原作:髙見啓一(鈴鹿大学講師)
イラスト:高木
<あらすじ>
ヒーローにやられっぱなしの悪の秘密結社「ZAIM」の統領と戦闘員たち。左遷先のRPGの世界では、魔王軍の「モンスター製造工場」を任されたのであった。
統領 | 「・・・というわけで、お前たち。今日からZAIMのモンスター製造工場では「原価計算」を導入することにする!」 |
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戦闘員A | 「原価計算・・・?ムダなコストの節約ですか?」 |
戦闘員B | 「なんかセコそう。割りばしを洗って使ったりとか、そういうイメージだな。」 |
戦闘員C | 「それはもう、すでにしてるけどな(笑)」 |
統領 | 「『原価計算』というと、すぐにそういう風に取られてしまうのが悲しいのう。たしかにそういう側面も大きい。だがな、原価計算のねらいはコスト面だけではないんじゃ。」 |
戦闘員A | 「というと?」 |
統領 | 「コスト面での無駄を見つけるのはもちろんのこと、売上増大・利益増大のためのシミュレーションも可能となるのじゃ。」 |
説明しよう。日本商工会議所の原価計算では以下のような幅広い分野を学習する。
①原価の概念:原価計算の基礎概念、原価の構造、損益計算、利益の計画・統制 など
②制度会計:製造原価報告書の作成、損益計算書の作成 など
③管理会計:CVP分析(損益分岐点分析)、利益の計画・統制(予算差異分析) など
①原価の概念:原価計算の基礎概念、原価の構造、損益計算、利益の計画・統制 など
②制度会計:製造原価報告書の作成、損益計算書の作成 など
③管理会計:CVP分析(損益分岐点分析)、利益の計画・統制(予算差異分析) など
統領 | 「特に管理会計の分野は、原価面だけでなくどれだけの売上(単価・個数)を上げるかというシミュレーションにつながるからのう。利用しない手はない。」 |
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戦闘員A | 「原価計算ってコスト側だけでなく、収益の方にも効いてくるんですね。」 |
戦闘員B | 「でもさあ、俺たち客商売じゃないからな。モンスターを作るコストは分かるけど、『売上』って俺たちで言うとなんだろう?」 |
戦闘員C | 「まあ、勇者たちを何人倒すか・・・じゃね?」 |
統領 | 「そのとおり。さらにいえば、勇者は何度でも我々に挑んで来るからのう。ある意味『リピーターさん』じゃ。リピーターさんにどう相手していくかが客商売の基本じゃな。」 |
戦闘員B | 「リピーターさんって・・・(笑)」 |
統領 | 「もう1つ、企業にとっては『生産性』という概念を忘れてはならぬ。これもコストだけでは表現できない言葉じゃ。」 |
説明しよう。生産性とは「産出(Output)÷投入(Input)」で表される概念である。いかに少ない投入(材料・労働力など)で、多くの産出(付加価値・利益など)を生み出すかが、企業や組織の存続に必須の課題となる。
戦闘員B | 「本当だ。『産出』の方は収益や利益を考えないとダメなのか。」 |
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戦闘員A | 「日本の企業は『生産性の向上』が課題になっていると聞いたことがあります。」 |
統領 | 「そう。我々で言えば、安いモンスター(少ない投入)で強力な相手(多くの産出)を倒せればベストということじゃ。逆に、弱い相手(少ない産出)を倒すのに高いアイテムや強い魔法(多くの産出)で金や精神力を消費するのはもったいないからのう。」 |
戦闘員A | 「つまり、いかに低コストで、多くの利益や成果を出すか・・・そこまで考えるのが原価計算の概念ということですね。」 |
統領 | 「これまでのモンスターのコストと戦績をしっかりと見直していく必要があるな・・・おい!そこの重装備スケルトン!お前は今まで何人の勇者を倒したのじゃ?」 |
-鎧兜に身を包み、工場の中をウロウロしているスケルトンに声をかける統領。
スケルトン | 「え?俺でやんすか?まだ0人でやんす。」 |
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統領 | 「バカモン!お前の装備にどれだけ金をかけていると思っておるのじゃ。生産性が上がらない状況であれば、製造コストは他のモンスターに回すぞ。」 |
スケルトン | 「カンベンしてくださいよ~。とんだとばっちりでやんす・・・。」 |
戦闘員C | 「ハハハ。装備を竹ヤリに替えちゃえ(笑)」 |
戦闘員B | 「鎧はTシャツに絵柄で書いておくとかな。」 |
統領 | 「そういうことじゃ。原価計算の観点で仕事を見直せば、必ずや我々ZAIMの復権も近くなろう。」 |
戦闘員A | 「わかりました。その方針で、モンスター製造と勇者たちとの戦いを展開して参りましょう。」 |
統領 | 「うむ。さすがお前は優秀だな。お前たちもこのままではあのスケルトンと同じだぞ。戦闘員B!戦闘員C!」 |
-他人事と思って笑っていた2人の戦闘員に、統領は突然語りかけるのであった。
戦闘員B | 「ギクリ!」 |
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戦闘員C | 「だから、成果の上がっていない俺たちの給料は安いのか・・・。」 |
統領 | 「生産性を一定に保ったままで給料を上げるには、成果を上げるしかない。全てのサラリーマンが原価計算を勉強すべきであると言えよう。」 |
戦闘員A | 「まずは我々末端の戦闘員の意識改革からですね・・・。」 |
戦闘員B | 「なんか、上手に安月給の理由を言い訳されたようにも聞こえるなあ・・・。」 |
戦闘員C | 「それな!」 |
次回予告
いよいよ「原価計算」に基づく運営をスタートするZAIMモンスター製造工場。
統領たちは足元のコストが見えていない現状に気づくのであった・・・。
次回「モンスターの原価とは?」お楽しみに!