原作:髙見啓一(鈴鹿大学准教授)
イラスト:高木

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株式会社の仕組みが分からずして、連結会計は分からない。その言葉を皮切りに、ドヤ顔の統領は戦闘員Aにレクチャーを始めるのであった。

戦闘員A 「株は買おうと思ったこともありますので、なんとなく分かるのですが・・・」
戦闘員B 「ところで『株』とか『株式』って、そもそもなんなんすか?買うと儲かる・・・財テク・・・みたいなイメージしかないんですが。」
統領 「戦闘員Cでも分かる説明をすると、『株』というのは『木』のことじゃ。」
戦闘員C 「バカにすんな。切り株とか、そういう話じゃねえよ!」
統領 「木といえば、ワシはさくらんぼが大好物でな。戦闘員Bの差し入れを食べながら話そう。モグモグ・・・。」
戦闘員B 「カミさんの実家から送られてきたっす。どうぞ!」

-ここでデザートタイムに移る統領&戦闘員たちであった。

統領 「冗談抜きで、『株を買う』とは木を買うのと同じことなんじゃ。木をちゃんと育てるとどうなる?」
戦闘員C 「え・・・きれいな花が咲く。」
統領 「お前は意外とロマンチストだな。花だけじゃなくて・・・。ほれ・・・モグモグ。」
戦闘員A 「実もなりますね。」
統領 「そう。お金を出して買った木を上手に育てれば、毎年実がなり、木の持ち主は美味しい果実が食べられるわけだ。モグモグ・・・しかし、さくらんぼはうまいのう。」

-ちなみに本編の作者も、さくらんぼが大好物である。

統領 「ここで『木』を『会社』、『実』を『利益』、『育てる』を『経営』・・・と考えると分かりやすい。」
戦闘員B 「会社を買って、上手に経営して、利益を上げて、それをもらう・・・ってことっすね。」
統領 「そう。木はずっと地面に根付いておるから、毎年実はなっていく。会社も同じじゃ。」

-読者諸君のために、ここで仕訳を一個、復習しておこう。

【取引】株式会社ZAIMは会社の設立にあたり、株式100株を発行し、現金100の払い込みを受けた。
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戦闘員A 「あ、ちゃんと会社の財産である資産が増えると同時に、株主の持ち分を意味する純資産も増えていますね。」
統領 「これで、もしも会社が解散したとき、つまり木を引っこ抜くときは、株主に現金100を返して、ゼロクリアじゃ。」
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このような仕訳問題が2級で出ることはないが、仕訳の5要素のプラスマイナスの位置関係は重要である。3級のときから曖昧にしてきた読者諸君は今一度復習されたい。

統領 「ただし、木と違って会社はそれなりにお高いから、みんなでお金を出し合うことが一般的じゃ。株主が複数おる場合、たとえば戦闘員Aが50%、ワシが50%の割合で出資したとすると、会社を解散したときには50ずつ現金が戻って来る。」
戦闘員B 「木を『はんぶんこ』にして返す・・・ということっすね。」
戦闘員A 「もしかして『実』も50%ずつで分けるのですか?」
統領 「そう、利益についての詳しい話は次回に回すが、配当金は株式の保有割合に応じてもらうことができる。たとえば10の利益が出て、そっくりそのまま配当に回すとすると、5ずつということじゃ。モグモグ・・・モグモグ・・・。」
戦闘員C 「そう言いながら統領、さくらんぼ食いすぎだぞ。1人で90%は食べてるじゃんか。」

-統領の手も解説も、止まらない。

統領 「ちなみに現金での出資以外にも、建物や車といった『現物出資』も可能じゃ。その場合は仕訳の『現金』や『当座預金』のところを『建物』や『車両』に変えたらよい。それと会社法のルールで、出資した金額は全額資本金に組み入れるのが原則なのじゃが、払込金額の1/2までは資本準備金とすることができる。・・・モグモグ。」
【取引】株式会社ZAIMは会社の設立にあたり、株式100株を発行し、現金100の払い込みを受け、払込金額のうち会社法で認められる最低額を資本金に組み入れることとした。
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戦闘員A 「これ、なんなんですか?機械的に覚えてましたが。」
統領 「資本金というのは登記事項でもあり、減額する手続はめっちゃ大変なんじゃ。株主総会の特別決議やら、債権者保護手続きやら、簿記検定では覚える必要はないが、まあとにかく面倒くさい。それに比べて、準備金であれば多少は動かしやすくなっておる。」
戦闘員A 「あ~そういう事情だったんですね。オーナーにとっての減資は、もともと持っている木自体を切られるようなものですもんね。」
さらにマニアックな話を解説しよう(覚える必要はない!)。
日本では「大会社」や「中小企業」といった区分が、資本金の金額によって定量的に定まっている。
多くの場合、中小企業や中小法人の方が税金や制度上の優遇措置が多くなっているため、資本金額を低く抑えるためにも上記の知識は必須となる。
統領 「ワシもZAIMの経営が苦しいとき、どうしても資本金を減らして株主にごめんなさいしたいときがあってな。」
戦闘員C 「あのときは土下座してたよな(笑)出資者に。」
統領 「早い話が、実をならせる力がある会社は株価も上がるが、逆に植えた木を小さく枯らしてしまう(ウチのような)会社は株価も下がるわけじゃ。」
戦闘員A 「そして現在は、株主が『伝説の勇者株式会社』となったわけですね・・・。」
統領 「あああ・・しっかり稼がんと、怒られる・・・。あ、勇者さまにもさくらんぼ届けてきて・・・。」
戦闘員B 「隣同士あなたとわたし、さくらんぼ食べてる場合じゃないっす(泣)」

次回予告

株式を持つメリットの一つ「配当金」は会社の最終利益から支払われる。この仕組みすら知らなかった戦闘員Aは、自社を例に学ぶのであった。
次回「株式会社のしくみ② ~配るか、残すか、その利益~」