企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第124号(2008.1.15)
A分野:企業年金制度の導入検討

《問1》の「解答・解説」
企業年金等の制度を導入する際の注意事項についての問題です。
甲株式会社が、企業型確定拠出年金、小規模企業共済制度、特定業種退職金共済制度、確定給付企業年金の導入が可能かどうかについて、設例にあげられている業種や従業員数、資本金に基づき、その適否を答えさせるものです。

(1)適切
企業型年金を実施できる企業は、厚生年金の適用事業所です(確定拠出年金法第2条)。設例より甲株式会社とありますので、法人であることが分かります。業種に関係なく従業員が1人以上いれば、厚生年金の適用事業所となりますので、甲株式会社は、企業型年金の導入が可能です。また、確定拠出年金は退職給付会計の対象外であり、退職給付債務が発生しません。

(2)不適切
小規模企業共済制度に加入できるのは、常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主または会社の役員ですから、従業員が加入対象となっていないことに加え、甲株式会社は、従業員数の要件を満たしていません。また、掛金の減額に一定の要件(事業経営の著しい悪化等)が必要となるという記述は正しいものです。

(3)不適切
特定業種退職金共済制度とは、建設業・清酒製造業・林業で期間を定めて雇用される従業員を対象にした退職金制度のことです。従って、甲株式会社は、これらの業種に該当しませんので、特定業種退職金共済には、加入できません。また、特定業種退職金共済制度は、中小企業退職金共済制度と同じ独立行政法人「勤労者退職金共済機構」が行っています。

(4)適切
確定給付企業年金を実施できる企業は、厚生年金の適用事業所です(確定給付企業年金法第3条)。選択肢の(1)と同様に、甲株式会社は、厚生年金適用事業所ですから、確定給付企業年金を導入することができます。また、確定給付企業年金は、退職給付会計の対象となるため、退職給付債務が発生します。

(答)
(1)○
(2)×:甲株式会社は、(加入対象および人数要件において)小規模企業共済制度には加入できない。
(3)×:甲株式会社は、(業種要件において)特定業種退職金共済制度には加入できない
(4)○


《問2》の「解答・解説」
個人型確定拠出年金に関する問題です。

(1)適切
企業の従業員が個人型年金に加入した場合の掛金の納付方法は、給与からの天引きが原則です。個人での払い込みを希望する従業員がいる場合、事業主は、個人払いとせざるを得ない理由を記載した登録申請書を提出することになります。

(2)適切
企業が個人型年金への加入を推奨した場合であっても、加入は個人の意思による任意であり、加入資格がある従業員を全員強制的に加入させることはできません。

(3)不適切
投資教育の責務は、企業型年金の場合は事業主にあります(確定拠出年金法第22条)。ただし、個人型年金の場合は、投資教育の責務は国民年金基金連合会にあり(確定拠出年金法第73条)、事業主には義務は生じません。

(4)不適切
個人型年金の加入者となった場合でも、一定の要件を満たせば(個人型年金規約第132条)、脱退一時金を請求できます。

(答)
(1)○
(2)○
(3)×:会社に対して、従業員に投資教育を受けさせる義務が生じることはない。
(4)×:一定の要件を満たす場合には、脱退一時金の請求は可能である。


《問3》の「解答・解説」
中小企業退職金共済制度では、従業員の全員加入を原則としていますが、例外として加入させなくてもよい場合が定められています。
(1)期間を定めて雇われている者
(2)試みの雇用期間中の者
(3)休職期間中の者
(4)定年などで短期間内に退職することが明らかな者
などです。
これに対して、加入できない者もいます。
加入できない者は、

  • 個人企業の事業主、その配偶者および同一生計の家族従業員(ただし、家族従業員で、その就労の実態が他の従業員と同様であるなど、事業主との間に雇用関係があれば加入できます)。
  • 法人企業の役員(ただし、役員であっても、部長・支店長等、従業員として賃金の支払いを受けている場合は加入できます)。
  • 特定業種退職金共済制度に加入している従業員(企業として、重複加入することはできます)。

この問題では、従業員に関して、加入させなくてもよい者を質問していますから、従業員性のない事業主や役員、もともと加入できない者についてではなく、(1)~(4)にあげている従業員について答えるのが適切です。

(答)
・ 期間を定めて雇われている者
・ 試みの雇用期間中の者
・ 休職期間中の者
・ 定年などで短期間内に退職することが明らかな者
などから2つ