企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第132号(2008.5.15)
C分野:投資に関する知識・ポートフォリオのリスク計算
今回は、投資に関する知識の中から、自社株投資信託の特徴と投資信託の類型について、
ポートフォリオ理論におけるポートフォリオの選好に関する問題を取り上げます。内容的にはオーソドックスですが、問3は3資産のポートフォリオリスクを求めるため、てこずった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
《問1》の「解答・解説」
投資信託に関する知識を問う問題です。自社株投資信託が比較的目新しいですが、記述のとおり、一般の投資信託と異なり銘柄分散によるリスク低減効果が現れないといった特徴が挙げられます。
自社株投資信託は、投資信託であり、一般の他の投資信託と同様に少額の資金による毎月の定額購入が可能で、その仕組みも基本的には同じであるが、一般の投資信託とは異なり、( (1)分散 )投資によるリスク低減の効果はない。追加型株式投資信託の、追加型とは、当初設定日以降も資金の追加ができるもので、( (2)オープン )型ともいう。また、インデックス型とは、ある特定の証券株価指数の収益率に連動することを目標に運用を行うもので、( (3)パッシブ )型ともいう。
(答) (1)分散 (2)オープン (3)パッシブ
《問2》の「解答・解説」
利率保証型積立傷害保険の中途解約と契約者保護制度に関する問題です。中途解約時の取扱いについては、利率保証型積立生命保険タイプと同様と考えてよいでしょう。
利率保証型積立傷害保険商品を解約(中途解約)し、他商品での運用を図る(スイッチングする)場合、積立金の一部が控除されるが、控除に際しては、利率保証型積立生命保険商品と同様に( (1)時価 or 市場価格 )調整が行われる場合と、元本を下限として一定の控除が行われる場合との2方式がある。また、利率保証型積立傷害保険商品に関する損害保険会社の破綻に対して実施される、( (2)損害保険契約者保護 )機構による補償には、具体的な上限金額は設けられていない。
(答) (1) 時価(または、市場価格) (2) 損害保険契約者保護
《問3》の「解答・解説」
各ポートフォリオのリターンおよびリスクを算出し、リスク回避型である投資家が選好するであろうポートフォリオを選びます。
ポートフォリオ・およびポートフォリオYの期待リターンを求めると次のようになります。
ポートフォリオX:0.5×8+0.1×3+0.4×3=5.5%
ポートフォリオY:0.5×8+0.4×3+0.1×3=5.5%
X、Yとも期待リターンは同じということになります。
次に、ポートフォリオのリスクを求めます。なお、甲さんが選択するポートフォリオがわかればよいので、標準偏差にするまでもなく、分散で大小比較すれば足りるでしょう。金財の模範解答では一般式に値を代入して解答しています。本解説では、下記のようにマトリクスを作成して算出する方法を紹介します。
(マトリクスの作成方法)
たとえば商品Aと商品Bの組み合わせの場合、下記のとおり計算します。
Aの配分比率×Bの配分比率×Aのリスク×Bのリスク×AとBの相関係数
同様に、商品Aと商品C、商品Bと商品A、・・・というように計算します。同じ商品(商品Aと商品A等)の組み合わせの場合、当然ながら相関係数は1とします。算出された結果を3行×3列のマトリクスに落とし込みます。ポートフォリオXについてマトリクスを作成すると下記のとおりになります。
A B C
A 0.5×0.5×5×5×1 0.5×0.1×5×2×-0.8 0.5×0.4×5×2×0.4
B 0.1×0.5×2×5×-0.8 0.1×0.1×2×2×1 0.1×0.4×2×2×-0.1
C 0.4×0.5×2×5×0.4 0.4×0.1×2×2×-0.1 0.4×0.4×2×2×1
各行列ごとに計算した結果をまとめると下記のとおりになります。
A B C
A 6.25 -0.4 0.8
B -0.4 0.04 -0.016
C 0.8 -0.016 0.64
出来上がった9つの升すべてを合算したものが、解答すべきポートフォリオのリスクです。
ポートフォリオXの分散
=6.25+(-0.4)+0.8+(-0.4)+0.04+(-0.016)+0.8+(-0.016)+0.64
=7.698
ポートフォリオY:
同様に、ポートフォリオYの分散を求めると次の結果になります(各自計算してみて下さい)。
ポートフォリオYの分散=4.098
したがって,期待リターンが同じでかつ,甲さんはリスク回避型ですので,リスクの小さなポートフォリオYを選択することになります。
(答) ポートフォリオYを選択する
さて、いかがだったでしょうか。3資産のポートフォリオリスクを求める問題は、第4回(2003年9月実施)以来の出題でした。解説で示したマトリクスを使う方法は、規則的なルーチンで算出できますので、一般式を忘れてしまった場合でも、現場で対応しやすい方法といえます。一般式でも、マトリクスでも、自分に合った方法をマスターして、ぜひ得点源にして下さい。