企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第186号(2010.8.15)
D分野:自営業者のリタイアメント・プランニング
今回は,自営業者のリタイアメント・プランニングに関する問題を取り上げます。リタイアメント・プランニングに関する問題は,本問のように他の分野との横断問題が主流になってきています。ポイントは下記の通りです。
(1)国民年金基金に関する知識,及びそのメリット
(2)係数を利用した計算
(3)遺族基礎年金の支給に関するアドバイス
《問1》の「解答・解説」
自営業者のリタイアメント・プランニングにおいては,国民年金基金と個人型年金の比較検討がよくテーマとなります。さらに,国民年金基金は,平成21年4月に商品設計が見直されました。今回の商品設計見直しのトピックとしては以下の点が挙げられます。
(1)1口目の年金額・掛金額を引き下げ
掛金の小口化により,新規加入者(とりわけ若年層)に加入しやすい仕組みを設けています。
(2)10年確定年金(Ⅳ型)と,5年確定年金(Ⅴ型)を新設
加入員の選択肢を広げることで,老後のライフプランにより幅広く対応する趣旨です。
《問1》は,今回の改正を直接問う問題ではありませんが,Ⅳ型・Ⅴ型については基礎編では早速出題されています。本問の穴埋め自体は,オーソドックスな論点でしたので,特に問題ないでしょう。
国民年金基金への加入は口数制で,年金額や給付の型は加入者が選択できます。1口目は終身年金(A型,B型)で,必ず加入する必要がありますが,2口目以降は,終身年金(A型,B型)と確定年金(Ⅰ型~Ⅴ型)を選択できます。掛金の上限は,原則として月額((1)68,000 )円で,全額が所得控除の1つである((2)社会保険料 )控除の対象となります。また,4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると,((3)0.1 )カ月分の掛金が割引されるという特典があります。
《解答》
(1)68,000 (2) 社会保険料 (2) 0.1
《問2》の「解答・解説」
掛金を拠出する年金原資形成期(40歳~60歳),据置期(60歳~65歳),取崩期(65歳~80歳)に分けて考え,取崩期の毎年受取額を求める問題です。
<年金原資形成期(40歳~60歳)>
毎月の拠出額は5万円ですので,年間の拠出額は60万円となります。60歳時点の元利合計は,「2%,20年の年金終価係数」を使って,次のとおりになります。
600,000円×24.7833=1,486.988万円 → 1,487万円(1万円未満を四捨五入)
<据置期(60歳~65歳)>
上の金額を65歳まで5年間据え置くことになりますので,「2%,5年の終価 係数」を使って,65歳時点の元利合計額を求めると次のとおりになります。
1,487万円×1.1041=1,641.7944918万円 →1,642万円(1万円未満を四捨五入)
<取崩期(65歳~80歳)>
この金額を15年間にわたり一定額で取り崩すことになりますので,「2%,15年の年金現価係数」を使って,毎年の受取額を求めると次のとおりになります。
1,642万円÷13.1062=125.268… → 125万円(1万円未満を四捨五入)
したがって,毎年の受取額は125万円となります。
《解答》
125万円
《問3》の「解答・解説」
「遺族基礎年金を受けることができる子の要件」は,「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり,かつ,現に婚姻をしていないこと」です(国民年金法第37条の2)。
設例より,Aさん夫婦の子はC:12歳とD:8歳であり,ともに遺族基礎年金の支給終了日まで婚姻や障害者認定・死亡などの事態は生じないということなので,子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるまでは,遺族基礎年金を受けることができる,ということになります。本問では,Dが最も遅く18歳に到達します。
したがって,Dが18歳に到達する日以後の3月31日(Dの18歳到達時年度の末日)までといった趣旨の解答することになります。
《解答》
Dが18歳に到達時年度の末日(3月31)日まで
いかがでしたでしょうか。冒頭に述べたとおり,応用編におけるリタイアメント・プランニングの問題は,他の分野の知識を総動員して解答するパターンの問題が最近の傾向です。インプットした知識を,事例にあてはめて,簡潔に解答できるか?が問われているものと思われます。
また,今回のように,設例にヒントが隠されている場合も結構あります。答案をなかなか埋められないときは,一呼吸おいて,問題文全体を眺めてみるのも手です。