1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験 答案練習 
~2016年度試験対策・第1回~

■企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第324号(2016.5.15)掲載
 A分野: わが国の年金制度

 「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」に基づく、厚生年金基金制度の改正に関する問題です。厚生年金基金制度の改正は、厚生年金保険法だけでなく、確定給付企業年金法や確定拠出年金法など様々な法律の改正に及ぶ上、政省令によるものも多く、広範に及ぶ内容となりますが、まず全体像をつかみ、その上で各項目別の内容を理解することが重要です。改正に関する資料としては、「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律について」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kousei/dl/kaisei01.pdf)、「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律等の施行について(平成26年3月24日 年発0324第1号)」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000042832_6.pdf)などがあり、厚生労働省のホームページから入手することができるので、参考にすると良いでしょう。

《問1》の「解答・解説」
 厚生年金基金制度の改正の概要に関する問題です。基本的な内容なので良く理解し、空欄以外の箇所を問われても正確に答えられるようにしましょう。改正の概要は以下の通りです。

(1)平成26年4月1日以後、厚生年金基金の新設は認められない。
(2)平成26年4月1日から5年間の時限措置として特例解散制度を見直し、分割納付における事業所間の連帯債務を外すなど、基金の解散時に国に納付する最低責任準備金の納付期限・納付方法の特例を設ける。
(3)平成26年4月1日から5年後以降は、代行資産保全の観点から設定した基準を満たさない基金については、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聴いて、解散命令を発動できる。
(4)上乗せ給付の受給権保全を支援するため、厚生年金基金から他の企業年金等への積立金の移行について特例を設ける。

《解答》 (a)ホ  (b)ト  (c)ロ  (d)ヌ  (e)ヨ  (f)タ

《問2》の「解答・解説」
 《問1》の(4)の具体例に関する問題です。ポイントは、(Ⅰ)上乗せ給付に係る支援であり、最低責任準備金の納付に関する特例ではないこと、(Ⅱ)設例より「当基金」は解散決定時に代行割れに至っていないため、「代行割れしていないが上乗せ給付は積立不足である基金」であることがあげられます。

確定給付企業年金への主な移行支援としては、以下のものがあります。
・ 積立不足の償却期間の延長
  移行時の積立不足の償却期間が、改正前は最長20年でしたが、改正後は最長30年に延長されました。
・事業所単位での移行
  加入事業所の企業年金の実施状況等をふまえ、事業所ごとに多様な方法で確定給付企業年金に移行
  することができるようになりました。したがって、新たに確定給付企業年金を実施するだけでなく、
  既に実施している確定給付企業年金に移行することもできます。

確定拠出年金への主な移行支援としは、以下のものがあります
・積立基準の緩和
 改正前は上乗せ給付部分に積立不足がないことが要件とされていましたが、改正後は積立不足があっ
 ても確定拠出年金に移行できるようになりました。
・その他
 厚生年金基金から既存の確定拠出年金への資産の移換や、手続きの簡素化などがあります。

《解答例》
(1)確定給付企業年金への移行支援策
  ・移行時の積立不足を掛金で埋めるための期間が延長される。
  ・解散後に権利義務の移転を伴わずに事業所単位で既存の確定給付企業年金へ残余財産の持ち込
   みができる。
(2)確定拠出年金への移行支援策
  ・解散後に確定拠出年金に移行する場合の積立基準に関する規制が緩和される(最低積立基準に
   不足があっても穴埋めする必要がない)。
  ・解散した基金に加入していた事業所の従業員が基金から既存の確定拠出年金へ資産移換ができる。

《問3》の「解答・解説」
 厚生年金基金の存続要件及び特例解散制度に関する問題です。(2)、(3)はやや詳細な記述といえますが、基本的な事項を理解していれば、正誤の判断はできるでしょう。

(1) 改正後は、厚生年金基金として存続するためには、代行部分の1.5倍又は最低積立基準額を確保しなければなりません。
(2) 特例解散の認可を申請すると、申請した日の属する月の翌月から、上乗せ部分の給付が支給停止になります。そのため、規約の変更や受給者等への周知を速やかに行う必要があります。なお、代行部分は、解散認可後は国から支給されるようになりますが、公的年金の一部であることから、支給そのものが停止されたりなくなることはありません。
(3) 特例解散では、国に納付する最低責任準備金を分割納付することができますが、この場合の利息は、改正により、解散時の10年利付国債の利回りに固定されることになりました。これは、将来の支払額が変動しないようにすることで、解散した基金の加入事業所の経営等に不測の影響を及ぼさないようにするため措置といえます。
(4) 特例解散制度は代行割れ基金を対象としたものであり、代行割れしていない基金には適用されません。したがって、国に納める最低責任準備金を分割納付しながら、上乗せ給付の移行のために資産を他の制度に移換することはできません。通常の解散制度により、最低責任準備金納付後の残余財産を他の制度に移換することは可能です。

《解答例》
(1) ×:【理由】健全とされる基金の代行部分に対する積立比率は1.5以上である。
(2) ×:【理由】特例解散制度の適用を受ける予定の基金の受給者は、当該解散申請(指定)をした
          日の属する月の翌月分から、上乗せ部分の給付が支給停止となる。
(3) ×:【理由】分割納付する際の利息は、固定金利(解散時の10年利付国債の利回り)となる。
(4) ×:【理由】代行割れしていない基金は、特例解散制度を適用することはできない。