簿記・会計は企業活動の原点

銀行員から会計士の道へ

-学生の頃から簿記を学んでいたのですか。

数学が好きで、大学も数学科に進んだのですが、「卒業後はもっと実務的なことをやりたい」と思い、外資系の銀行に就職しました。そこで初めてbookkeeping(簿記)という言葉に出会い、伝票の左右の数字の合計を一致させながら実際の取引が反映されていくことに興味をひかれました。一方、当時は外資系企業といえども、男女が平等にキャリアを積むことが難しく、「資格を取ろう」と考えました。そんな時、公認会計士試験に合格した方のお話を聞く機会があり、会計士を目指すことを決め、25歳の時に銀行を退職しました。

資格学校で勉強することにしたのですが、会計士には簿記の知識が必要と考え、簿記をひととおり勉強してから会計士のコースに入りました。会計士の勉強を始めてからも、先生から「日商簿記検定を受けたほうがいい。やるなら1級!」と勧められて受験し、その後、公認会計士試験に合格しました。いま振り返ると、簿記をゼロから勉強したので知識を吸収しやすかったことと、銀行での実務経験のおかげで内容を理解しやすかったことが合格につながったと思います。

女性のスキルアップに役立つ簿記・会計

-簿記や会計の知識はどのような時に役立ちますか。

会社員であれば、自分が働く会社の全体像を把握し、「会社の中で自分はどの位置にいて、何のために仕事をしているのか」が実感できます。私自身、銀行員時代は、簿記や会計の知識がほとんどなかったため、仕事の本質を十分理解できていませんでした。公認会計士試験を通じ、簿記や会計を学んだ後、銀行の監査を担当し、過去に自分が従事していた業務の本質を理解できました。

また、女性のスキルアップにも役立ちます。出産や育児を経験する中で、「時間を有効に使いたい」と思う女性が多いと思います。一方で、少子化が進み労働力人口が減っています。このような状況では、生涯を通じて何らかの仕事をしないともったいないと思うのです。その時、何かスキルを持っているほうが仕事を続けやすい。中でも、簿記や会計の知識は業種や職種に関わらず役立つので、転職がしやすくなりますし、起業にも役立ちます。

国内外に広がる会計士の活躍の舞台

-会計士という仕事の魅力は何でしょうか。

公認会計士は、監査を通じてその企業のビジネス全体を見るため、監査以外にも、ビジネスに関わる様々な仕事ができるようになります。実際、私の監査法人時代の同期生の多くは、会計士として、コンサルタント事務所を開業したり、会社を経営するなど、様々な形で活躍しています。

また、「会計、経理=日本国内で働く」というイメージかもしれませんが、会計や監査は国際標準化が進み、国際的に活躍する方も多く求められています。海外で日系企業のコンサルティング等に従事している会計士も多数いますし、大企業では経理部門の方が海外で勤務する例も多く見られます。middle-sekine-sm

国内外で、実に多くの会計士が必要とされ、今は人材が足りない状況です。

会計士の仕事は、一時的に中断しても復帰できる、ということも特徴です。中には、出産を機に仕事を辞めて「会計のルールが変わって復帰しづらい」などと感じる方もいるのですが、現在は、監査法人がさまざまな形で復帰を後押ししていますし、日本公認会計士協会としても女性活躍促進協議会を立ち上げ、復帰のための研修やネットワーキングなどの支援に取り組んでいます。

公認会計士に挑戦を!

-簿記や会計を学ぶ方にメッセージをお願いします。

簿記、会計は企業活動の原点であり、経理はもちろん、起業など幅広い場面で役立つ、ビジネスマンに必須のスキルです。とはいえ、勉強していると「何のためにこんなことを勉強するんだろう」と思うことがあるかもしれません。そんな時は、自分の家庭や所属するサークルの財務諸表をつくるなど、身近な題材で考えると頭に入りやすいですよ。

私たちの協会としても、「基礎教育」として、もっと多くの方に簿記や会計を学んでいただきたいと考え、普及に取り組んでいます。そして、学ぶ中で会計士という仕事に興味を持った方は、様々な活躍の場が広がっていますので、ぜひ、公認会計士の道にチャレンジしてください。

Profile

関根 愛子 Sekine Aiko
1958年、東京都生まれ。1981年、早稲田大学理工学部卒業。1985年、青山監査法人入所。1989年、公認会計士登録。2006年、あらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)パートナー就任。2016年、日本公認会計士協会会長就任。
なお、関根会長は、1984年度の日商簿記検定1級試験において、最も優秀な成績で合格し、表彰を受けています。