「グローバル・ビジネスでは英語より簿記が共通語」

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「数字を読む」感覚が重要

-英語より簿記が重要だとおっしゃっています。

ビジネスの世界で最も大切なことの一つは「数字を読める」ことです。グローバル企業の場合、様々な国の社員がいて、それぞれ異なる価値観を持っています。その中で唯一、共通しているのは数字に対する感覚が重要だということです。言葉は通訳できますが、この感覚は自分で身に付けるしかありません。そのために必要なのが簿記です。国内の企業であっても、メーカーであれ金融であれ、規模の大小にかかわらず、簿記は非常に大切です。簿記がわからなければ、自分の部署や、自分自身が、会社の業績にどれだけ貢献しているかわかりません。

すべてのビジネス人に必要

-数字に対する感覚は、どうしたら身に付きますか?

決算書は、社長よりも雄弁に、その企業の成長の歴史や強さ、課題、その企業との上手な付き合い方などを我々に語ってくれます。簿記を学べば決算書が読めるようになり、数字に対する感覚が身に付きます。だから簿記は、すべてのビジネス人に必要不可欠な武器なのです。

03_interview_photo_01例えばA社とB社の売り上げがどちらも10億円だとします。A社の資産が100億円、B社の資産が1,000億円であれば、B社は資産規模の割に利益が小さいのはなぜか?との疑問を持つことが、企業への理解を深める上で大切です。こういう時、簿記を知っていると、もうけを表す損益計算書と、資産と負債のバランスを表す貸借対照表の両方が思い浮かびます。どちらか一方ではなく、「両建て」の発想が大事なのです。
黒字倒産についても同じです。売り上げがあって利益が出ていても、売掛金の割合が大きいため会社が立ち行かなくなる可能性がある、ということは、簿記を知っていればすぐわかります。

数ヵ月の勉強が一生役に立つ

-簿記は短期間で学べるのがいい、とおっしゃっていますね。

私は就職してすぐに簿記3級を取り、2級も取りました。3級は、会社の指示で極めて短期間で勉強したので本当に大変でしたが、その時に学んだことは今も役に立っています。3級なら数ヵ月あれば勉強できます。その結果、生涯、役に立つ考え方が身に付くのですから、ビジネスをするすべての人が学ぶべきです。

また、きちんと理解できたかを確認するために、検定試験を受けることをお勧めします。私は、人材育成を仕事にしていますが、資格を取るための勉強は勧めていません(笑)。でも、簿記は例外です。まだの方は、今すぐ勉強することを強くお勧めします。特に、マネジメントをする立場の人には絶対に必要です。アメリカのMBA(経営学修士)を目指す人たちも、簿記をはじめ会計分野をしっかり勉強しています。

-若い世代の人材育成に力を入れておられますね。

若手から中堅の社員を対象に、ビジネスの予備校を立ち上げるための準備をしています。お金の流れや数字の読み方、質の高い情報の獲得法やIT知識など、世界で通用する思考法やスキルを身に付けてもらうための学校です。この予備校でも、簿記をどのような形で学んでもらうか、検討しているところです。

Profile

03_interview_photo_02岡村 進 Okamura Susumu
1961年東京都生まれ。東京大学法学部卒。1985年第一生命保険に入社し、米国運用子会社社長兼CEOなどを歴任。2005年、世界50ヵ国に展開するスイス系金融企業、UBSグローバル・アセット・マネジメント入社、2008年、日本法人の代表取締役社長。2013年に起業して株式会社人財アジア代表取締役に就任。企業研修および人事・経営アドバイザリー事業を行う傍ら「1年間でグローバル人材に生まれ変わる」ためのビジネス予備校を2015年春に立ち上げ予定。著書は『外資の社長になって初めて知った「会社に頼らない」仕事力』(明日香出版社)、『自己変革-世界と戦うためのキャリアづくり』(きんざい)など。