企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第214号(2011.10.15)
C分野:投資理論とパフォーマンス評価
今回取り上げた問題は,現代ポートフォリオ理論の中でも重要な効率的フロンティア,効用関数などの考え方,特にアクティブ運用におけるパフォーマンス評価について出題されています。専門的な知識が要求されるものもありましたが,基本的なところは確実におさえられたかどうかがポイントになるでしょう。
アセット・アロケーションの決定にあたっては,まず((1)効率的フロンティア)を求める。複数のアセットクラスを組み合わせてポートフォリオを作ることにより,さまざまなリスクとリターンの組合せが得られる。これらをリスクとリターンの平面上にプロットし,このうち,同じリターンであれば最もリスクの低いもの,同じリスクであれば最もリターンが高いものを選択すると,可能な組合せのいちばん外側に,((1)効率的フロンティア)が描かれる。
次に,投資家の選好を,効用関数によって表現する。投資理論においては,同じリターンであれば,よりリスクの低い組合せを選好するという,((2)リスク回避)的な投資家を想定している。このような((2)リスク回避)的な投資家の選好を表現する方法として,一般的には「平均-分散法」という方法が用いられ,投資家の効用が((3)効用曲線)という形で表現される。
最後に,((1)効率的フロンティア)上で投資家にとって最大の効用をもたらす点が,最終的なポートフォリオとして選択される。このプロセスは最適化と呼ばれ,グラフ上で((1)効率的フロンティア)と((3)効用曲線)の接点を求めるという形で行われる。
投資家は,資産の組合せと組入れ比率を変えることによって,さまざまなポートフォリオを構築することができます。リスク回避的な投資家を前提にするならば,その投資家は,同じリターンであれば最もリスクの低い,又は同じリスクであれば最もリターンが高いポートフォリオを選択します。こうして選択されたポートフォリオの集合を効率的フロンティア(有効フロンティア)と呼びます。効率的フロンティアは,一般的に,「上に凸」「右上がり」の曲線を描くことが知られています。こうした曲線の形状については基礎編でもよく出題されますので,憶えておいて下さい。
効率的フロンティアはリスク回避的な投資家が選択できるメニューの一覧のようなものです。このメニューからどれを選ぶかは,投資家個々の好みで決まります。その好みを数式化したものが効用関数です。効用関数をリスクとリターンの平面上にプロットして得られる曲線を,「効用曲線」(無差別曲線)と呼びます。個々の投資家は,最も望ましいポートフォリオを,効用曲線と効率的フロンティアの接点に見出します。この接点を「最適ポートフォリオ」と呼びます。
《解答》(1)効率的フロンティア(有効フロンティア)
(2)リスク回避的 (3)効用曲線(無差別曲線)
商品Aは,元本確保型商品であるが,中途解約するときの取扱いに注意が必要である。中途解約の目的が,他商品の運用に切り替える(スイッチングする)ためであるときは,所定の((1)解約控除)が適用され,場合によっては,払戻金額が払込保険料を下回る可能性もある。
商品Bは,国内株式を投資対象とする株式投資信託であるが,株式に投資する運用の種類として,パッシブ運用とアクティブ運用がある。アクティブ運用については,投資手法の違いに留意する必要がある。たとえば,グロース型運用と((2)バリュー)型運用という分類があり,どちらの手法であるかによってパフォーマンスが上がりやすい相場局面も違ってくることになる。
商品Cは,外国債券を投資対象とする株式投資信託であるが,外国債券を投資対象とする場合,外国債券そのもののリスクに加えて,為替レート変動によるリスクがあることに注意が必要である。為替レート変動による影響はかなり大きいことから,為替レート変動リスクの((3)ヘッジ)を行うことができるのかどうか,行うことができる場合はどのような仕組みなのか等の確認が必要である。たとえば,((3)ヘッジ)を行う場合の手法として,定率((3)ヘッジ),アクティブ((3)ヘッジ)などがあり,その内容によって収益率が異なってくることになる。
商品Aの利率保証型積立生命保険(GIC)の中途解約は頻出論点です。GICをスイッチングなどの理由で中途解約する場合は,運用対象商品の市場価格によって解約控除(市場価格調整)が適用される場合があります。なお,離転職に伴う資産移換にあたっては,解約控除は適用されないのが通常です。コンサルティングの現場においても,解約控除については特に注意喚起を促していきたい点です。
商品Bは,グロース運用とバリュー運用についてです。アクティブ運用の運用スタイルの違いによる区分であり,今後成長が期待できる銘柄への投資をグロース運用,株価が本来の企業価値より割安に評価されている銘柄への投資をバリュー運用といいます。
商品Cでは,為替変動リスクのヘッジについて問われています。穴埋めとしては難しく感じたかもしれません。
為替ヘッジとは,外貨建資産の為替変動による損失の可能性を減殺することを目的として行う取引です。具体的には,為替予約や先物取引といった,いわゆるデリバティブ取引が挙げられます。一定率の為替ヘッジ率,例えば,ノーヘッジ(0%),50%ヘッジ,フルヘッジ(100%)などで運用する定率ヘッジと,為替オーバーレイ(外貨建資産の為替部分を一般の資産と分別し,為替専門のマネージャーによる運用を行う手法)などを用いてヘッジ比率を機動的に変化させるアクティブヘッジなどが代表的な手法です。
《解答》(1)解約控除(市場価格調整) (2)バリュー (3)ヘッジ
(1)アクティブ運用についての定量的なパフォーマンス評価指標として適切な指標は,
「インフォメーション・レシオ」です。
(2)インフォメーション・レシオは次の式により求められます。
インフォメーション・レシオ
=(トータル・リターン - ベンチマーク・リターン)÷トラッキング・エラー
商品B及びCのインフォメーション・レシオを求めると次の通りになります。
商品B:(5.8% - 5.6%)÷1.2%=0.166… → 0.17
(小数点以下第2位未満を四捨五入)
商品C:(7.7% - 7.4%)÷2.6%=0.115… → 0.12
(小数点以下第2位未満を四捨五入)
(3)インフォメーション・レシオの高い方,
すなわち商品Bの方がパフォーマンスが優れていると判断します。
《解答》(1)インフォメーション・レシオ(2)商品B 0.17 商品C 0.12 (3)商品B
応用編でC分野の問題が出される場合,今回のように金融商品に関する知識を問う問題も少なからず出題されています。さらに,かなり専門的な(知らないと解答できない)内容が問われることもあります。
問題を解く途上で,あるいは日常の仕事等を通じて,初めて聞く金融商品用語に出会った場合,ホームページ等を活用して調べてみることから始めましょう。ちょっとした探究心と、ちょっとした努力の積み重ねで点が伸びてくるものです。