FIFA マスターの同じグループに、ボスニア・ヘルツェゴビナの出身者や、弁護士、青少年育成プログラムの関係者、そして元プロサッカー選手の私がいたことから「民族融和を目的に子どものためのスポーツ・アカデミーをつくれないか」を修士論文のテーマにしました。

ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビアの内戦の激戦地で、1992年から3年半の間に死者20万人、難民・避難民は200万人におよびました。もとはムスリム(イスラム教徒)、セルビア系、クロアチア系の3民族が同じ地域で暮らしていましたが、紛争で分断されてしまいました。アカデミーを設立するモスタルという町は、激しい戦闘で街並みが壊され、今は民族ごとに別の場所に住み、学校の授業も別々です。私たちのグループは、こうした状況を改善するために、スポーツの力を活かせないか、と考えたのです。

幸い、日本のJICA(国際協力機構)や外務省、現地の日本大使館、その他にも様々な関係者の支援を得てプロジェクトが具体化しました。今は既存の施設を借りてプレオープンの状態で活動していますが、2016年秋には自前の施設も完成し、7歳から12歳の約80人のアカデミーが本格的に活動を開始する予定です。

先日、テレビのインタビューで、このアカデミーに通っている子どもの父親である、内戦で銃撃を受けた元兵士の方が「子どもたちは争ったりせず、このプロジェクトでスポーツを楽しんでほしい」とコメントするのを聞いて、意を強くしました。

とはいえ、課題は山積しています。多くの皆さんにボスニア・ヘルツェゴビナの現状を知っていただき、プロジェクトにご賛同いただいた方には、ぜひご協力をお願いしたいと思っています。5年後には現地の方々の手で運営されることを目標にしており、最大の課題は資金の確保です。日本政府からピッチやクラブハウスなどの施設の整備に支援を受ける一方で、コーチの人件費や子どもたちの遠征費用など運営資金が不足しています。皆さん、ぜひご支援をお願いします。

 

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