原作:髙見啓一(鈴鹿大学准教授)
イラスト:高木

<あらすじ>

ヒーローにやられっぱなしの悪の秘密結社「ZAIM」の統領と戦闘員たち。左遷先のRPGの世界では、魔王軍の「モンスター製造工場」を任されたのであった。
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CVP分析による利益シミュレーションを実施したZAIMの面々であった。

戦闘員A 「これで一応計画はできましたね。」
戦闘員B 「よかった。これで家に帰れる。」
戦闘員C 「寝よう寝よう。」
統領 「待て待て。計画は立てて終わりではいかん。PDCAサイクルも知らんのか。」
説明しよう。「PDCAサイクル」とは、Plan(計画)Do(実行)Check(確認)Action(改善)を繰り返していく経営管理のためのマネジメントサイクルである。財務シミュレーションや財務分析も、PDCAサイクルの一環として行われる。
統領 「差異分析をやってみよう。この図のとおりに書くだけだから簡単じゃ。」
説明しよう。差異分析とは売上や費用について、「予算(計画)」と「実際」とのズレ(差異)を把握するための分析方法である。価格による影響と数量による影響を分けてとらえることができ、経営管理に役立つ。差異分析図を作成することで、簡単に計算ができる。
戦闘員A 「縦軸に単価、横軸に数量を取るんですね。」
統領 「うむ。内側に計画の数値、外側に実際の数値を入れればよい。」
戦闘員B 「面積を計る要領で、計画と実際との差が分かるんっすね。」
統領 「そう。売上高差異を測定するときは「実際-計画」で。費用差異を測定するときは「計画-実際」で長さを計れば、嬉しいときにプラス、悲しいときにマイナスとなるので便利だぞ。」
戦闘員C 「悲しい予感しかしないけどな。」

-差異分析を試みた統領たちであった。

戦闘員A 「結果が出ました。数量は計画どおりさばけていますが、単価が思った以上に上がっていません。」
戦闘員B 「だから数量差異はプラスなのに、価格差異がマイナスになっているのか・・・。」
戦闘員C 「だって魔王に値下げしろって押し切られてんだもん。1体60円まで値下げ強要されてさ。」
統領 (ショボン)

-戦闘員Cの予想どおり悲しそうな顔をする統領であった。

統領 「(キリッ!)いや。悲しんでばかりもいられん。今後の方針として、数をさばくことよりも単価の高い仕事に注力していこう。」
戦闘員A 「たしかに。スライムでは儲かりません。」
戦闘員B 「もっとハイスペックなモンスターを作っていきましょう。少数精鋭で。」
戦闘員C 「はははっ。また洗濯のり君が災難だな。」
スライム 「・・・」(フン)

もはやこの流れに慣れたスライム君は、意にも介さないようだ。

戦闘員A 「しかし、簡単なのに便利な分析方法ですね。差異分析は。何が原因でコスト負けしたのか、そこまで分析ができるとは驚きました。」
戦闘員B 「難しい計算とか、簿記の知識とかなくてもできますね。財務分析とか原価計算への抵抗感がなくなりました。」
統領 「そうじゃ。原価計算で使うツールは、小学生でも使おうと思えば使いこなせる。だからこそ、製造現場に限らず様々なビジネスマンに使って欲しいと思っておるのじゃ。」
戦闘員C 「統領でも分かるくらいだもんな(笑)ハハハ。」
統領 (ジロリ)

プルルルル・・・
ZAIMに電話が鳴り響く。

戦闘員A ガチャッ。「はい!あ、これは魔王さま。統領ですね。いま代わります。」
戦闘員B 「最終回を前にこの流れ・・・。」
戦闘員C 「嫌なヨカンしかしないぞ・・・。」
統領 「はい・・・代わりました・・・・えっ???」

最終回を前に、魔王よりかかってきた電話。悪の組織ZAIMの運命は?

次回予告

出資者からの突然の電話。悪の組織ZAIMを取りまく運命の渦は止まらないのであった。
次回、最終回「ZAIMのZAIMよ永遠なれ」お楽しみに!