企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第112号(2007.7.15)
AB分野:厚生年金基金・退職一時金制度から確定拠出年金への制度移行

厚生年金基金・退職一時金制度から確定拠出年金の企業型年金への移行に関する問題です。移行にあたり、厚生年金基金の給付減額をする場合の要件など、一連の流れを理解しておきましょう。

《問1》の「解答・解説」
厚生年金基金の給付設計の変更が認められるケースについてまとめたものです。厚生年金基金の制度変更は、無条件に認められるものではなく、一定の要件を満たしていなければなりません。特に給付減額という重要な事項は、相当の事由がなければ認められません。
相当の事由として認められるのは、
(1)母体企業の経営悪化
(2)母体企業の退職金規程などの変更に基づいて、給付設計を変更する場合
(3)設立日または直近の給付水準の変更から5年以上経過し、掛金の負担が困難な場合
(4)合併に伴う変更
となっています。(年発第1681号参照)

(答)
(1) ○
(2) ○
(3) × 3年以上ではなく5年以上である
(4) ○


《問2》の「解答・解説」
退職一時金制度から確定拠出年金の企業型に移行する際の留意点をまとめたものです。
退職一時金制度から確定拠出年金の企業型に資産を移換する場合のポイントは、移換資産を、移行日の属する年度から、移行日の属する年度の翌年度から起算して3年度以上7年度以内の企業年金規約で定める年度までの各年度に均等に分割して移換することです。
ただし、移換期間中に加入資格を喪失した者については、未移換分を一括して移換することになっています。(確定拠出年金法施行令第22条1項5号参照)
文章の内容から、「分割」に対しての「一括」であることが分かれば、条文を覚えていなくても、「一括」という語句が導けるのではないでしょうか。
また、このような場合の退職給付会計上の扱いを「退職給付制度の終了」といいます。退職給付制度の終了とは、退職給付制度の再構築を図るにあたり、現在の退職給付制度を廃止する場合や給付額の一部を現時点で支払うことによって当該部分を減額する場合の会計処理のことです。具体的には、終了によって減少する退職給付債務と、それに対応する支払い等の額及び未認識項目を、原則として、特別損益に一時計上することです。
退職給付制度の終了にあたるのは、次のような場合です。

(1)制度の終了(支払い等の有無は問わない)
(2)年金資産からの支給または分配
(3)事業主からの支払いまたは現金拠出額の確定
(4)確定拠出年金制度への資産の移換
問題の事例は、(4)にあたります。「退職給付会計の終了」という概念を理解しておきましょう。

(答)
(1)翌年度
(2)一括
(3)終了


《問3》の「解答・解説」
厚生年金基金制度から確定拠出年金の企業型に移行する際の注意点についてまとめたものです。

(1)厚生年金における給付減額の際は、加入員の3分の2以上の同意と加入員の3分の1以上で組織する労働組合がある場合は、当該労働組合の同意が必要になります(加入員の3分の2以上で組織する労働組合がある場合は、当該労働組合の同意をもって代えることができます)。
給付減額によって、受給者等の変更後の年金額が下回らないことが、原則となっているため、必ずしも全受給者に対する文書または口頭での説明は必要ありません。ただし、受給者等の年金額が減額となる場合には、全受給者に対する給付減額に関する文書または口頭での充分な説明と意思確認を行うことや、全受給者の3分の2以上の同意を得るなどの措置が必要になります。

(2)厚生年金基金から確定拠出年金の企業型に資産を移換する際は、資産の移換に伴い当該厚生年金基金の規約が変更される日の属する月の翌々月の末日以前の企業型年金規約で定める日までに、行わなければなりません(確定拠出年金法施行令第22条2項1号参照)。

(3)加入員となるべき者の資格を定めることは出来ますが、加入員が常に任意に選択出来るわけではありません(厚生年金基金令第41条の4 3項参照)。

(4)確定拠出年金の企業型への資産移換を希望しない者には、移換相当額の支払いを行うことを厚生年金基金で規約に定めれば、移換相当額を一時に支払うことが出来ます(厚生年金基金令第41条の4 5項参照)

(答)
(1) ○
(2) × 減額の属する月の翌々月の末日以前が移換の期限
(3) × 加入員が常に任意に選択できるものではない。
(4) ○