企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第150号(2009.2.15)
B分野:確定拠出年金の導入にあたっての留意点
今回は、上記のテーマから基礎編の問題を2問取り上げます。ポートフォリオリターンの計算は一見ボリュームの多そうな問題ですが、落ち着いて題意を読み取れば基本的なものとすぐわかります。高齢者雇用と社会保険については、D分野の大きなテーマとしてリタイアメントプランニングを謳っている以上、必須の知識です。これを機会に基礎的な知識の習得をしていただきたいと思い、今回取り上げました。
《問1》の「解答・解説」
確定拠出年金の規約に関する問題です。確定拠出年金法における規約作成の要件だけでなく労働基準法上の就業規則の作成要件に関する知識も求められています。
(1)不適切
人数要件が正しくありません。就業規則の作成は、労働基準法第89条第1項で定められており、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることになっています。
(2)不適切
就業規則を作成又は変更する際は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません(労働基準法第90条)。パートタイム労働者用の就業規則など一部の従業員に適用される場合であっても、労働基準法に定める就業規則として扱い、意見聴取の要件も変わりません。したがって、パートタイム労働者の過半数代表者の意見ではなく、全従業員の過半数過半数代表者(もしくは全従業員の過半数で組織する労働組合)に意見を聴かなければなりません。
なお、パートタイム労働法では、パートタイム用の就業規則を作成する際に、パートタイム労働者の過半数代表者の意見を聴くようにするという努力義務が規定されていますが(パートタイム労働法第7条)、これは、労働基準法で定められている要件にさらにプラスして、努力義務が課せられているということです。
(3)適切
確定拠出年金を導入するためには、規約の内容について、厚生年金保険被保険者の過半数で組織する労働組合、または厚生年金保険被保険者の過半数を代表する者の同意を得なければなりません(確定拠出年金法第3条)。またその内容は、就業規則の相対的必要記載事項にあたります((4)・の解説参照)。したがって労働基準法では、就業規則の変更には同意までは求められておらず、意見聴取となっていても、確定拠出年金法に基づき、導入に際して規約の同意が必要となります。
(4)適切
退職手当の定めをする場合における、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項は、就業規則の相対的記載事項にあたります(労働基準法第89条)。ここでいう退職手当とは、退職一時金や各種企業年金など、退職したときや老齢によって支給されるものを指し、確定拠出年金の企業型も就業規則に定めなければばらない退職手当にあたります。
《解答例》
(1)×:常時7人ではなく、常時10人以上である。
(2)×:全従業員の過半数代表者等からの意見を聴く必要がある。
(3)○
(4)○
《問2》の「解答・解説」
確定拠出年金の掛金の設定方法に関する問題です。甲株式会社が確定拠出年金を導入する場合の、一月あたりの掛金の限度額がいくらになるのかを見極めることがポイントとなります。
設例から甲株式会社は他に企業年金を実施していないことが分かりますので、掛金の限度額を一月あたり46,000円となります。
Aの掛金は、設例および問題文より、基本給・役職手当・技能手当のすべての合計額の12%か46,000円のいずれか低いほうです。
したがって(380,000+10,000+5,000)×12%=47400円>46,000円となりますので、
Aの掛金額の月額は46,000円となります。
注:なお確定拠出年金の掛金限度額は、2009年度税制改革において、引き上げが検討されています。
《解答例》
甲株式会社の掛金(月額)の上限は46,000円である。
Aの給与の12%=(380,000+10,000+5,000)×12%=47400円>46,000円
したがってAの掛金額の月額は46,000円である
46,000円
《問3》の「解答・解説」
労働基準法で定められている相対的記載事項についての問題です。相対的記載事項とは、定めをする場合は就業規則に記載しなければならない事項のことで、退職手当や臨時に賃金、表彰・制裁についてなど8つがあります。退職手当の定めをする場合に規定しなければならないことは、以下のようになります。
《解答例》
・ 適用される労働者の範囲
・ 退職手当の決定(勤続年数や退職事由などの退職手当額の決定のための要素や算定方法を示すこと)
・ 計算および支払の方法ならびに退職手当の支払の時期に関する事項
などからひとつ