著者 : 鈴鹿大学講師 高見啓一

今日は女子大学での講義の日である。リテール・マーケティング(販売士)の検定試験日が近づいており、受験予定の夏子と真由は不安を感じていた。検太郎はどのように彼女たちの不安を解消してあげるのだろうか・・・。

夏子 「夏子 あ~・・・あと1週間で試験だよ~。めっちゃ緊張するんですけど。」
真由 「私も。緊張でおなか痛くなりそう。」
検太郎 「いよいよだねぇ(ニコニコ)。」
真由 「いいなぁ、試験受けない先生は余裕で。早く検定試験終わってほしい。」
検太郎 「この時期が来るとね、合格しちゃった立場の人間から見ると、これから受ける人たちが微笑ましく思うよ。」
夏子 「先生ホント意地悪ですね。」
真由 「先生!『緊張しない方法』ってないですかね?教えてくださいよ。」
夏子 「あ、それ私も知りたいです。」
真由 「検太郎先生のことだから、何か秘策あるんでしょ?教えなさい!」
検太郎 「秘策ねぇ・・・。」
二人 「ぜひ!」
検太郎 「ないね。トイレはちゃんと済ませておくこと。」
真由  「え~・・・。」
夏子 「普通じゃないですか。」
検太郎 「いやいや、馬鹿にできないよ。俺は実際に簿記1級の試験を受けているとき、めっちゃトイレ行きたくなって、苦しんだことがあるから。あとは、早めに試験会場に着くこと・・・とかかな。このへんは全部さっきの授業で伝えたよな。まあ当たり前のことをしておくべし。」
真由 「え~。普通じゃん。検太郎先生らしく、なんか『アッ』と思わせるようなものはないの?」
検太郎 「ないない。」
夏子 「先生、緊張しなさそうですもんね。鉄の心臓のイメージ。」
検太郎 「どんなイメージだよ。俺だって緊張するってば。」
夏子 「そうなんですか?」
真由 「それは意外!」
検太郎 「年に1回しかない国家試験とか、デカイ仕事のプレゼンテーションとか、なんだかんだで毎年何回かは緊張する場面があるよ。」
夏子 「そういうときはどうやって緊張を無くしているんですか?」
検太郎 「緊張をなくすことは無理だな。心理学の専門家とかに聞けば、もしかしたらいい方法があるのかもしれないけど。」
真由 「やっぱり秘策なんてないかぁ。」
検太郎 「俺の場合は試験中に無理やり『笑顔』になってみるとか、そういうことはしているけどね。無理やり『緊張が減ったような気持ち』になるようにしてる。やっぱ通常の状況じゃないよな・・・。」
真由 「真剣に問題解いている中に一人だけ引きつり笑顔・・・たぶん試験監督も何事かと思うよね(笑)」
検太郎 「だから『緊張するのが当たり前』だと思っておくんだ。これは秘策ってほどじゃないけど、大事な考え方だと思ってる。」
夏子 「緊張するのが当たり前・・・。」
検太郎 「もう少し踏み込んで言うとさ、「緊張状態での実力が、公平に試されている試験」と考えてみる。そうすれば緊張も「折り込み済み」ってことになるだろ?俺の好きな言葉だ。」
真由 「先生よく言ってるよね。オリコミズミって。」
夏子 「本当にポジティブですよね。その言葉私も好きかも。」
検太郎 「就職のようにライバルとの競争試験の場合は、みんな同じ状況での戦いってことさ。だから、自分ひとりだけ緊張するわけじゃない。同条件での戦いさ。公平に緊張した奴らの中で受かる人は受かるって考えるべし。そう考えたら少しは楽になるだろ?」
 真由 「う~ん。先生にはいつもそうやってはぐらかされている気がするけど・・・。
 夏子 「無理やり『楽になった』って思うことにします!
検太郎 「あはは!俺と同じ思考法になったね。二人とも『検太郎と話せば楽になる』って無理やり思いこませてるところが、普段からあるだろ~。」
 真由  「あ!」
 夏子  「図星です!」
 検太郎 「講師は一種の『お守り』みたいな役割もあるのさ。心理の世界はよく分からんけど、自分にとって『心地よい』と思うことをお試しあれ。ただし、このコラムの効果は人によって差がありますのでご了承ください。」
 真由  「誰と話してんのよ。」
 夏子  「通販番組みたい(笑)」