『ソードアート・オンライン』の世界を通じてプログラミングの世界を知ってほしい

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仮想世界を舞台とした小説を執筆

―川原先生は『ソードアート・オンライン』シリーズや、『アクセル・ワールド』シリーズなど、現実世界と密接に関わった仮想空間の世界(サイバースペース)を舞台とした小説を執筆されていますね。

私は幼少期からアメリカのSF小説が好きで、仮想世界に憧れがありました。また、ネットワークゲームに熱中していたこともあり、それらを組み合わせて「現実世界」と「ゲーム世界」と行き来する設定で物語を書いてみたいと思いました。
2001年に電撃小説大賞に応募するために『ソードアート・オンライン』を執筆したのですが、規定をオーバーするボリュームになってしまい、投稿を断念しました。そこで、当時はまだ珍しかったインターネット上で小説を発表したのがきっかけです。

読者に楽しいと思ってもらえるような作品作りを

-『ソードアート・オンライン』はシリーズ刊行10周年を迎えられたそうですね。IMG_5624 - コピー

作品の読者、アニメの視聴者、ゲーム版SAOのプレイヤーの皆様など多くの方に支えられて、10年という節目を迎えることができました。出版から10年が経過しておりますが、今でも若い読者の方が増加しているのはとても嬉しいですね。引き続きライトノベルというジャンルの主な読者層である中高生に楽しいと思っていただけるような作品づくりを行っていきたいです。

 

―物語では、主人公のキリトさんや、茅場博士など、高いプログラミングスキルを有するキャラクターが出てきます。先生自身もプログラミングに詳しいのでしょうか。

私は根っからの文系人間で、同人活動を行っていたときに一度だけ苦労しながらノベルゲームのスクリプトを組んだことがある程度です。作者にはないものを持っているキャラクターを出したかったということもあり、そのような設定にしました。

現実世界と仮想世界を「プログラム」でつなぐ

-『ソードアート・オンライン』が表紙の参考書が発刊されるなど、最近では先生の作品がきっかけでプログラミングに関する学習を始めたという若い方がたくさんいらっしゃいます。プログラミングを勉強されている方や、これから勉強してみようと思っている方へメッセージをいただけますでしょうか。

『ソードアート・オンライン』シリーズでは、仮想世界に入るためにゲーム機を使用したフルダイブ技術※を取り入れています。現実世界と仮想世界をつなぐ媒体が身近なものなので、読者の方々が作品と「プログラミング」とを連想しやすかったのではないかと思います。

物語の舞台は2022年ですが、2020年からはプログラミング教育が必修化されますし、VR技術やAI技術なども、驚くほどの速度で発展してきています。近い将来、『ソードアート・オンライン』のように仮想世界の中に入るフルダイブ技術が開発される可能性もあります。もし実現したら私もゲームの世界へいってみたいですね。

プログラミングスキルは、早いうちから始めるほど伸びていく可能性が広がると思います。私の作品を通じて、「プログラミング」というものに興味を持ってくれた方の中から、今後AI技術開発などの分野で、日本を背負って立つ人材が出てくることを期待しています。

※フルダイブ技術…仮想世界内に五感を接続してその世界に入り込むこと

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SAO×日商プログラミング検定のポスターも話題になった
『ソードアート・オンライン』とは

2009年に電撃文庫より刊行されているライトノベル作品。スピンオフ作品を含め多数アニメ化。2017年映画化。2019年には刊行10周年を迎え、2019年夏には、体験型展示イベント『ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-』を開催。2019年10月からは『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』が放送開始。
 
 
◯ソードアート・オンライン公式サイト

© 2017 川原礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

Profile

kawahara-3川原礫Kawahara Reki
1974年群馬県出身。青山学院大学卒業。2002年からウェブサイト上で小説『ソードアート・オンライン』を発表開始。2008年、『アクセル・ワールド』で第15回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞。2009年に出版され、2018年にはシリーズの全世界累計発行部数が2,200万部を突破し、アニメ化・映画化も果たした『ソードアート・オンライン』シリーズをはじめ、『アクセル・ワールド』シリーズ、『絶対ナル孤独者』など著書多数。