著者 : 鈴鹿大学講師 高見啓一
今日も検太郎は顧問先の若手社員とランチミーティングをするのであった。どんな優れたトップがいても、やはり中間管理職には色々な人がいるようで、「しょんぼり」とした若手社員から今日も相談を受けるのであった。。
検太郎 | 「南さん、元気ないですね。なにかあったのですか?」 |
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南 | 「実は仕事でミスをしまして。」 |
検太郎 | 「あらら。大変ですね。それはどんなミスだったんですか?」 |
南 | 「上司から頼まれていた書類なんですが、締切に1日だけ遅れまして。」 |
検太郎 | 「それは、絶対に遅れられない書類だったのですか?」 |
南 | 「決してそういう仕事ではないんです。内部の報告用なので。でも、1日でも遅れると、めっちゃ罵倒されるんですよね。バカとかボケとか。」 |
検太郎 | 「まあ、納期の厳守は重要ですし、たしかに1日たりとも遅れられない仕事だってありますもんね。でも、罵倒されるのはしんどいですね・・・。」 |
南 | 「どうも俺、パワハラの上司ばかり当たるんですよね・・・。いろんな企画を出しては怒られたりして・・・。検太郎先生は気楽そうでいいですよね。」 |
検太郎 | 「あはは(^^)それは確かですね。フリーランスの場合、合わない人の仕事は断ろうと思えば断れますから。」 |
南 | 「そうですよね。困った人には近づかないのが一番だと思います。でも、俺自身仕事にミスが多いのは事実ですし、言われれば言われるほど、自分を否定的に見てしまうというか、俺ってダメだなあって思っちゃうんです。」 |
検太郎 | 「私の場合は学生を相手にすることが多いですが、ミスを怖がっていたら、勉強はできません。ミスを繰り返して成長するんだよ・・・とは伝えています。」 |
南 | 「学生さんはいいですよね。『ミスをさせてもらえる』ことのありがたさを思うと、改めて学生時代もっと勉強しておけばよかったと思いますよ。」 |
検太郎 | 「でもね南さん、ビジネスの世界でも業績評価の主流は、『加点評価方式』に変わりつつあります。」 |
南 | 「加点評価方式?」 |
検太郎 | 「いわゆるプラス評価だけを重ねていくやり方です。ミスはしても減点はしません。」 |
南 | 「あ、それいいですね。」 |
検太郎 | 「色々なことに挑戦していたら、ミスも起こりますよ。かといって何もしなかったら、何も生まれません。だからこそ加点方式なんです。」 |
南 | 「でも、上司の減点評価方式に耐えきれなくなったら?」 |
検太郎 | 「辞めたらいいんじゃないですか~(笑)」 |
南 | 「そうですね・・・って全くもう、先生は本当お気楽ですね(笑)」 |
検太郎 | 「あはは(^^)本当に『辞める』を選ぶかどうかは別として、心のどこかにそういう気持ちがあると強いですよね。可愛そうな上司だと思うしかないです。そういう上司だということを認めてあげるのも、相手のミスを認めているってことになりません?」 |
南 | 「あ、本当ですね。」 |
検太郎 | 「南さんが上司を加点評価してあげてはどうでしょうか。」 |
南 | 「納期遵守の習慣をつけさせてもらっている・・・って考えればいいのかな。う~ん。頭では分かるけど気持ちがついていかないや。」 |
検太郎 | 「それでいいんじゃないですか。頭で分かっているだけでも、相当な理解者ですよ。」 |
南 | 「検太郎先生、人の気をノセるのうまいなあ。少しだけ気が楽になりました。」 |
検太郎 | 「まあ、私の専門である資格試験も似たところがありますね。」 |
南 | 「そうなんですか?」 |
検太郎 | 「合格点まで『○点足りない』『●●が出来ない』なんてことを最初から自分に対して減点方式で言っていたら、本当にキツくなります。まずは基本的な問題をやって、得点が上がる工夫をすることが重要なんです。 前回より『10点上がった』とか『あと5点上げたい』って加点方式で考えられる人は、ちゃんと前向きに取り組めている人ですね。」 |
後日談だが、南さんの上司は、部下のいない部署に左遷となったそうだ。減点評価の人が減点評価に泣かされることになったわけだ。陰で笑う同僚たちを後目に、「きっと、彼は部下の面倒を見ることよりも、自分で仕事を進めていくことに力のあるマネジャーなんだろうな。頑張ってほしいな。」と思えるようになった南さんであった。