企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第176号(2010.3.15)
A分野:退職給付会計

退職給付会計についての問題です。退職給付会計の仕組みや各項目の算出方法などをマスターしておいてください。また、簡便法を採用している場合の会計処理についても、理解しておきましょう。

《問1》の「解答・解説」
退職給付会計では、退職給付債務から年金資産を控除し、未認識項目を加減算した金額を退職給付引当金として、貸借対照表の負債の部に計上しますが、当該金額がマイナスになることがあります。これは、年金資産が、退職給付債務から未認識項目を加減算した額を超過していることを示しています。このような場合は、当該超過額を退職給付債務から控除する処理は行わず、前払年金費用として、貸借対照表の資産の部に計上します。
したがって、設例の場合
2008年3月期:退職給付債務-年金資産-未認識退職給付債務=200-180-50=-30
マイナスなので、前払年金費用30(百万円)となる。
2009年3月期:退職給付債務-年金資産-未認識退職給付債務=230-200-40=-10
マイナスなので、前払年金費用10(百万円)となる

《解答》
(1)30
(2)10


《問2》の「解答・解説」
退職給付会計には、原則法と簡便法があり、簡便法では、原則法に比べて退職給付債務の計算方法などを簡易な方法で計算することが認められています。簡便法が認められるのは、従業員数300人未満の会社、従業員の年齢構成や勤務期間に偏りがあり高い信頼性で数理計算上の見積もりを行うことが困難な会社、原則法の採用が相当な事務負担となる会社などです。
簡便法を採用すると、退職給付債務を直近の年金財政計算上の責任準備金とするなど、簡便な会計処理をすることができますが、その一方で、原則法で認められている過去勤務債務や数理計算上の差異の遅延処理はできませんので注意が必要です。たとえば、制度変更や運用差損などによる差異がは生じた場合は、その全額を当期の費用として即時認識しなければなりません。ただし、会計基準変更時差異に関しては、遅延認識が認められています。

《解答》
(1)会計基準変更時
(2)過去勤務債務


《問3》の「解答・解説」
設例によって、中退共が外枠であることが分かりますので、適格退職年金部分と中退共部分に分けて退職給付費用の計算をします。
・適格退職年金部分の退職給付費用
適格退職年金部分の退職給付費用は、簡便法による退職給付費用の計算方法で計算します。
退職給付費用=期末退職給付引当金-{期首退職給付引当金-(当期会社支払退職給付+当期掛金拠出額)}
設例および《問1》の解答の数値を当てはめると、
期末退職給付引当金=-(2009年3月期前払年金費用)=-10(百万円)
期首退職給付引当金=-(2008年3月期前払年金費用)=-30(百万円)
当期退職給付金=0
当期掛金拠出額=適格退職年金掛金=20(百万円)
したがって、退職給付費用=-10-{-30-(0+20)}=-10-(-50))=40(百万円)
・ 中退共部分の退職給付費用=要拠出額=10(百万円)
・A社の2009年3月期の退職給付費用=40+10=50(百万円)

《解答例》
適格退職年金部分の退職給付費用
=期末退職給付引当金-{期首退職給付引当金-(会社支払退職給付+掛金)}
=-10-{-30-(0+20)}=40(百万円)
中退共部分の退職給付費用=要拠出額=10(百万円)
したがって、退職給付費用=40+10=50(百万円)

50(百万円)