勉強もスポーツも根本は同じです
(立川アスレティックFC 皆本晃さん)

簿記資格を生かして、活躍する社会人の方を紹介する本コーナー。
今回は、立川アスレティックFC(東京都立川市)選手兼代表理事の皆本晃さんにお話を伺いました。

皆本さんは、FIFAフットサルワールドカップ リトアニア2021に出場するなど第一線で活躍するフットサル選手でありながら、Fリーグ(日本フットサルリーグ)に所属する立川アスレティックFCの代表理事としてクラブの経営を担い、まさに「二刀流」でご活躍されています。

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提供:立川アスレティックFC

-日商簿記2級の資格をお持ちとのこと。取得のきっかけは何でしょうか。

もともと選手一本でやっていたときから、ゆくゆくは経営者になりたいと思っていましたが、ある時スポンサー企業の社長に「簿記を勉強したほうがいい」と言われました。その方は簿記3級の資格を取得されていました。決算書など日頃馴染みがなく、「いつか」とぼんやり、心の片隅で思っていました。コロナ禍で突如時間が生まれ、その言葉を思い出したんです。テキスト、問題集を買って、勉強時間数を調べて、取得までのタスクを決め、独学で取り組みました。大学は理系の学部で学んでいて、数字や勉強に対する苦手意識はありませんでした。自分でやると決めたことをやるだけです。3級、2級と取得していったのですが、約3か月で各級の問題集の問題は解答できました。3級に合格したのが2021年の3月で、簿記のネット試験が始まって間もないころですね。いつでも受験できる環境はありがたかったです。年3回の統一試験の施行日は日曜日なので、試合などと重なり受験できなかったかもしれないです(笑)。

その後、2022年にクラブの代表理事に就任しました。アスリートが経営者を兼任しているということで、色メガネで見られることもあります。ただ、簿記2級を持っているという事実で相手からの信頼を得ることもできますし、仮にそういった目で見られても、自分は簿記2級を持っているというある種自信があるのであまり気にならないです。世の中で広く認知されており、持っているだけですごいと思われる資格はなかなかないですから、簿記はそれだけ信頼度の高い資格だと思います。

-簿記の勉強で気をつけていたことはありますか。

仕訳など答えがある程度パターン化しているものは、丸暗記しました。「なぜこうなるのだろう」と疑問に思う部分があっても、「こう決まっているのだからこれはこう」と割り切って演習を重ねました。理解は、後からついてきたと思います。成果は時間数に応じて表れます。簿記の勉強をしていたときは一日に3、4時間は勉強していましたね。目標に向かって、何が自分に足りないかを考え、やるべきことを継続して行うことは、スポーツ選手としても大事にしています。勉強もスポーツも根本は同じですね。

-簿記を勉強するメリットを教えてください。

Fk5JsqQRクラブの経営を行ううえでは、税理士の先生とスムーズに話ができるというメリットを感じています。何も基礎がない状態だとなかなか話が頭に入ってこないですからね。簿記の学習を通じて、数字を根拠に物事を考えることができるようになります。これは経営者だけでなく、社員にとってもメリットです。漫然と目の前の作業をこなすよりも、会社の最終目標の利益のような数字が見えた上で普段の業務を行うことができれば、仕事へのアプローチも変わってくるのではないでしょうか。

スポーツ選手にとっても、当然セカンドキャリアを考えたら意義があると思います。実はプロスポーツ選手は時間があるんです。サッカーやフットサルのような運動の強度が高いスポーツは長時間練習することはできないので、午前中には練習が終わります。そこから午後、セカンドキャリアのために勉強などに時間を充てることができればいいですが、現役時代に引退後のことはあまり考えたくなく、行動に移せないのも理解できます。自分の場合はコロナ禍という外的要因でまとまった時間が生まれたことで簿記の学習をすることができましたが、スポーツ選手も機会があればぜひ取り組んでほしいです。

-選手兼代表理事としてどのような日々を過ごされているのでしょうか。

午前は9時半から11時半まで選手として練習し、午後はクラブの経営者として13時半に事務所に出社しています。出社後は営業や管理業務などを行い、家に帰るのはだいたい21時半から22時半の間です。今は自分が選手兼代表理事であるうちに、立川の経営者の方に一度でも試合を見に来てもらうことを目標に日々活動しています。

今後は、クラブ理念である「スポーツで、人生に大きな夢と、毎日に小さな彩りを」のもと、立川をスポーツが生活の一部となるほど根付いているような街にしたいと思っています。立川を先行事例にそうした街を日本中に作っていきたいと思っています。勉強でもスポーツでも同じですが、一気にゴールには辿り着けません。ですので、土台からしっかり積み重ねていきたいです。目標に向けた手ごたえはあります。やることをやり続けるだけです。実現は時間の問題です。10年以内に、立川で実現させたいですね。もっと早く実現して、他都市で街づくりに取り組んでいるかもしれないし、誰かが自分の意志を引き継いでいるかもしれません。

-簿記資格の取得を目指している方へ、メッセージをお願いします。

日商簿記は社会で役に立つ実用的な資格ですし、持っているだけで、みんなが「おっ」と一目を置く信頼度の高い資格です。また、簿記の資格を取得すると、今行っている仕事の見え方も変わると思います。踏み出す第一歩として一番ふさわしい資格だと思いますね。

Profile

eton5皆本 晃 Minamoto Akira
1987年千葉県生まれ。2009年法政大学工学部卒業。大学在学中から府中アスレティックFCに所属し、2012年にはスペインでプレーするなど、国内外でフットサル選手と活躍するかたわら、2021年、日商簿記2級に合格。2022年、立川アスレティックFCの代表理事に就任し、選手兼代表理事として活躍の場を広げている。

立川アスレティックFCについて

2000年、府中アスレティックFCとして創設。2009年からFリーグ(日本フットサルリーグ)に加盟。2022−2023シーズンからはホームタウンを立川市に移転し、立川アスレティックFCとして活動。「スポーツで、人生に大きな夢と、毎日に小さな彩りを」を理念のもと、スポーツを通じた街づくりにも取り組んでいる。
https://tachikawa-athletic.jp/