著者 : 鈴鹿大学講師 高見啓一

illust_kentaro05

 今日の検太郎は、コンサルタンティング業の合間にやっている大学での講義に来ている。中堅女子大での簿記対策講座である。授業の合間に、女子大生たちと雑談をするのを楽しみにしている検太郎であるが、女子たちの間では面白い言葉がはやっているようだ。いつも前の方の席で講義を聞いている2人組、夏子と真由が話しかけてきた。

夏子 「検太郎先生『マウンティング女子』って言葉が流行っているんですけど、知っていますか?」
検太郎  「え?まうんてぃんぐ?」
夏子 「マウンティングっていうのは、猿が上下関係をハッキリ示すために、下位の猿の上に乗ることなんです。マウンティング女子っていうのは、女子同士の会話で自分が上よってことを示そうとする子のことを言うんですよ。」
検太郎 「どんな風に?」
夏子 「こないだもあったの。同じゼミの子が、『私今日はすっぴんなの!夏子ちゃんは化粧をちゃんとしててすごいね!』とか。」
真由 「あ、あの子でしょ。私もマウンティングされた、された。『私の彼氏、親が金持ちのボンボンだから全然就職活動しないのよ。真由ちゃんの彼氏はいいよね~、勉強も就活も頑張ってるから!』」
夏子 「先生意味わかります?」
検太郎  「え?わからん。二人のことほめてくれてるんじゃないの?」
夏子 「私に対しては『私はすっぴんでもあなたより可愛いのよ』って言ってるんですよ。」
真由 「私に対しては『あなたの彼氏よりも、私の彼氏の方が金持ちなのよ』の意味ね。」
検太郎 「あー、そういうことかー。悲しい人間の性だねえ。」
夏子 「最近は男性もあるらしいですよ。学歴とか、就職先の会社名とかでのマウンティング。」
真由 「検太郎先生はそういうの、しないでしょ?」
検太郎 「どうかなー。知らず知らずのうちに、してるかもな。」
真由 「またまたー。」
夏子 「検太郎先生はないでしょー。」
検太郎 「俺の場合、『俺、資格くらいしか長所なくって・・・』って言っちゃってるけど、これ資格持ってない人には相当なマウンティングだよな(笑)」
真由 「あ、そうかもー。」
検太郎 「その子にマウンティングするなら、『私、履歴書に簿記取得って書けるくらいだから、就活がめっちゃ不安で・・・。いまどきのキャリアウーマンは資格があって当たり前だし・・・。』でどう?たぶん今の理屈だと相当効くよな。」
夏子 「あ、それで行こ!」
真由 「いいねー。あの子資格持ってないから、仕返しできるね。」
検太郎 「資格は正当に認められたものだから、どんどんマウンティング(?)していいんじゃないかな。もし相手が『悔しい』って感じても、努力すれば取れるんだし。あ、二人が簿記検定に合格することが前提な。」
夏子 「はーい。」
真由 「はーい。」
検太郎 「ところで、マウンティングもいいけれど、『ポジショニング』って知ってるか?俺はそっちの方が好きだよ。」
夏子 「ぽじしょにんぐ?」
真由 「ぽじしょにんぐ?」
検太郎 「モノを売れる仕組みを作るためのマーケティング用語だよ。また来年、販売士検定対策の講座で教えてあげるけど・・・そうだなー・・・このグラビアの子みてごらん。」
真由 「出た!先生の好きな秋葉原系アイドル(笑)」
夏子 「『へたれ系キャラ』で有名な子でしょ?」
検太郎 「そうそう。この子はね、あえて『可愛い系』では勝負せずに、ダメなキャラを全面に出しているんだよ。そのおかげでグイグイと共感者、つまりファンを惹きつけている。勝ち負けよりも、こういうところが大事なんだと思うんだ」
夏子 「これがポジショニングですか?」
検太郎 「つまりポジショニングというのは、正面切ってライバルと戦うのではなく、ライバルが取り扱っていない商品、つまり魅力で勝負をしていくという考え方だ。世の中のヒット商品って、実はこういう考えで生み出されているんだよ。」
夏子 「そうなんですねー。」
真由 「やばい。早く私も販売士勉強したい!ところで、先生は何系を目指しているの?」
検太郎 「もちろん目指すは『秋葉原系コンサルタント』だよ。」
夏子 「それは、マウンティングしようとする人もいないでしょうね(笑)」
真由 「まさに負けるが勝ちね。先生。」
検太郎 「そう『負けるが勝ち』・・・敵を作らない、バランスの取れたいい言葉だよなー。さ、休み時間もそろそろ終わりだ。席についてー。」