企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第126号(2008.2.15)
A分野:退職給付会計<簡便法>による計算

《問1》の「解答・解説」
簡便法における退職給付債務額の計算方法を問う問題です。
退職給付債務の額は、本来は退職時に見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を一定の割引率および予想される退職時から現在までの期間に基づき割り引いて計算します。しかし、小規模な企業など(原則、従業員数300人未満)の場合は、この計算方法は煩雑で負担が大きい、あるいは計算しても信頼性に乏しいなどの理由で、簡単に計算する別の方法が認められています。この方法を「原則法」に対して「簡便法」といいます。
簡便法による退職給付債務の計算は、いくつかの方法が認められていますが、企業年金制度の場合は、加入者については(自己都合)要支給額、受給者については責任準備金を退職給付債務の額とする方法を採用しているケースが多くみられます。
したがって、A社の2007年3月期の退職給付債務は、加入者については要支給額の60,000万円、受給者については責任準備金の18,000万円を退職給付債務とすることが適切であり、その額は60,000+18,000=78,000万円となります。

(答)
(1) 要支給額
(2) 責任準備金
(3) 78,000(万円)


《問2》の「解答・解説」
簡便法による退職給付引当金額の計算方法を問う問題です。
簡便法では、退職給付引当金=退職給付債務-年金資産-未認識会計基準変更時差異で算出します。
2007年3月期における
退職給付債務=78,000万円(《問1》より)
年金資産=26,000万円
未認識会計基準変更時差異=2,000万円(問題文より)
したがって、退職給付引当金=78,000-26,000-2,000=50,000万円

(答)
退職給付引当金=78,000(退職給付債務)-26,000(年金資産)-2,000(未認識会計基準変更時差異)=50,000

50,000万円


《問3》の「解答・解説」
簡便法における退職給付費用の計算方法を問う問題です。
簡便法では、退職給付費用=期末退職給付引当金-(期首退職給付引当金-当期掛金拠出額-当期退職給付金(退職一時金))
期末退職給付引当金=50,000万円(《問2》より)
期首退職給付引当金=退職給付債務-年金資産-未認識会計基準変更時差異=(50,000+20,000)-25,000-(2,000+(2,000÷5))=42,600万円
当期掛金拠出額=3,000万円
当期退職給付金(退職一時金)=0(設例より、「支給対象者は定年退職者のみで、退職金の100%が適格退職年金から支払われる」とある)
したがって、2007年3月期の退職給付費用=50,000-(42,600-3,000)=10,400万円

(答)
A社の期首退職給付引当金=70,000(退職給付債務)-25,000(年金資産)-(2,000+(2,000÷5)(未認識債務))=42,600万円
A社の退職給付費用=50,000(期末退職給付引当金)-(42,600(期首退職給付引当金)-3,000(掛金))=10,400万円

10,400万円