1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験 答案練習(全8回)
~2015年度試験対策・第1回~
■企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第300号(2015.5.15)掲載
B分野:確定拠出年金
確定拠出年金の企業型年金の規約の承認及び変更に関する問題です。この問題では、A社に「労働組合がないこと」や「その他の退職給付制度を実施していないこと」が、正答を導く上での大きなポイントになっています。応用問題を解くときは、法令の内容を正確に覚えるだけでなく、設例をよく読み、前提条件を十分に把握することが大切です。
《問1》の「解答・解説」
(1) 確定拠出年金の企業型年金を実施する場合の従業員の同意要件は以下のように2通りに分類されます(確定拠出年金法第3条)。
a.被用者年金被保険者等の過半数で組織する労働組合があるとき…当該労働組合の同意
b.上記労働組合がないとき…被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意
設例からA社には労働組合がないことが判明していますので、A社が企業型年金を実施する場合はb.の要件を満たす必要があります。
(2) 確定拠出年金の企業型年金の規約等の承認申請に係る標準審査期間は、おおむね2カ月です。実務に携わっていないと見落としがちな項目ですが、過去にも何回か出題されているので、覚えておきましょう。
《解答》 (1) 被用者年金被保険者等の過半数を代表する者 (2) 2
《問2》の「解答・解説」
企業型年金規約承認申請書に添付する必要のある書類としては、以下のものがあります(確定拠出年金法施行規則第3条)。
1.企業型年金規約
2.労働組合又は被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意書
3.労働組合の現況又は厚生年金被保険者等の過半数を代表することの事業主の証明 書
4.確定拠出年金運営管理機関委託仮契約書の写し
5.資産管理仮契約書の写し
6.就業規則(又は労働協約)及び給与規程(又は退職金規程)の写し
7.加入者に一定の資格を定める場合は、退職金規程、厚生年金基金規約又は企業年金制度及び退職手当制度の適用範囲を証する書類
8.その他承認に当たって必要な書類
ただし、A社の場合は、労働組合がないこと、また、その他の退職給付制度を実施していないことから、2.及び3.の労働組合がある場合の定めの部分、及び7.は、添付書類には該当しません。
《解答例》以下から2つ
(1) 企業型年金規約
(2)被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意書
(3)厚生年金被保険者等の過半数を代表することの事業主の証明書
(4)確定拠出年金運営管理機関委託仮契約書の写し
(5)資産管理仮契約書の写し
(6)就業規則(または労働協約)及び給与規程の写し
《問3》の「解答・解説」
確定拠出年金の企業型年金の規約の変更については、以下のように定められています(確定拠出年金法第5条、第6条)。
1.承認・届出
a.軽微な変更に該当しない場合(原則的な取扱い)
厚生労働大臣の承認を受けなければならない
b.軽微な変更に該当する場合
厚生労働大臣に届け出なければならない(承認を受ける必要はない)
2.従業員の同意要件
承認、届出ともに、被用者年金被保険者等の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、当該労働組合がないときは被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意を得て行わなければならない。ただし、特に軽微な変更の場合は、同意を得る必要はない。
したがって、各選択肢の規約の変更が、「軽微な変更」または「特に軽微な変更」に該当するか否かがポイントになります。なお、軽微な変更は確定拠出年金法施行規則第5条第1項、特に軽微な変更は同条第2項に定められています。また、A社の場合は、労働組合がないので、被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意を得る必要がある点にも注意が必要です。各選択肢のポイントは以下の通りです。
(1)「企業型年金を実施する事業主の増加」に係る規約の変更は、軽微な変更には該当しないため、厚生労働大臣の承認が必要です。
(2)「運用の指図に資するための資産の運用に関する基礎的な資料の提供その他の措置の内容」に関する規約の変更は、軽微な変更に該当しますが、特に軽微な変更ではないので、被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意を得なければなりません。
(3)「企業型年金加入者等が負担する事務費の額又は割合の減少」に係る規約の変更は、軽微な変更に該当するため、届出は義務づけられていますが、承認を得る必要はありません。
(4)「資産管理機関の相手方の変更」に係る規約の変更は、軽微な変更には該当しますが、特に軽微な変更ではないため、被用者年金被保険者等の過半数を代表する者の同意を得なければなりません。
《解答例》
(1) ○
(2) ×:「資産運用の基礎的な資料の提供方法等」に関する規約の変更は届出事項であるが、被用者年金被保険者等の過半数代表者の同意は必要である。
(3) ×:加入者が負担する事務費の割合または額が減少する場合の規約変更は届出事項である
(4) ×:資産管理機関の相手方を変更する規約の変更は届出事項であるが、被用者年金被保険者等の過半数代表者の同意は必要である。
※被用者年金制度の一元化に伴い、平成27年10月1日より、従来確定拠出年金法で「被用者年金被保険者等」と表記されていた箇所は「厚生年金保険の被保険者」に変更されます。改正後の条文を確認しておきましょう。