原作:髙見啓一(日本経済大学准教授)
イラスト:高木
日商簿記2級の検定試験を受けた戦闘員A。その数週間後・・・商工会議所から届いた封書をのぞき込む統領と戦闘員たちであった。
統領 | 「・・・ドキドキ」 |
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戦闘員B | 「どう?」 |
戦闘員C | 「受かったのかよ?」 |
戦闘員A | 「ギリギリ70点台で合格でしたっ!!」 |
戦闘員B戦闘員C | 「おおおー!」 |
一同、驚きとともに歓喜に包まれる。悪の組織が(株)ZAIMとなって以来、一番の明るい顔である。性格の悪い作者だが、本作ではハッピーエンドを選んだようだ(笑)
統領 | 「よくやったな。」 |
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戦闘員B | 「マジすごいっす。」 |
戦闘員C | 「『マジで悪の組織かよ!』ってツッコミたくなるような難しい問題だったもんな。」 |
統領 | 「だから『2級は簡単には完答できない』って言ったじゃろ。対策が生きたな。」 |
戦闘員A | 「統領のおかげです。感謝の念に堪えません。」 |
統領 | 「日商簿記は高校生であれば大学入試の推薦枠や奨学金があったり、入学後の単位免除制度を設けている大学もあるからのう。2級ともなれば有名大学にも行けるぞ。」 |
戦闘員C | 「そういうイイ情報は、俺たちが高校生のときに教えろよな。」 |
統領 | 「知ったところで勉強せんじゃろお前は。普段から日商の検定サイトを見ておけ。」 |
戦闘員B | 「就活や転職をするときの、企業からの評価はどうなんすか?」 |
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統領 | 「簿記有資格者は、企業側にとってぜひ欲しい人材じゃ!特に、最大65万円が節税できる『青色申告』には複式簿記が不可欠だし、1000万円クラスの補助金に挑戦する際にも、簿記の知識に基づく経理をすることが要件となっておる。これで戦闘員Aも激動の時代を生き残っていけそうじゃな。」 |
戦闘員A | 「そこまで見越してくれていたんですね・・・。泣きそうです(ホロリ)」 |
戦闘員C | 「意外と部下思いじゃねえか。1ミリだけ見直したぜ。」 |
上司の心遣いに、ほぼ初めて尊敬の念を抱く戦闘員たちであった。
統領 | 「これで、ワシが対応していたコスト管理や資金繰りなども、全部おぬしに任せられるし助かるわい。あ、ちょうど来週、税務調査が来るし銀行さんとの交渉もある。」 |
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戦闘員B | 「ん?」 |
統領 | 「そういえば補助金申請の締切は再来週だったな。ぜーんぶ有資格者の戦闘員Aに任せたぞ。あー、これで楽になるわい♪」 |
戦闘員A | 「え?え?ちょ・・・」 |
戦闘員C | 「・・・おいおい、なんか変な感じになってないか?」 |
ピラリ・・・
戦闘員たちがいぶかしげな顔をしだしたそのとき、マンガのワンシーンのように机の上から落ちていく一枚の紙。
統領「うるさいなー!そういう『社長や上司を助けてくれる有資格者』こそ、会社は採用したいということじゃ!何か文句あるか?」
戦闘員B | 「なんすか?このパンフレット・・・『簿記で儲かる』『部下に簿記を取らせれば経営がラクになる』って書いてある。」 |
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戦闘員C | 「『部下に日商簿記を取らせて出世しよう』・・・おいおい、安直だな。ぜんぜん部下思いじゃねえな。」 |
戦闘員A | 「そう言われると・・・正論ですね。」 |
勇者 | 「パチパチパチ・・・そのとおりです。フフフ。」 |
一同 | 「!!!」 |
ここで、親会社の「伝説の勇者(株)」の社長である勇者様が、不敵な笑みを見せながら登場するのであった。一同に緊張が走る。
勇者 | 「部下の成長は『上司のため』。上司の出世は『会社のため』。正義とは、最後まで力ある者のためにあるのです。ククク・・・。」 |
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戦闘員B | 「ガクガク・・・ブルブル・・・この人怖いっす。」 |
勇者 | 「怖がることは何もありませんよ。当『伝説の勇者グループ』では、株式上場を目指しておりましてね、連結会計の分かる戦闘員Aさんには上場後、本社の中枢で活躍いただこうと思っています。簿記有資格者の力で、当社を存分に儲けさせてくださいよ。」 |
戦闘員A | 「え?それは本当ですか?光栄すぎます。」 |
戦闘員C | 「すげえな。大出世じゃねえか!」 |
説明しよう。株式上場とは自社の株式を東京証券取引所などの株式市場に公開することであり、一般投資家からの多額の資金調達が可能になり、社会的な信頼度が格段にアップする。一方で、グループ企業の上場にあたっては連結財務諸表の提出が義務付けられるため、連結会計の知識は必要不可欠となる。
思わぬ栄転話に喜ぶ戦闘員Aの陰で、目をパチクリさせる統領であった。
統領 | 「あの~・・・勇者さまぁ~、私は?」 |
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戦闘員C | 「そろそろオチの予感がするな・・・笑」 |
勇者 | 「ご安心を。統領さんには大切な仕事が待っています。『正義』のための仕事がね。」 |
統領 | 「・・・と言いますと?」 |
勇者 | 「ご正義が支配する世界では、英語・PCと並ぶ『勇者3種の神器』として簿記の学習も小学校から必修にさせます。そして、戦闘員Aさんのような日商簿記有資格者を採用している企業は、税務申告をきちんとできる企業ということで税金を特別に優遇し、補助金も優先的に使っていただきます。」 |
説明しよう。勇者の言っていることは、実社会においてあながち間違ってはいない。正しい会計帳簿をつけることは、企業の信頼の証だからである。すでに、公共工事については日商簿記と関連の深い「建設業経理士」の有資格者がいることで、入札への参加や落札の可能性が高まる制度となっている。
戦闘員A | 「え?そんなのアリなんですか?」 |
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勇者 | 「逆に、簿記を保有していないものは、ビジネスマンとして失格ですから、私の構想している『強制収容所』に送りこみます。みなさん寒いところはお好きですか?ククク」 |
戦闘員B | 「ガクガクブルブル・・・正義の名を借りた悪の独裁国家だ・・・。」 |
戦闘員C | 「俺が一番やべえじゃねえか!」 |
統領 | 「簿記初級や原価計算初級なら、年中実施していてすぐにでも取れるはずだから、明日にでもとってこい。ところで、勇者さま・・・私の出世先ってまさか・・・。」 |
勇者 | 「フフフ・・・ククククク(ニヤニヤ)」 |
統領 | 「ざわざわざわ・・・(嫌な予感)」 |
「悪の組織の原価計算」の最終話を思い起こさせる勇者の言動に、愕然とする統領であった。これは近未来のフィクションではあるが、そう遠い話ではないかもしれない。果たして統領は?果たしてZAIMは?どうなるのか・・・次回作に期待せよっ!
悪の組織の連結会計、これにて終わりっ!!