企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第254号(2013.6.15)
AB分野:退職給付会計・確定拠出年金

退職一時金制度から確定拠出年金の企業型年金への移行に関する問題です。資産の移換や会計処理について理解しておきましょう。

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《問1》の「解答・解説」

退職一時金から確定拠出年金へ移換できる資産は、従業員ごとに、移行日前後の自己都合要支給額の差額の範囲内となります。この移換額を、移行日の属する年度から、当該年度の翌年度から起算して3年度以上7年度以内の企業型年金規約で定める年度までの、各年度に均等に分割して移換します。

また、資産の移換を受ける年度までの期間に応じた利息相当額を計算するための上限利率は、確定給付企業年金の予定利率の下限と定められています。

なお、資産の移換に伴う会計上の処理は一時に行いますが、税務上は、実際に拠出を行った事業年度に、拠出額を損金として処理します。

《解答例》

①×: 移換資産の総額が移行日前後の自己都合要支給額の差額以下であっても、個々の従業員の移換資産額は、それぞれの移行日前後の自己都合要支給額の差額を超過してはならない

②×: 移換資産は、移行日の属する年度から、当該年度の翌年度から起算して3年度以上7年度以内の企業型年金規約で定める年度までの各年度に均等に分割して移換する(移行日の属する年度から起算した場合、4年度以上8年度以内の期間となる。)

③×: 資産移換を伴う企業型年金への移行により発生する会計上の特別利益は、移行日に一括認識されるが、税務上は、実際に拠出(移換)を行った事業年度において、拠出(移換)額が損金となる。

④×: 移換資産に付利する利息相当額を計算するための上限利率は、確定給付企業年金の下限予定利率と定められている。

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《問2》の「解答・解説」

退職一時金規程を減額改訂し、過去勤務期間も含めて確定拠出年金の企業型年金に移行する場合、過去勤務期間に相当する資産の移換が発生するため、退職給付制度の終了に該当します。

退職給付制度の終了に該当する場合、終了の会計処理が必要となります。これは、終了によって減少する退職給付債務、それに対応する支払い等の額(確定拠出年金制度への移換資産の額)及び未認識債務を、原則として、特別損益に純額で一時計上することです。

一方、将来分のみを確定拠出年金の企業型年金に移行する場合は、資産の移換がないため、終了の会計処理は適用されません。ただし、改訂によって発生した退職給付債務の差額である過去勤務債務を把握する必要があります。この場合、過去勤務債務は即時に費用処理せずに、平均残存勤務期間以内で規則的に費用処理すること、すなわち遅延認識することができます。

(注:平成24年5月17日公表の企業会計基準委員会「退職給付に関する会計基準」および「退職給付に関する会計基準の運用指針」によって、平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から、「過去勤務債務」は「過去勤務費用」に変更されました。)

《解答》 (1)終了(または一部終了) (2)退職給付債務 (3)過去勤務債務 (4)平均残存勤務期間

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《問3》の「解答・解説」

会計上の特別損益=終了によって減少する退職給付債務-確定拠出年金へ移換する資産の額-未認識債務となります。
終了によって減少する退職給付債務=2,800百万円
確定拠出年金へ移換する資産の額=自己都合要支給額=2,000百万円
未認識債務=0
なので、
2,800-2,000=800(百万円)となります。
また、会計上の特別損益が一括認識される一方で、税務上は、実際に拠出(移換)を行う事業年度に拠出(移換)額が損金となります。
したがって、移換額に係る税務上の損金の額=確定拠出年金への移換額÷分割拠出年数であり、
2,000÷5=400(百万円)となります。

《解答例》

(1)(計算過程)2,800-2,000=800(百万円)

800百万円

(2)(計算過程)2,000÷5(年)=400(百万円)

△400百万円