会計は企業を俯瞰するための必須スキル

会計は企業の共通言語

-会計の勉強を始められたきっかけを教えてください。

様々な部署の人々と仕事をする上で「会計」が共通言語であると気づいたことがきっかけです。
私は株式会社ユナイテッドアローズに入社後、セールスプロモーションに関する仕事に長く携わっていました。入社してからある程度年数が経ってくると、他部署と仕事をすることも増えてきます。そのときに物流やシステム、商品開発といった部署の人々が話している内容がなかなか理解できなかったのですが、「会計」が共通言語であることに気づき、対等に話をするには会計に関する知識を身につける必要があると思いました。

同時に、私が担当していた宣伝分野でも、優秀な後輩が次々と出てきており、今後のキャリアを考えたときに、宣伝のスペシャリストとして働くよりも、部署全体の管理をする分野に進んだほうがビジネスパーソンとしての力を発揮できるのではないかと思いました。

-どのように学習されたのでしょうか。

ビジネススクールで、社会人としての基礎は「マーケティング・ファイナンス・会計」だというアドバイスを受け、その3分野を学習しました。マーケティングは私の経験と近しいものがあり、あまり苦労しませんでしたが、ファイナンスと会計は初めて勉強する分野だったのでとても苦労したことを覚えています。

会社経営の全体像が見渡せる

-ビジネスパーソンが身につけておくべきだと思われるスキルを教えてください。

会計や外国語、法務といった分野は最低限のスキルを身につけることをおすすめします。これらの分野は、ポイントを押さえるだけでも、専門家に依頼する際に、重要視する点を正確に伝えられ、仕事を自分でコントロールすることができます。
会計について言うと、その時点では財務諸表の読み方など、必要最低限のスキルを身につけただけでしたが、会社経営の全体像が見渡せるようになり、見える景色が大きく変わりました。

また、会計の知識があると、企業経営を俯瞰的に見られるようになります。経営計画に対して、自身の部門がどれくらいインパクトを与えているか把握するためにも必須のスキルと言えるでしょう。

-現在人事のお仕事をされているそうですが、研修のカリキュラムの一つに会計分野を盛り込んでいるとお伺いしました。

会計分野の研修については現在2つのものを取り入れています。1つは、店長研修です。店舗経営を行う上で、損益計算書が読めることは、組織論や顧客づくりのノウハウなどと並んで身につけておくべきものと捉え、財務諸表を読むカリキュラムを取り入れています。

もう1つは、いずれかの分野を極める意欲がある人に、会社として支援する体制を整えており、選択肢の一つに会計分野のカリキュラムがあります。特に、経営者や事業責任者を目指したい人にとっては、会計知識が必須です。

今後も、積極的に手を挙げる人には機会を与え、努力した人には報いられるような人事システムを構築し、多様なキャリア形成を支援する体制を整えていく予定です。

キャリアの選択肢を広げよう

-どのような方に会計の勉強をすすめますか。

今後、どのような道に進みたいかまだ決まっていない人には、まず会計分野を勉強することをおすすめします。管理会計に関わる仕事は幅が広く、キャリアを形成する上で、多大な可能性を秘めていると思うからです。どの分野の仕事を行う上でも会計知識を必要としない仕事はほとんどなく、会計を勉強することは、今後のキャリアの幅を大きく広げることに繋がります。会計分野の勉強は、やって損はありません。

会計は、身につけるまでは苦労しますが、一度身につけてしまうと知識を前提に物事を考えることがスタンダードになるという点では、車の運転と似ていると思います。会計の知識がなくても仕事をすることはできますが、会計を学べば、クールでロジカルな仕事ができることに繋がりますし、自分の実力を裏付ける材料や武器にもなるでしょう。自分のキャリアの幅を広げたい方は会計知識を身につけることをおすすめします。

Profile

山崎 万里子Yamasaki Mariko
1973年、福岡県生まれ。1996年、学習院大学経済学部経営学科卒。同年株式会社ユナイテッドアローズに入社。2010年に同社女性初の執行役員に就任。2018年から執行役員 人事部担当。組織における女性の活躍、働き方にも関心が高く、2013年に著書『仕事の不安を一つひとつツブしていくやり方』出版。