簿記は留学生におすすめの資格です
(有限責任監査法人トーマツ 王業宏さん)
簿記資格を生かして、活躍する社会人の方を紹介する本コーナー。
今回は、有限責任監査法人トーマツで働く王業宏(オウ・ギョウコウ)さんにお話を伺いました。
-日本に留学したきっかけと公認会計士を目指すことになった経緯を教えてください。
中国の高校を卒業した後、日本へ来ました。日本語学校で2年間を過ごした後、そのまま日本の東洋大学に進学。大学在学中に公認会計士試験に合格し、現在、修了考査の合格に向けて有限責任監査法人トーマツで働いています。
日本に興味を持ったきっかけは、多くの中国人留学生と同じですが、やはり日本のアニメや漫画、ドラマですね。「日本で生活したい」という思いから、高校時代に日本語の塾へ通って日本語を勉強していました。もちろんその時は、今のように日本で就職することまでは考えていませんでした。ですが実際日本へ留学してみると、日本での生活がすごく楽しくて、ここでの暮らしが自分に向いていると感じたため、日本で就職したいと思うようになりました。
簿記を初めて受験したのは大学1年生の時です。日本語学校の先生が「簿記は就活にとても役立つ」と教えてくれたことがきっかけで、3級を受験しました。最初は日本での就活のために受験しましたが、このときの勉強を通じて会計学の面白さに気付きました。簿記資格の最高位は何だろうと調べてみたところ、「資本市場の番人」といわれる「公認会計士」という職業に出会い、やりがいのある仕事だと憧れたため目指すこととなりました。
大学1年生で3級に合格したあと、次の2級も受験しましたが、この時は自分の適性確認の意味合いが大きかったです。「これで合格点に程遠い結果だったら、自分に公認会計士は向いていない」という確認ですね。無事2級も合格できたので、公認会計士試験合格に向けて全力で勉強することを決意しました。
2級までは独学でしたが、それ以降は、公認会計士や税理士を目指す友人たちと一緒に学習をしていました。当時の勉強のモチベーションは、やはり「公認会計士になるぞ」という気持ちでした。当時、同じ中国からの留学生で、すでに公認会計士試験に合格した先輩がいたんです。その方から、公認会計士をはじめ同じ分野で、正義感を持って仕事にあたる方々の話を聴いており、自分もそういう風になりたいという憧れを持っていました。
簿記1級は、公認会計士の短答式試験の1か月前に受験し、合格しました。公認会計士の試験範囲と一部被っていたため、その後の勉強にも役立ち、無事、大学在学中に公認会計士試験にも合格できました。
大学卒業後、現在の有限責任監査法人トーマツに就職し、公認会計士試験合格者として、金融機関の財務諸表の監査に従事しています。
-簿記の面白さはどのようなところでしょうか。
簿記を勉強すると、企業の財務諸表を読めるようになります。そうすると、企業の実態がよくわかるようになる点がとても面白いです。また、世界には様々な会計基準があるので、色々な国の状況がわかるのも魅力ですね。
簿記の勉強で苦労したのは、専門用語等の日本語の部分でしょうか。日常生活でなかなか使わない単語もあるので、漢字圏出身の私でも難しく感じる部分はありました。漢字から意味を推察し、単語の意味を確認、その後問題を解くという流れで学習を進めましたが、結果、日本語の勉強にもなりました。大学生の時はコロナ禍だったこともあり、なかなか外に遊びに行くということもできなかったので、その分の時間を全て勉強に充てていました。
-日商簿記資格の取得を目指している方へ、メッセージをお願いします。
簿記は、「資本主義社会の共通言語」です。私が目指している公認会計士の仕事は、何よりも簿記が基礎となります。ですが、監査や会計のみならず、どんな業界で働いていたとしても、簿記の知識は必ず役に立ちます。そのため、簿記を勉強して損をすることは全く無いと考えています。
特に留学生の皆さんには、授業以外の時間を有効活用して、簿記等の資格を取得することをお勧めします。私は簿記を勉強したことで、その先の選択肢が広がりました。自分の将来のためにも、絶対取った方が良いと思います。
私自身の目標は、公認会計士の修了考査に合格し、正式に公認会計士となることです。公認会計士となった後、監査法人や一般企業での経理、はたまた独立をしたとしても、やはり簿記の知識が必要となります。今後も、最新の会計基準等の知識を吸収して、常に勉強し続けていきたいと思っています。
Profile
王 業宏 Yehong Wang
中国・大連生まれ。高校卒業後、日本へ留学。東洋大学在学中に簿記1級を取得し、公認会計士試験に合格。卒業後は有限責任監査法人トーマツに就職。
有限責任監査法人トーマツについて
日本で最大級の会計事務所の一つであり、デロイトトウシュトーマツのメンバーファーム。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援、ファイナンシャルアドバイザリーサービス等を提供する。
https://www.deloitte.com/jp/ja/about/group/deloitte-touche-tohmatsu.html