企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第106号(2007.4.15)
C分野(投資に関する知識):金融商品に関する知識とパフォーマンス評価

今回から、2007年3月に実施された第11回1級試験の問題をとりあげます。

本号でとりあげた問題のポイントは、以下のとおりです。
1.金融商品に関する知識
(1)GICにおける中途解約時の扱い
(2)J-REITにおける配当金の扱い
(3)ファミリー・ファンドとファンド・オブ・ファンズの相違点
2.パフォーマンス評価とポートフォリオのリスク・リターンに関する複合問題

《問1》の「解答・解説」
【A】利率保証型積立生命保険(GIC)
利率保証型積立生命保険(GIC)は、利率保証契約タイプの年金保険です。GICの主な特徴は、次のとおりです。
(1)確定拠出年金における元本確保型商品に該当する。
(2)生命保険契約者保護機構による保護の対象となる。
(3)保険料の99.7%以上が責任準備金として積み立てられる。
(4)払い込まれた保険料は、一般勘定で運用される。
(5)5年または10年の保証期間を設け、市場金利の動向に基づく利率(保証利率)が適用される。新規に払い込まれる保険料の利率は、その時点の利率がそれぞれ適用される。
(6)中途解約も一部認められている。
(7)中途解約する場合は、運用対象商品(債券等)の市場価格によって解約控除(市場価格調整)が適用される場合がある。その結果、控除後の解約返戻金が元本を下回る可能性がある。ただし、離職時や定年退職時に支払われる場合には、解約控除が適用されないものもある。

この問題は、上記(7)のGICの中途解約に関する知識からの出題です。また、2006年3月(第9回)試験の「応用編」においても、GICに関する問題が穴埋め形式で出題されています。これについては、2006.5.15付メルマガ第84号で解説していますので、参照してください。

【B】不動産投資信託(J-REIT)
「投資信託及び投資法人に関する法律」の平成12年改正を受けて、日本においても不動産投資信託(J-REIT)が登場しました。J-REITは、投資家から集めた資金で投資法人を設立し、その資金を不動産に投資したうえ、不動産を運用して、不動産事業から生じるキャッシュ・フローを源泉とした利益を投資家に分配する商品です。確定拠出年金向けのJ-REITファンドも、いくつか登場してきています。この商品の特徴は、次のとおりです。
(1)ファンドごとに、投資対象(オフィス・ビル、商業施設、マンション等)を限定して投資される。
(2)通常、クローズド・エンド型投資法人(会社型投資信託)という形態をとる。
(3)運用資産全体の75%以上が不動産等で構成され、かつ50%以上は現に賃貸収入が発生している不動産であることが必要。
(4)組み入れ不動産の賃貸収入等を原資に利益の90%超の配当金が支払われる。このことは、投資法人が配当を損金算入できる要件の一つに該当する。
(5)J-REITの購入者に係る課税関係は、上場株式等と同様。
(6)運用実績は、不動産市況の影響を受ける。
(7)一般的な不動産投資にもみられるリスク(不動産の瑕疵、行政法規等の改正、都市計画の変更、自然災害…)がある。

この問題では、上記(4)に関連した事項が問われています。J-REITについては、2005年9月(第8回)試験の「応用編」で、その特徴を記述する問題が出題されています(2005.10.15付メルマガ第70号を参照)。

【C】ファミリー・ファンド方式(マザー・ファンド方式)
ファミリー・ファンド方式(マザー・ファンド方式)とは、複数の投資信託(ベビー・ファンド)の資金を、マザー・ファンドにまとめて運用する方式のことです。受益者(ファンドの購入者)は、ベビー・ファンドを購入し、当該ベビー・ファンドをマザー・ファンドに投資します。このマザー・ファンドを株式・債券などに投資して運用されます。
ファンドに投資するファンドといえば、ファンド・オブ・ファンズもあげられます。ファンド・オブ・ファンズが自社に限らず他社が運用しているファンドにも投資するのに対して、ファミリー・ファンドは、マザー・ファンド、ベビー・ファンドともに、自社で設定・運用される点が大きな違いです。両者は混同しやすいので、相違点を理解しておきましょう。

(解答)(1)解約控除(市場価格調整) (2)90 (3)マザー・ファンド


《問2》の「解答・解説」
目新しいタイプの問題にみえますが、題意に従って、各商品のシャープレシオとポートフォリオの期待収益率をそれぞれ計算すれば解答できます。
シャープレシオは、次のとおりになります。
A:(1.0%-0.5%)÷1.5%=0.333…
B:(4.8%-0.5%)÷10.0%=0.43
C:(8.0%-0.5%)÷18.0%=0.416…

従って、配分はBに10万円(比率0.5)、Cに6万円(比率0.3)、Aに4万円(比率0.2)となります。これを基にポートフォリオの期待収益率を求めると、次のとおりになります。
期待収益率=1.0%×0.2+4.8%×0.5+8.0%×0.3=5.0%

(解答)5.0%


《問3》の「解答・解説」
上記の《問2》と同様に、各商品のインフォメーションレシオを求め、これに基づいて配分比率を決定し、ポートフォリオの分散を算出します。
インフォメーションレシオは、次のとおりです。

A:(1.0%-1.0%)÷0.5%=0.00
B:(4.8%-3.5%)÷5.0%=0.26
C:(8.0%-6.0%)÷12.0%=0.166…

商品の配分は、B商品に12万円(比率0.6)、C商品に8万円(比率0.4)となりますので、ポートフォリオの分散は、次のとおりに計算されます。

分散=0.6×0.6×10×10+0.4×0.4×18×18+2×0.6×0.4×0.1×10×18=96.48

(答)96.48%2

今回の問題は、3タイプの金融商品の特徴とパフォーマンス測定がポイントになっているという点で、2005年9月(第8回)試験の「応用編[第4問]」(メルマガ第70号参照)とよく似た構成の問題でした。過去問を繰り返して練習した方は、比較的スムーズに解答できたと思われます。
実際の試験では、商品の特徴にとどまらず、メリット・デメリットなど様々な角度から出題されますので、応用力を身につけるために、新聞報道やホームページ等のメディアを利用して知識の肉付けをしていきましょう。
《問3》では、うっかり標準偏差を解答してしまったという方はいませんか。逆に、標準偏差を求める時に、平方根をとり忘れたという経験はありませんか。リスクの算出は、計算に気を取られて問題文を見落としがちです。このため、キーワードにマルをつけるなど、ケアレスミスをなくす方法を自分なりに確立しておくとよいでしょう。