会計・簿記を学ぶことは、未来の自分への投資

企業の伴走からプロスポーツリーグのガバナンスまで、会計を土台とする「3つの柱」
- 非常に多岐にわたる分野でお仕事をされていると思いますが、具体的にどのような活動をされているのかを教えていただけますか。
私の現在の仕事は、大きく分けると3つの領域にまたがっています。
1つ目は、公認会計士・税理士として企業の経営に関する助言を行い、成長をサポートする仕事です。決算や税務申告にとどまらず、会社の数字をもとに経営の現状を把握し、どのように成長していくべきかを経営者の方とともに考えます。
2つ目は、企業の社外役員としての仕事です。現在、社外役員を務めており、内部の経営陣とは別の立場から、経営の方向性や重要な意思決定に対して意見を述べる役割です。攻めの経営も大切ですが、同時にリスクを見極めることや社会から信頼される経営体制を整えることも必要です。
3つ目は、プロ野球の日本シリーズ、オールスターゲームの主催、運営を主に行う一般社団法人日本野球機構(以下NPB)の監事としての仕事です。プロ野球は多くのファン、球団、選手、スポンサー、地域社会に支えられている社会的に影響力の大きい組織です。その運営が適切に行われているか、会計や業務の面から確認し、組織の信頼を支える役割を担っています。
一見すると、それぞれ違う仕事に見えるかもしれませんが、すべての仕事の根底にあるのは「会計を通じて組織の状態を正しく理解し、より良い意思決定と信頼ある組織運営を支える」ことです。
資格取得までの道のりで得た「やり抜く力」と「反省と改善」
- 元々、どのような経緯で公認会計士を目指されたのでしょうか。また、資格取得までの道のりで得た経験が、その後のキャリアにどう活きたと感じていらっしゃいますか?
高校3年生の時に、進路指導室でたまたま『公認会計士』という資格の本を手にしたのが興味を持ったきっかけです。「家が税理士の家系だったわけではない」のですが、パチパチと数字を扱うのが好きだったこともあり、直感的に「おもしろそうな仕事だな」と思いました。本には、会計監査だけでなくコンサルティングなど、様々な分野で活躍できると書いてあり、その幅広さに魅力を感じました。
大学入学後、大学2年生の時から本格的に簿記の勉強を始め、簿記1級まで取得しました。その後、専門学校に通いながら、必死でアルバイトをして受講料を稼ぎつつ、大学の授業を受けるという非常に濃い日々でした。大学3年、4年、そして卒業した年の3回目の挑戦でようやく公認会計士の2次試験に合格することができました。
資格取得までに得たこととしては、「やり抜くこと」です。資格の勉強はとても大変で忍耐力が要求されるものではありましたが、ここぞという場面で力が出せるように、チャンスをじっと待ちながら、勉強することが大切ですね。
また、「反省と改善」も大切だと思います。私は、会計士試験に2度落ちていて、3回目で最後にしようと思っていました。過去、落ちた時は「なんで落ちたのだろう」と非常に落ち込みましたが、ダメだったところを反省して次に生かす、まさにPLAN-DO-SEEを実行することが欠かせないと思います。
ファンのための環境づくりと、持続可能な事業活動を支えるガバナンス
-NPBの監事として、具体的にどのようなお仕事をされてこられたのでしょうか。
プロ野球は非常に華やかな世界ですが、社会的影響力が大きい分、ひとたび問題が起きれば世間から厳しい目を向けられます。だからこそ、健全な組織運営を維持するためのガバナンスが欠かせません。
定期的に開催される理事会に同じく監事を務められている弁護士の先生と一緒に出席し、ファンの皆様が楽しんでいただける環境を作り、維持していくために必要なことを考え、NPBの理事(各球団の関係者の方々)と協議・協力をしながら、様々な物事を進めています。
また、NPBは一般社団法人であり、公益的な活動を行っていますが、事業を運営する上で資金をはじめとするリソースが必要になってくるので、どのようにしたら持続的に事業活動を続けていけるのかを考え、監事の立場で助言するのも私の役割の一つだと思います。
簿記は未来の自分への投資。「人生の選択肢」を持ち続けよう
- 最後に、現在日商簿記を学ばれている方々や、これから社会へ出る若い世代に向けて、佐藤さんからエールをお願いします。

若い皆さんに一番伝えたいのは、「会計の知識を身につけることは、自分の人生に常に『選択肢』を持ち続けることである」ということです。私自身、会計という「ビジネスの共通言語」を自分の土台として持っていたからこそ、年齢に関わらず、コンサルティング、起業、社外役員、あるいはスポーツビジネスの支援など、ライフステージの変化に合わせていつでも次のステップを「自分で選ぶ」ことができたのだと振り返ってみて思います。今でもワクワクしながら仕事ができているのは、若い頃に必死に簿記や会計を学んだからです。
大切なのは、最初からすべてを完璧に理解しようとしすぎないことです。一つひとつ積み重ねていけば、ある時数字のつながりが見えてくると思います。その時に会計の面白さを感じることができるはずです。
簿記の勉強は単なる試験対策、資格取得ではなく、未来の自分への投資です。ぜひ、自分の可能性を広げる学び、チャンスだと捉えて、前向きに取り組んでいただきたいと思います。
Profile
佐藤 正樹 Sato Masaki
1971年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、大手監査法人、コンサルティング会社を経て独立。2004年税理士法人WATANABE社員就任。数多くの企業経営をサポートする傍ら、複数の企業等で社外役員を務め、ガバナンス体制の構築等に従事。2013年より一般社団法人日本野球機構(NPB)監事、および2014年より株式会社NPBエンタプライズ監査役を歴任。2026年に同大学大学院スポーツ科学研究科修了。

