企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第242号(2012.12.15)
C分野:共分散と相関係数
D分野:退職後の健康保険
今回は,C分野から相関係数に関する計算問題,D分野から退職後の健康保険に関する問題を取り上げます。
相関係数を求める問題です。計算量も多く,答が割り切れない値ということもあって,今回初受験の方には 「難問」の部類だったかもしれません。なお,2009年10月(第14回)試験にも同様の問題が出ています。
相関係数を求める式は,次のとおりです。
AとBの相関係数 | = | AとBの共分散 |
Aの標準偏差×Bの標準偏差 |
相関係数を出すためには,まず共分散を求める必要があります。共分散を求める式は,次のとおりです。
AとBの共分散 =
{(Aの実績リターン-Aの期待リターン)×(Bの実績リターン-Bの期待リターン)}の合計 |
観察期間 |
では,上の式に数値をあてはめていきましょう。まずは共分散の分子,つまり
{(Aの実績リターン-Aの期待リターン)×(Bの実績リターン-Bの期待リターン)}
の合計の部分を計算します。表形式で示すと次のとおりになります。
期 間 | 国内株式(A)の 実績リターン-期待リターン |
国内事業債(B)の 実績リターン-期待リターン |
(A)×(B) |
Ⅰ | 10%-3%=7% | 20%-11%=9% | 63 |
Ⅱ | -10%-3%=-13% | 5%-11%=-6% | 78 |
Ⅲ | 8%-3%=5% | 4%-11%=-7% | -35 |
Ⅳ | 4%-3%=1% | 15%-11%=4% | 4 |
合 計 | 110 |
従って,共分散=110÷4年=27.5となります。
続いて分母を計算すると,次のとおりになります。表に与えられた分散は,小数で表示されていますので,そのまま使わないで,共分散の便宜的単位である「パーセントの2乗」で表示します(つまり100×100倍する必要があります)。
国内株式の標準偏差×国内事業債の標準偏差
={(0.0061×100×100)の平方根}×{(0.00455×100×100)の平方根}
= 2,775.5の平方根
= 52.68…
よって,相関係数は次のとおりになります。
相関係数=27.5÷52.68…=0.52… 従って,最も近い値は,1)0.52になります。
<答> 1)
《問2》の「解答・解説」
退職後の健康保険に関する問題です。退職後の立場によって,大きく次の3パターンに分類できます。
(1)健康保険の任意継続被保険者に加入する。
(2)健康保険被保険者の被扶養者になる。
(3)国民健康保険に加入する。
1)適切:任意継続被保険者になるパターンです。任意継続被保険者となるための要件は,「資格喪失日の前日までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること」,「資格喪失から20日以内に申請すること」です。申請については,自宅住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で行います。
2)適切:家族が加入している健康保険の被扶養者になるパターンです。被保険者の収入によって生活している家族の方は,被扶養者として健康保険の給付を受けることができます。被扶養者となるためには,問題の文章に記述されているとおり、所定の認定基準を満たす必要があります。なお,当該「被扶養者」は、所得税法上の「扶養親族」とは区別して考えるようにしてください。後期高齢者医療制度開始に伴い,このパターンはよく見受けられます(75歳の夫が後期高齢者医療制度に移るため、71歳の妻が息子の被扶養者になる等)。
3)不適切:国民健康保険に加入するパターンです。この場合,退職日の翌日から14日以内に住所地の市町村役場に届け出なければなりません。
4)適切:健康保険加入者に係る医療費の自己負担割合に関する問題です。問題文は,国民健康保険の場合が問われていますが,健康保険制度共通です。医療費の自己負担割合は,下記の表のとおりです。なお,70歳以上の健康保険被保険者については,療養の給付に係る自己負担割合は,平成24年4月より「2割」になるところ,法令上の凍結期間延長に伴い,平成25年3月31日までは原則として1割に軽減されることとなりました。
なお、問題文2行目中ほどに記載されている日付は,本試験では「平成24年3月31日までは原則として1割に軽減されているが,」となっていましたが,学習の都合上,上記の理由により変えて出題しています。
年齢 | 負担割合 |
70歳未満 | 3割(ただし,3歳未満は2割) |
70歳以上75歳未満 | 1割(平成25年3月31日までの特例) |
75歳以上(一般) | 1割(平成25年3月31日までの特例) |
75歳以上(現役並み所得者) | 3割 |
<答> 3)
試験まであと1ヵ月といったところですね。新しい知識の詰め込みより,忘れていることがないかのチェックに時間をかけてください。例えば,C分野で言えば,ポートフォリオのリスクの式は書けますか?シャープ・レシオは?などです。それでは,健闘を祈っております。