販売士の学びを武器にキッチンカー起業、ハンドブックは今も手元に置く頼れるガイドです (Sui 代表 山城 朱理 さん)
資格を生かして、活躍する社会人の方を紹介する本コーナー。
リテールマーケティング(販売士)検定試験は、販売や店舗運営などの幅広い知識を習得するために役立つ資格です。
今回は、福岡を拠点に、シェアオフィスの運営管理、キッチンカー、教育・人材育成と多方面で活躍する山城朱理さんにお話をお伺いました。

―どのようなきっかけで販売士取得を目指すこととなったのでしょうか。
販売士検定と出会ったのは、大学3年の時でした。当時は新型コロナウイルスの感染拡大により大学の授業が制限されていた時期で、時間に余裕のある時に何か資格を取っておこうと考え、ゼミの指導教授に相談したのがきっかけです。先生から「販売士という面白い資格があるよ」と勧められ、将来役に立つかもしれないと思い勉強を始めました。最初から「2級でもいける」と背中を押されたため、先生に教わりながら2級に挑戦、その年には2級に合格し、更に翌年には1級も取得しました。
2級と異なり1級の試験は非常に難易度が高くなります。初回の受験では、5科目中2科目のみの合格にとどまりましたが、卒業式後の3月末というタイミングに再挑戦し1級合格を勝ち取り、ぎりぎり在学中ということで大学から奨励金もいただきました。奨励金は大きなモチベーションになります。
―販売士を取得され、卒業と同時に「会社員」と「起業家」の二足のわらじを履くこととなりました。どのように上手く両立されているのでしょうか。
大学卒業後は、株式会社タスクールPlusに入社しました。タスクールPlusは、起業支援やセミナー運営、シェアオフィス運営管理などの事業を展開する名古屋に本社がある会社です。現在私は、福岡市内の拠点であるコワーキング&シェアオフィスMIND CHANGEの運営管理に携わっています。平日はタスクールPlusで社員として働く一方で、週末はSuiの代表としてキッチンカー事業など週末起業を実践しています。

タスクールPlusで働くこととなったきっかけは、卒業後の進路を考えていた時に、学生時代に取り組んでいた、学生ベンチャーを目指すインカレのコミュニティー活動を通じて面識のあった同社の社長からお誘いを受けたことです。丁度、福岡に拠点を作る計画があったことから声をかけていただき、起業が当たり前という社風も魅力で入社しました。入社とほぼ同時期に商業教育・ビジネス教育の振興を目的とした一般財団法人を共同で設立し、2024年4月には個人でキッチンカー事業を立ち上げました。
現在、平日はシェアオフィスの運営管理、土日はキッチンカー出店と、多忙ながらも充実した日々を送っています。色々な場所で、様々な人と接点がもてるキッチンカー事業は私にとってのリフレッシュの場になっています。また、キッチンカーを通して、人とのご縁や、自分がやりたいと思うことが広がっていくことが何よりの楽しみです。

―卒業と同時に起業したキッチンカー事業で、販売士の知識はどのように役立っていますか。
キッチンカーでは、沖縄で祖父がかつて営んでいた飲食店の味を再現したメニューを提供しています。「タコライス」、「ポーク玉子おにぎり」など沖縄の家庭の味です。


販売士を学んで一番良かったと思うのは、消費者として、そして販売者として「戦略」が見えるようになったことです。キッチンカーの現場では、テキストで学んだ陳列方法や照明の色彩効果(白熱灯から作業しやすい白ライトへの変更など)を実践し、メニュー表の改善も常に行っています。陳列の仕方、照明の色、メニュー表記一つ変えるだけで、売れ行きが大きく変わります。
特に、原材料価格やガソリン代高騰に直面し、キッチンカー事業はその影響を直に受けてしまいますが、販売士の知識は、事業を継続させていく上での冷静な判断材料となっています。
販売士1級のテキストでは原価率の考え方を学びます。キッチンカーの適正原価率は3割が上限といわれていますが、現実的に今の状況では、その水準を達成し、満足のいく商品を提供することは非常に厳しいです。今は、原価率を4割程度に抑えながら、どうしたら売上・利益を確保できるか考えています。
また、出店地域による客層の違い、例えば、現在、良く出店している福岡市内と佐賀県域では購買行動に差があるのですが、現場での経験と販売士の理論を照らし合わせながら分析し、対応策をとっています。知識の裏打ちがあるからこそ、業界未経験でも「この話は常識から外れていないか」を判断できる能力が身についたと感じています。


―販売士資格の取得を目指している方や、新たなスキルや知識習得に向けて勉強している方に一言お願いします。
シェアオフィスの運営管理、キッチンカー事業の他にも、福岡販売士協会のメンバーとして地域における販売士の普及・養成に取り組んでいます。また、若手販売士のインターネット・コミュニティである「みんなの販売士(通称:みんぱん)」の活動も昨年スタートさせ、学生や若手社員を中心に情報交換・意見交換の場を立ち上げています。その他にも、専門学校でのゲスト講師や、福岡市内の大学で学生を対象とした連携講座での登壇など、教えるということにも挑戦しています。
販売士の良さは、勉強したことが街中のドラッグストアや小売店舗など、日常生活の中ですぐに確認できる「実学」である点です 。私自身、大学までバスケットボールに力を入れ、販売・接客のアルバイト経験がないまま社会に出ましたが、販売士の知識があったおかげで、現場でもスムーズに動くことができました。知識のインプットが、大きなアウトプットに繋がっています。
資格の勉強を「何に使えるか」だけで判断するのではなく、学ぶことで視野が広がり、新しいアイデアや行動に繋がることが最大の意義だと捉えることが大切です。3級からでも良いので、まずは勉強してみることをお勧めします。販売士という共通言語を持つことで、世代を超えたプロフェッショナルな方々と繋がれる楽しさが待っています。
Profile
◆山城 朱理(Yamashiro Syuri)
大学在学中にリテールマーケティング(販売士)検定1級を取得。卒業後、株式会社タスクールPlusに勤務しながら、個人事業主としてSuiを設立。沖縄料理を中心としたキッチンカー運営、物販、教育事業に携わる。福岡販売士協会および札幌販売士協会会員。

