原作:髙見啓一(鈴鹿大学准教授)
イラスト:高木

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悪の組織ZAIMは勇者に支配された。「正義」の旗印のもと、世界情勢が不安定さを増す中、戦闘員Aは一大決心を宣言するのであった。

戦闘員A 「私、日商簿記2級を取得することに決めました。」
戦闘員B 「2級って商業簿記だけでなく工業簿記も加わるし、3級よりも難しいんだろ?」
戦闘員C 「マジかよ。」
統領 「ウム。よい心がけじゃな。工業簿記の知識は経営分析にも役立つからな。」
戦闘員A 「ZAIM『モンスター工場』の経験で、原価計算の仕組みも分かっていますし、取るなら今かなと。統領のように資格をきちんと取ろうと思います。」

モンスター工場・・・については「悪の組織の原価計算」をご覧いただきたい。2級の工業簿記の対策にも有効です!(CMでした)aku

戦闘員B 「でも商業簿記の方も、前よりも格段に難しくなった・・・ってウワサを聞いたぞ。」
戦闘員A 「うん。リース会計とか、外貨建て取引とか・・・1級の範囲が下りてきてるんだ。」
戦闘員C 「え・・・やべえな。日本商工会議所こそ『悪の組織』じゃねえか!」
説明しよう。日本商工会議所では、企業会計に関連する諸制度や近年のビジネススタイル・会計実務の動向に的確に対応するため、検定試験の出題区分の改定を適宜行っている。決して悪の組織ではない。
統領 「『資格は取ったが、その知識は時代遅れ』では意味がないじゃろ?日本商工会議所もそうならないよう、日々考えておるのじゃ。むしろ資格の価値を高めるための改定といえる。」
戦闘員A 「リース物件の利用、自社製品の輸出・・・このあたりは中小企業といえども当たり前になってきてますもんね。しかし・・・どうしても乗り越えられない壁がありまして・・・。その名を口に出すのも恐ろしい・・・。レ・・・レ・・・レ・・・」

ピカッ!ゴロゴロゴロ・・・ザァー・・・
その言葉を発しようとしたその瞬間、稲妻が走り、ゲリラ豪雨が襲う。

戦闘員C 「レレレのレ?」
統領 「もしや『連結会計』かっ!」
戦闘員A 「ひぃぃぃ・・・・その言葉を発するだけで、口が連結になります。」
戦闘員B 「ゲッ!あれって1級の範囲じゃなかったのか?」
戦闘員C 「レンケツカイケイ・・・聞くだけでなんだか難しそうだな。」
統領 「うむ。ワシも簿記受験者と接する機会は多いが、みな連結に戦々恐々としておる。」
説明しよう!連結会計とは、支配従属関係にある「親会社」と「子会社」を1つの組織体とみなして、それぞれの財務諸表を合算・集計する手続きのことである。
統領 「世の中にある名だたる企業は、多数の子会社を保有して『グループ会社』となっておるからな。グループ単位での決算報告が当たり前の時代となっておる。」
戦闘員B 「でも統領、簿記2級の対象企業は中小企業っすよね?グループ会社なんて大企業だけの話じゃないんすか?」
統領 「ところが、このコラムの作者も近々グループ会社を作るらしい。」
戦闘員C 「あー、大学生たちと会社作りまくっているらしいな。ワイドショーで見たぞ。」
統領 「そんなベンチャー企業ですらグループ会社になっていく時代じゃ。グループ全体での損益の状況や財務状況が確認できることは重要となる。すべては時代の要請じゃ!」

本コラムの作者が作ったベンチャー企業「株式会社鈴りん探偵舎」については、コラムをご覧いただきたい。CMが多くて申し訳ない。

戦闘員A 「時代の要請ですか・・・」
統領 「その分、PC会計で出番のなくなった特殊仕訳帳は出題されなくなり、『社債』や『特殊商品販売』といった難関は1級に移り、だいぶ負担は軽くなったから安心せい。」
戦闘員A 「しかし連結だけは、その仕訳が何を意味しているのか全く理解できなくて・・・」
統領 「その理由は簡単じゃ。お前たちが『株式会社』についての知識に乏しいからじゃ!」

本コラムが満を持して登場した理由。それは、戦闘員Aと同じく連結会計につまずく簿記受験生のために、知識を提供することであった。

統領 「急がば回れじゃ。悪の組織であるZAIMが『株式会社ZAIM』になり、『伝説の勇者株式会社』の子会社となってしまったのもよい機会かもしれん。ワシがじっくりと、その仕組みについてレクチャーしてやろう。」
戦闘員B 「俺もぜひ知りたいです。『ZAIMが株式会社になって、この先どうなんのよ?』って、うちのカミさんからも毎日聞かれるので。」
戦闘員C 「給料が上がるかどうか、聞かれてるだけだろ(笑)」
戦闘員A 「ぜひご指導よろしくお願いいたします。」

連結に悩む読者諸君、戦闘員Aとともに連載を楽しみに待っていてくれたまえ。

次回予告

株式会社の仕組みが分からずして、連結は分からない。改めて「出資」の仕組みを学ぶ戦闘員Aであった。
次回「株式会社のしくみ① ~株式はオーナーの証じゃ~