簿記を学べば生涯役に立ちます

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実践的な資格

-ビジネスを始める時に簿記を勉強されたのですね。

10年以上前ですが、証券会社で働く友人から株が面白いと勧められました。良くわからないうちにやってみた所、ビギナーズラックで大儲けした後に大損をして、結果的にプラスマイナスでゼロ。残ったのはストレスだけという事がありました。まあ良くある話です(笑) このままじゃ悔しいから何とかリベンジしてやろうと思って勉強を始めました。それで投資をするなら決算書を読めないと駄目、という事が分かり、簿記の勉強を始めました。そのタイミングが偶然自営業を始める時と重なっていました。資格学校に通って3級・2級と取得しました。その後。青色申告をする際、経理の経験が無くても自分で書類を作成し、申告できました。簿記は実践的な資格だと思います。

起業するなら、まず簿記を学ぼう

-独立・起業する方々に、簿記を勧めておられるのは、なぜですか。

起業の相談を受けると、必ず「簿記3級から勉強すると良い」と答えています。自分自身、心の底からそう思ったことがあったからです。FP(ファイナンシャルプランナー)を始める前のビジネスで、事業が軌道に乗り、売り上げが拡大していた時のことです。多額の融資を受けられたので、可能な限り在庫を増やしたいと思ったのですが、資金繰りを考えると危険だと判断して当初の予定よりかなり減らしました。その後2008年にリーマン・ショックが起きて、売り上げが大幅に落ち込みました。
もしその時、当初の予定通りに仕入れをしていたら大変な目に遭うところでした。簿記を勉強していたのでキャッシュフローの概念が頭にあり、首の皮一枚つながったと思います。
会社を起こす人に簿記3級の取得を義務付けたら、倒産や自己破産の確率は大きく下がると思います。もちろん、会社に勤めていても簿記が役に立つのは間違いありません。

家計を助ける簿記のチカラ

-FPの仕事にも簿記が役立っているとか。

06_interview_photo_02FPは個人のお金、つまり家計に関するアドバイスをする仕事ですが、企業会計や簿記の考え方を家計にも応用しています。
例えば家計管理では変動費・固定費の考え方を使います。簿記では売り上げがゼロでも発生する費用を固定費と呼びますが、家計では生きている限り発生する費用が固定費です。実はこの考え方だと、変動費と思われがちな食費や公共料金も半ば固定費という事になり、家計支出のほとんどは固定費、という事になります。固定費の割合が大きいと赤字になりやすいのは企業も家計も同じです。つまり家計は元々赤字になりやすい体質、という事になります。
他にも住宅購入は従来「持ち家と賃貸はどちらが得か?」といったように、損得を基準に考えるのが普通でした。自分は「損得よりも資金繰り・リスクの方が重要だ」という考え方をブログで公表しました。簿記会計や資産運用的な発想を住宅購入に応用したわけです。この記事がウェブ上で大変な話題になり、結果的にFPとして集客し、マネー誌等で連載出来るきっかけにもなりました。簿記の考え方は骨組みがキッチリとしているので、分野を問わずお金の事を考える土台になります。

就活にも役立つ

大学生にも簿記の知識が役に立つとおっしゃっています。

学生さんは、就職活動の際に企業研究をすると思いますが、決算書を見る人はほとんどいないと思います。
リーマン・ショックをきっかけに多くの企業が苦境に陥りました。中には、前年度決算で過去最高の利益をあげながら翌年には経営破たんした企業もあり、内定が取り消されました。そんな企業の財務状況をよく見ると、在庫が過剰に積み上がり、手持ちの現金は極端に減り、借金が大幅に増えていました。要するに自分が苦境に陥った時と似た状況です。破綻寸前である事は一目瞭然です。簿記を勉強して就活の時に決算書を読む事が出来れば、企業の財務状態を把握できます。
簿記を勉強しておけば、生活、就職、起業、仕事と、人生のさまざまな場面で役に立ちます。社会人になると時間の制約が大きくなるので、学生の皆さんは、早いうちに簿記を勉強すると良いと思います。勉強の手間やコストに対してリターンは想像以上に大きいと思います。

Profile

06_interview_photo_03中嶋よしふみ Nakajima Yoshifumi
1979年東京生まれ。2011年、FPのお店・シェアーズカフェを開業。2012年に開設したシェアーズカフェのブログは5ヵ月で月間アクセス数14万件を突破。現在は個人向けレッスンの他、日経DUAL、アゴラ、ハフィントンポスト等でも執筆中。2013年にはウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを開設。2014年にシェアーズカフェを法人化。