著者 : 鈴鹿大学講師 高見啓一

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今日も検太郎は、女子大学の講義に来ている。講義後、就職活動中の優香さんが声をかけてきた。どうやら内定が取れずに悩んでいる様子だ。

優香 「先生、なかなか内定とれなくって、へこんでます。」
検太郎 「そっか・・・。大変だよな。」
優香 「私、このままプータロ―になっちゃうんじゃないかって、不安で不安で。周りは内定取れている子や、コネクションのある子も多くて、私だけ取り残されている感じがして、本当に不安です。」
検太郎 「それだけ頑張っていたら、きっとどこか決まるよ。それが早い人もいれば、遅い人もいるんだし。気楽にいけばいいんじゃないかな。」
優香 「でも私、自信がなくなっちゃって・・・。」
検太郎 「就職ってのは、優秀ならば決まるってものでもないし、最終的には企業との相性次第だし。運もある。」
優香 「運ですか。それを信じるのは辛いです。自分の力が及ばない領域じゃないですか。」
検太郎 「そうだよな。じゃあ、自分の力が及ぶ領域をゴールにするというのはどうだろ?」
優香 「どういうことですか?」
検太郎 「俺も『絶対ヒットするぞ』って思うような面白い企画書を書いているんだ。」
優香 「そうなんですか!先生も頑張っているんですね。」
検太郎 「そうそう。そんでこの企画書なんだけど、通るかどうかはさておき、とりあえず関係先に次々と提案するようにしているんだ。
優香  「それって、通りそうですか?」
検太郎 「通らなくてもいいんだ。これも相手先の都合やタイミングに左右されるものだからね。なので、俺は『とにかく企画書を10本出す』・・・という数字をゴールにしてあるんだ。通るかどうかはゴールにしていない。」
優香 「あー。そういえば勉強のときもそういう話をしていましたね。」
検太郎 「そうそう。『勉強机に1時間座る』『問題をとりあえず10問解く』どれも勉強の質とか、解いた問題が合っているか間違っているかは気にしなくていい。」
優香 「私も先生に言われて、その勉強方法を実践しましたよ。私は『手帳に勉強時間を記録する』ってやり方が一番合ったなあ。」
検太郎 「達成感あっただろ?」
優香 「はい!『もう少しで10時間、もう少しで50時間』ってなっていくのが快感で。ついつい『もう1時間・・・』って感じで、頑張れましたね。でもそれと就職活動って何か関係ありますか?」
検太郎 「エントリーシートは何社くらい出した?」
優香 「いまのところ8社ですね。」
検太郎 「お!もう少しで10社じゃん。次は20社とか30社を目指したら?それだけ出せたらそれはそれで成果だよ。」
優香 「あはは!たしかにそうですね。私なら50社とか目指しちゃいそう。」
検太郎 「そうそう。俺の就職活動も、途中から「不採用通知」を集めるのが趣味になったりして(笑)微妙に通知の書きっぷりが違っていたりして面白いんだよな。送り状も付けずに履歴書を突っ返してくるひどい会社もあった。そういうところも冷静に見えるようになってきた頃に、決まったもんだ。」
優香 「なんだか気持ちが楽になりますね。」
検太郎 「こういう、とりあえずの目標のことを『スモールゴール』って言うんだけど、実はモチベーションを保つにはけっこう大事なんだ。大きな目標であるほど、最終ゴールまでの道のりは果てしなく遠いわけだし。」
優香 「わかりました!スモールゴールを設定するようにします。とにかく50社出すつもりになれば、意欲もわいてきます。」
検太郎 「その意気だね。この考えには『確率論』の考え方もある。たとえば100人に1人しか採用されない試験ならば、100通出せば通るってことになる。ちょっと乱暴かもしれないけど、そういうもんだと思えば就活も楽だよな。検定だって50%の合格率の試験だったら2回に1回は受かるってことになるし。」
優香 「たしかに!がんばろっと。ところで先生の企画書って、どんな内容の企画ですか?」
検太郎 「名付けて『販売士アイドル』の企画だ。リテールマーケティング(販売士)検定の合格者の中で可愛い子を集めて、アイドルグループを作ってデビューさせるって妄想(笑)」
優香 「え・・・(笑)」
検太郎 「みんなにシラッと見られても、気にせず出し続けているんだ。俺の知り合いには『販売士マンガ』を妄想して、企画採用された奴がいるくらいだからさ。」
優香 「私はアイドルになりませんからね(笑)」