企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン 第138号(2008.8.15)
C分野:ポートフォリオリターンの計算
D分野:高齢者雇用と社会保険
今回は、上記のテーマから基礎編の問題を2問取り上げます。ポートフォリオリターンの計算は一見ボリュームの多そうな問題ですが、落ち着いて題意を読み取れば基本的なものとすぐわかります。高齢者雇用と社会保険については、D分野の大きなテーマとしてリタイアメントプランニングを謳っている以上、必須の知識です。これを機会に基礎的な知識の習得をしていただきたいと思い、今回取り上げました。
《問1》の「解答・解説」
5資産から構成されているファンドについて、与えられた期待リターンを達成できる組み合わせを求める問題です。5資産ということで、一瞬たじろいでしまいそうになりますが、まずは落ち着いて問題を検討して下さい。期待リターンは加重平均すれば求められるわけですから、地道に計算すれば解答にたどり着くはずです。実際に計算してみると、次のとおりになります。
1)資産A50%、資産B10%、資産C10%、資産D10%、資産E20%の場合
0.5×8%+0.1×5%+0.1×5%+0.1×3%+0.2×1%=5.5%
2)資産A40%、資産B10%、資産C10%、資産D10%、資産E30%の場合
0.4×8%+0.1×5%+0.1×5%+0.1×3%+0.3×1%=4.8%
3)資産A40%、資産B30%、資産C10%、資産D10%、資産E10%の場合
0.4×8%+0.3×5%+0.1×5%+0.1×3%+0.1×1%=5.6%
4)資産A30%、資産B20%、資産C10%、資産D10%、資産E30%の場合
0.3×8%+0.2×5%+0.1×5%+0.1×3%+0.3×1%=4.5%
したがって、正解は4)とわかります。
ちなみに、1)は、資産A(0.5×8%)と資産B(0.1×5%)を足した時点で4.5%とわかるので、比較的すぐに1)は正解ではないとわかります。3)ですが、2)との違いは、より個別リターンの大きい資産Bにウェイトがかかっている点です。ですから明らかに2)で求めた4.8%より大きいだろうと推測できます。
(答) 4)
《問2》の「解答・解説」
1)適切
厚生年金保険と同様、健康保険についても退職・死亡等の事由が発生したときは、その翌日に資格を喪失することになります。さらに、退職により健康保険被保険者資格を喪失したときは、記述のとおり、一定の条件のもとに個人の希望により被保険者として2年間継続加入することができます。これにより加入した被保険者を任意継続被保険者といいます。なお、企業年金総合プランナー(DCプランナー)試験対策上としては、下記を最低限押さえておくべきでしょう。
・退職後の健康保険については、任意継続制度を選択できること。
・下記のとおり一定の条件があること。
a.被保険者でなくなった日までに、継続して2カ月以上の被保険者期間があること。
(これまで健康保険に2カ月以上加入していたこと)
b.原則として、被保険者資格喪失から20日以内に届け出ること。
2)適切
健康保険保険料の徴収や、保険給付を行う者を「保険者」といいます。健康保険組合は、その組合員である被保険者の健康保険を管掌しています。政府は健康保険組合員以外の被保険者の健康保険を管掌しています。みなさんが日頃使い慣れている「被保険者」の対極にある概念ということで、特に問題はなかったでしょう。
3)適切
急速な高齢化の進行等に対応し、高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、事業主は、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならないこととする改正高年齢者雇用安定法が平成16年に成立しました。継続雇用制度については、定年に達したことにより一旦雇用契約を終了したうえで再雇用する、定年に達したものを退職させることなく引き続き勤務延長という形で雇用する等、様々なパターンがあります。
さて、問題の継続雇用後の労働条件についてですが、高年齢者の安定した雇用を確保するという改正高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができるものとされています(改正高年齢者雇用安定法Q&A)。
4)不適切
高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」があります。試験対策上、この2点の概要は知っておく必要があります(紙幅の都合上、高年齢再就職給付金については割愛)。本問は、高年齢雇用継続基本給付金の支給制度について問われています。名前から想像できる通り、失業給付を受けないで雇用を継続する者を援助する趣旨の制度です。本制度給付金を受けられる条件は、原則として次のとおりです。
・60歳以上65歳未満の一般被保険者
・雇用保険被保険者であった期間が5年以上
・原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける。
本選択肢では、上記「75%未満」が、「61%未満」となっているため、不適切であると判定できます。
ちなみに、「61%」という数値は、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合、高年齢雇用継続給付の支給額が各月の賃金の15%相当額となる、という論点で登場します。
企業年金総合プランナー(DCプランナー)試験対策としては、高年齢雇用継続基本給付金と老齢厚生年金との支給調整についても注意が必要です(2007年3月試験で出題あり)。
(答) 4)
さて、いかがだったでしょうか。試験が年1回開催と変わり、ある程度準備時間を取れた方もいらっしゃると思いますが、モチベーションを持続させるのも大変だったと思います。様々なプレッシャーに打ち克ってきた皆さんのことですから、自信を持って試験に臨んでください。