「英語より簿記の知識が必要」

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簿記は企業社会との接点

-日頃から、「簿記を学ぶべき」とおっしゃっています。

「日本では、多くの人にとって英語を使う機会は限られますが、簿記はすべての人の仕事や生活に直結します。それなのに、その重要性を知らない方が実に多い。これはわが国にとって大きな損失であり、もっと多くの人が簿記を学べば日本の国力は上がります」

-なぜ、多くの人にとって簿記が必要だと思われますか。

「企業に勤めていると、簿記を通じて学ぶ言葉がたくさん出てきます。『引当金』にしても、『減価償却』にしても、意味を理解していないと仕事の話ができません。簿記を学ぶことは、仕事をするうえで必要な言葉を学ぶことでもあるのです。簿記が分からないと、本人も、周囲も、仕事をするうえで困るのです。」
「具体的には、日商簿記2級程度の商業簿記の知識があるといいですね。そうすれば、企業の決算書が読めるし、財務状況もよくわかります。」

生涯を通じて必要な知識

-簿記は、金融機関や企業の経理担当者に必要な知識だと思っている方が多いですが。

「決してそんなことはありません。簿記は企業を理解するための根幹になるものだからです。例えば、ものづくりや営業・販売の現場でも、簿記や会計の知識は必要です。在庫管理はとても重要ですし、原価計算は常に必要なので、簿記の知識がないと困るんです。これから創業しようとする方であれば、なおさら必要です。」

-学生時代に簿記を学んでおくべきだと。

01_interview_photo_01「就職時には簿記の知識は是非もっていてほしいですね。」「大学1、2年生で、あるいは就職活動時に、内定後でもかまいませんが、簿記を勉強しておけば会社に入ってから役に立ちます。総合商社に就職した私の娘も、内定後、会社から簿記3級を取るよう言われて勉強していました。」
「特に、理工系学部の学生さんにこそ簿記を勧めたいですね。実践的な専門知識の修得に加えて簿記を学べば、就職活動でも社会に出てからからも非常に有利だと思います。」

-シニアの方にも簿記を勧めておられますね。

「いま、NISA(少額投資非課税制度)(※)が話題になっています。これからはNISAの活用が当たり前になるかもしれません。そこで、問題は、投資先の企業をどうやって決めるかです。一つの基準になるのが企業の財務状況です。つまり、投資先を決める時に簿記の知識が役にたつんです。」

簿記は誰にでも理解できる

-どうしたら、もっと大勢の方に簿記を勉強していただけるでしょうか。

「実務と簿記が結びつくような、そして、一般の方に興味を持ってもらえるような仕掛けが必要ではないですか。例えば、インターネット上でクイズを出すのは一案です。普通の人が『面白い』と感じて、『簿記を勉強してみよう』と思ってもらうことが大切です。」

-資格取得についてはどう思われますか。

「最も大事なことは、簿記の知識を身につけ、企業の財務状況がわかるようになることですが、資格はそれをとってどう活かすか人それぞれかと思います。検定試験に合格することで勉強の成果を得た自信が持てるなど、資格を持つ効用はあると思います。」

-最後に、これから簿記を勉強する方たちにひとことお願します。

「簿記は決して難しくありません。簿記を学ぶのに特別な能力や長い年月は必要としません。集中して勉強すれば誰でも短期間に身につけることができます。本当に多くの方に簿記の必要性を分かってもらい、簿記を学んでほしいです。」

(※)NISA:通常、株式や投資信託などから得られた配当や譲渡益は所得税や地方税の課税対象となる。これに対しNISAは、毎年100万円を上限とする新規購入分を対象に、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税にする制度。<金融庁ホームページより抜粋>

Profile

01_interview_photo_02成毛 眞 Naruke Makoto
1955年、札幌生まれ。中央大学商学部卒。1986年、マイクロソフト株式会社に入社。
1991年、同社社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「株式会社インスパイア」を設立。スルガ銀行社外取締役、早稲田大学ビジネススクール客員教授なども務める。ビジネス界でも有数の読書家で、新聞、雑誌などに多くの書評を寄せている。
人気の書評サイト「HONZ」代表としても知られる。
『本は10冊同時に読め』(三笠書房)『面白い本』『もっと面白い本』(岩波書店)など著書多数。