資格は裏切らない

愚痴を吐く暇があれば、知識を吸おう

-髙見先生は中小企業診断士や税理士をはじめ日商簿記1級や販売士1級など、数多くの資格に合格されていますが、チャレンジしようと思った理由を教えてください。

大学卒業後、最初は公務員として働いていたのですが、自分で会社を興したいと思いあっさり退職しました。様々なベンチャーを立ち上げる時に簿記の知識が必要になると思い、簿記3級を取得したのが最初のきっかけです。

その後事業がうまくいかないときもありましたが、私の拠り所は勉強でした。資格は人と違って裏切ることはありません。他人への愚痴を「吐く」暇があれば、自分の中に一つでも多くの知識を「吸って」いたいと思い、簿記1級を受験した翌日には中小企業診断士の試験勉強を始めていました。会計の分野は公務員の世界からも縁遠い半面、大学では経営学を専攻していなかったので、勉強自体が非常に刺激的でした。

難しいことをやさしく伝えるコツは、遊び心

-検定試験のホームページでも「悪の組織の原価計算」や「戦う商業高校生リテールマーケティング戦隊」など多くの作品を発信されていますが、どのような思いで執筆されているのでしょうか。

私は自分自身を会計や検定の専門家だとは思っていません。学生と向き合う仕事をしていると、専門的な知識よりも「話す側が楽しんでいるかどうか」が最も重要だと日々思うのです。作品でも「ゆるい」性格の私自身が感じる、簿記・会計の「面白さ」に焦点を当てるようにしているので、会計の勉強をこれから始める方の興味を引けるのだと思います。

簿記や検定の勉強は、退屈というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、楽しいところもたくさんあります。「モンスターや怪人を作る悪の組織が原価計算を真剣に考えたら」・・・なんて考えただけでも面白いでしょう。簿記も「遊び感覚」で学べるということを知ってもらいたいです。ちなみに「戦う商業高校生」も、可愛い女の子が販売士検定の「必殺技」で戦うマンガを描いてみかったのがきっかけ・・・これも「遊び心」ですね(笑)

悪の組織ZAIMの統領や戦闘員がどうなるか、最終回までの大まかな流れや、まさかの「次回作」まですでに構想(妄想?)はできているので、今後の展開にご期待ください。

リテールマーケティング戦隊

簿記学校の原点に立ち返り、遊び心のあるベンチャー企業を設立

-2018年4月には、学生と会社を設立したとお伺いしました。takami02

学生の協力を得ながら、鈴鹿大学発のベンチャー企業「株式会社 鈴りん探偵舎」を設立しました。もともと私のゼミでは「学生の発想を生かした経営コンサルティング」の実践に⼒を⼊れていましたが、鈴鹿大学の母体である享栄学園はもともとアメリカ式の商業教育を伝える「英習字簿記学会」であることから、別組織として多様な外部資金や質の高い外部人材を入れて、より実践的な活動を行うことを目的に設立しました。

全国を見れば、理系を中心に様々な大学でベンチャーが設立されていますが、「探偵舎」を名乗る遊び心のある大学ベンチャーは本学だけです。既に、公共交通の活性化や、道の駅の改革、若者・海外への販路開拓などといった仕事を依頼されており、「探偵(学生コンサルタント)」たちが活発にアイデアを出し合っています。将来的には「(株)鈴りん探偵舎に入りたい!」という入学者を増やしたいですね。

学生には、販売士や中小企業診断士などの資格学習を奨励しており、探偵育成にも活用しています。企業でも少子高齢化が事業承継や採用活動に影響する中、学生の目線と資格の知識をミックスした視点を武器に、地域の企業との連携を生み出しながら、学生にも就活に使える実践力や人脈を培ってもらい、社会に還元できる組織にしていけたらと考えています。

資格取得で「自由」を手に入れよう

-資格取得を目指す方へメッセージをお願いします。

様々な国家資格や公的資格を取得してきて思ったこと。それは、資格を持っていると他者に対する「強さ」(信用力や説得力)が高まるということ、そしていかなる逆境においても「強くなる権利」(勉強をする権利)は誰にでもあるということです。

その観点で、これまでのことを振り返ってみると、今のように自由に楽しいことができているのは、資格が土台にあったからこそではないかと思います。人生を切り開く時に資格が邪魔になることはありませんし、資格によって人生の自由の幅が広がります。

「資格」自体は誰にとっても同じものですが、資格をどう活かすかはその人の自由だと思います。後は「目標」を常に忘れずに少しでも行動し続ければ、その実現に近づけるのではないでしょうか。その行動を続けること自体が、与えられた境遇からも他者からも放たれた「自由」だと強く思うのです。私の「妄想企画」の数々も…(笑)

Profile

髙見 啓一Takami Keiichi
東京生まれ。関西大学大学院商学研究科修了。地方公務員、経営コンサルタントを経て、現在は鈴鹿大学准教授。「日商検定推進アドバイザー」として、全国で簿記などの検定の啓発を行っている。主な著書は、販売士をテーマにしたマンガ『戦う商業高校生リテールマーケティング戦隊』(栄光ブックス)など。ゆるい企画が得意技。