級を隅から隅まで学習して、やっと実務の基礎レベルに立つことができる」と痛感しています。3級は簿記を学ぶ上で必要な「入門編」の立ち位置ですが、ビジネス、特に企業のM&Aという世界においては、2級の知識があって初めて決算書の数字の背景にある企業の動きがリアルに理解できるようになります。
お客様となる企業も特定の業界に絞られることなく、幅広い業界・業種の会社を相手にするので、日々勉強と思って取り組んでいます。
-日商簿記をはじめ、資格取得や、リスキリングを目指している方々にメッセージをお願いします。
私自身、まだまだ今のM&Aの仕事を必死に覚えている段階ですが、振り返って大切だと思うのは「準備」と「行動」の2つです。
ヤマハ時代の最初の上司から「仕事は準備が8割だ」と教わりました。現役のうちから次のキャリアを見据えて準備をしていたことは、その後のスタートダッシュを大きく変えました。現役時代に少しでも簿記3級に触れていたという「準備」があったからこそ、2級への挑戦にもスムーズに踏み切れたのだと思います。
そしてもう一つは、「思い立ったらすぐ行動すること」です。私は「2級を取ろう」と決めたその日に書店へ行ってテキストを購入しました。何かを買う、申し込むといった小さな行動を起こせば、「もうやるしかない」という気持ちに自分を追い込むことができます。
Profile
石塚 弘章 Hiroaki Ishizuka
1993年東京都生まれ。成城大学卒業後、ヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)でプロラグビー選手として活躍。2025年6月に現役を引退し、同年12月に日商簿記2級を取得。現在はソーシング・ブラザーズ株式会社で活躍中。(2026年5月取材)

