プログラミングで次代を担う創造力を育む

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子ども時代の経験がモノづくりに活きる

-初めてプログラミングに出会ったのはいつ頃ですか。

1965年に就職し、コンピュータを担当することになった時です。初めにCOBOL(コボル)などの言語を学んで、それから実際の仕事に就きました。学生時代には知らなかったことばかりで、学ぶこと自体が楽しかったことを覚えています。システム開発でプログラムを作成する仕事は、正しいか、正しくないか、はっきり結果が出るので、曖昧なことが嫌いな自分の性分にも合っていました。

プログラミングはモノづくりの手段でもありますが、私は子どもの頃からモノづくりに大変興味がありました。好奇心も旺盛で、自宅の蓄音機や柱時計の中がどうなっているかを知りたくて、分解しては壊してよく叱られました。でも、こうした経験を通じてモノづくりが好きになったのです。

子どもは無限の可能性を秘めています。ところが、最近の子どもはゲームなど、出来合の物を利用することが多く、積み木を組み立てては壊しまた組み立てる、といった遊びもあまりしません。何かを創り出す力が身に付くのか不安です。また、モノづくりには感性も重要です。親や祖父母と童謡を歌ったり、童話の読み聞かせをすることで子どもの感性が養われますが、こうした機会も少なくなりました。

試行錯誤が子どもを成長させる

-何かを創り出す力とプログラミングコンテストにはどのような関係がありますか?

プログラムをつくることは試行錯誤の繰り返しです。試行錯誤は創造力を養うために必要不可欠です。そこで、子どもを対象に「U-15プログラミングコンテスト」を開催することにしました。
運営に当たっては、当社の社員が準備段階から参加し、私自身も、子ども達が使うマニュアルをチェックするなど直接かかわりました。社員は大変だったと思いますし、費用もかかりましたが、大会は大変盛り上がり、毎年続けたいと考えています。

U-15プログラミングコンテストとは
DSC_0064長野商工会議所をはじめ市内の大学、高専、工業高校、市、市教育委員会、長野市ICT産業協会などで構成する実行委員会が、ITジュニアの育成を目的に、2018年に初めて開催。公募で集まった市内の小中学生33人が、7月から9月の事前講習会でプログラミングを学び、10月の「産業フェアin信州2018」の事業として開催された予選・決勝では、碁盤目状のフィールド上でそれぞれが作成したプログラム同士を戦わせる対戦型ゲームの形で行われた。

-コンテストの運営ではどのような点を重視しましたか?

一番大切にしたのはコンテストの開催時期です。長野商工会議所などが毎年10月に開催し、1万3千人以上が来場する産業フェアの事業の一つとして実施しました。多くのフェアの来場者に見ていただくことで子ども達のやりがいが増すためです。
この他に三つの要素を大切にしました。一つ目は参加者の募集、二つ目は子ども達がプログラミングを学ぶ環境、三つ目はプログラミングの指導者です。
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募集は、市の教育委員会と連携して、長野市内に60校以上あるすべての小中学校に参加を呼びかけました。大勢の応募者から先着順で33名に参加してもらいました。また、学ぶ環境については、長野県でパソコンを製造しているマウスコンピューター社の小松社長に相談し、同社のご協力で長野市にパソコンを寄付していただき、市からパソコンを借用して子ども達に使ってもらうことにしました。
指導者については、私が、8年前から開催している旭川市へ見学に行って、子ども向けプログラミング大会を手伝う学生さんが、市内のお店で大会運営について熱く語る姿に接し、感銘を受けたことから、地元の信州大学、長野高専、長野工業の学生さんの協力を得て、子ども二人に指導者一人という手厚い体制を整えました。

あらゆる企業でIT人材が活躍する社会に

-経営者として、プログラミングを学ぶ意義はどこにあるとお考えですか。

以前はシステムエンジニアやプログラマーは特殊な技能を持った人材と考えられていましたが、今は、一般の企業でもIT人材を育て、システムの維持管理や作りこみは自社でできるようになってきました。
ただ、多くの中小企業では、消費税率引上げや元号改変への対応ですら業者任せで、自社業務のIT化にはなかなか至りません。

また、お客様と何度も打ち合わせして、できあがったシステムを納品する段階になって、「欲しかったものはこうではない」「我々は専門家ではないから、実際に使ってみなければ良し悪しはわからない」と言われることがあります。
しかしながら、社員の大半がITにかかわりを持てば状況は変わります。システムの発注でも、お客様側企業の人材にITのスキルが蓄積されれば、受注側企業との齟齬は減り、双方にメリットが生まれます。

子どものうちからITにかかわれば、専門家にならなくても、そろばんや電卓と同じようにITを使いこなせるようになれます。このほど始まった日商プログラミング検定も、専門的な内容ではなく基本的なスキルを身に付けるための内容になっています。こうした検定試験やプログラミングコンテストなどを通じて、一人でも多くのIT人材が育つことを期待しています。

Profile

kitamuraprof(1)北村 正博 Kitamura Masahiro
1947年、長野県生まれ。長野商工会議所会頭。システックス株式会社代表取締役。株式会社まちづくり長野社長。しなの鉄道株式会社取締役会長他。電子関連企業勤務を経て、1970年、長野ソフトウエアサービス株式会社(現、システックス株式会社)設立。2013年、長野商工会議所会頭就任。