企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第228号(2012.5.15)
AB分野:退職給付会計・確定拠出年金

退職一時金制度から確定拠出年金の企業型年金への移行に関する問題です。資産の移換や退職給付会計上の処理についてマスターしておきましょう。

《問1》の「解答・解説」

企業型年金に過去勤務期間に係る資産を移換できる退職給付制度には、厚生年金基金(加算部分)、確定給付企業年金、退職一時金があります(適格退職年金からの移行は、2012年3月末の制度廃止とともに終了しました)。

退職一時金制度から企業型年金に移行する場合の、過去勤務期間に係る資産については、退職給与規定の改正または廃止が行われた日(移行日)の属する年度から、当該年度の翌年度から起算して( 3 )年度以上( 7 )年度以内の企業型年金規約で定める年度までの各年度に( 均等 )に分割して、移換することになっています。

《解答》 ( a ) 3  ( b ) 7  ( c ) 均等


《問2》の「解答・解説」

企業型年金への資産の移換は、退職給付制度の終了に該当します。そのため、原則は、終了の会計処理として、退職給付制度の終了によって減少する退職給付債務と減少相当分の移換額および未認識項目(未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異の未処理額のうち、退職給付債務の比率等合理的な基準により把握されたもの)を特別損益として一時処理する必要があります。
ただし、退職一時金制度から企業型年金に全部または一部移行する場合は、退職一時金制度の終了した部分に係る( 会計基準変更時差異 )については、当面の間、残存の費用処理年数又は分割拠出年数のいずれか短い年数で定額法により費用処理することができます。

なお、終了した部分に係る( 退職給付債務 )が移換額を超過する場合は、超過分相当額と終了した部分に係る( 会計基準変更時差異 )の未処理額を相殺し、残額について費用処理を行います。

これは、退職給付債務と移換額の差額を一時利益として処理する一方で、移行部分に係る会計基準変更時差異の繰延処理を認めることは、経過措置を設けた趣旨を逸脱するとの考えからです。

《解答》 ( a )会計基準変更時差異 ( b )退職給付債務


《問3》の「解答・解説」

問題文より、《問2》の経過措置を適用しない終了の会計処理により計算することになります。
設例の場合、退職一時金制度の全部を企業型年金に移行することから

・退職給付制度の終了によって減少する退職給付債務=100百万円
移行時点の自己都合要支給額を支払うことから

・減少相当分の支払い=自己都合要支給額=80百万円
会計基準変更時差異以外の未認識債務がないことから

・未認識債務=8百万円
となります。したがって、
100百万円-80百万円-8百万円=12百万円

《解答例》
特別損益=退職給付債務-自己都合要支給額-会計基準変更時差異
=100百万円-80百万円-8百万円=12百万円(特別利益)

12百万円