企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第262号(2013.10.15)
C分野:アセット・アロケーションの基本的な考え方

今回は、ポートフォリオ理論の中からアセット・アロケーションの考え方、期待効用の 考え方を理解しているかどうかを問う問題となります。「理論」というだけでちょっとした拒否反応を示しやすい方が多いところなのですが、いわんとすることは極めて明快です。

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《問1》の「解答・解説」

自分の年齢、投資目的、投資期間などに適したアセット・アロケーションを定量的に決めるときの手段として平均分散アプローチがあります。いきなり専門用語が出ましたね。
実は皆さんも普段使っていることです。ざっくばらんにいってしまえば、平均(期待リターン)と分散(リスク)の二つで議論しよう、ということです。
DCプランナー試験で取り扱うポートフォリオ理論は、基本的にこの平均分散アプローチで話を進めていくと思ってください。
複数の資産でポートフォリオを作ると、その組み合わせは無限にあります。しかし、一般的な投資家にとって、その組み合わせは実は無限ではありません。なぜなら、通常、投資家はリスク回避的だからです。同じリスクならリターンの大きい方を選び、同じリターンならリスクの小さい方を選ぶ、ということです。リスク回避的な投資家が選ぶ組み合わせが、はっきりしてくるというわけです。その組み合わせをグラフ上で観察すると、上に凸となる曲線上に見事に集まってきます。これが、効率的フロンティアです。
投資家はリスク回避的な一面もありますが、いっぽうで自分の好みを看過することはできません。投資家自身の好み(効用)を数値化したものが効用関数です。これも、基本的にはリスクとリターンで記述されます(問題文にある、期待効用の式をあらためて見てください)。
最終的には、効率的フロンティアと期待効用に基づいて、投資家にとって最適なポートフォリオを導くことができます。
アセット・アロケーションを計量的に決定しようとする場合、一般には((1)平均分散)アプローチという方法が用いられる。
まず、複数の資産クラスによるポートフォリオを作ることにより得られるリスクとリターンの組合せを、リスク-リターン平面上にプロットすることにより、効率的フロンティアを導出する。効率的フロンティアは、一般に上に凸の曲線となる。
次に、各投資家の効用を効用曲線という形で表現する。((1)平均分散)アプローチにおいては、((2)リスク回避)的な投資家を前提としており、リスク-リターン平面上は下に凸の曲線として表現される。
最後に、リスク-リターン平面上で効率的フロンティアと効用関数の接点を求めるという形で、投資家にとって最大の効用をもたらす点を最終的なポートフォリオとして選択する。
なお、アセット・アロケーションは、いったん決定してしまえばそれで終わりというわけではなく、各資産の時価が変化した場合には、時価の変化に応じて(③リバランス)を行うことも必要となる。

《解答》(1)平均分散 (2)リスク回避 (3)リバランス

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《問2》の「解答・解説」

投資家が、期待効用によりポートフォリオの選好を判断するものとした場合、候補となるポートフォリオの期待効用の一番大きいものを選好します。これに基づいて、期待効用を計算すると、下記のとおりになります。
ポートフォリオA:2.6-0.01×3.4×3,4=2.4844…→2.48
ポートフォリオB:3.8-0.01×4.9×4.9=3.5599…→3.56
ポートフォリオC:4.7-0.01×6.1×6,1=4.3279…→4.33
したがって、Tさんは、ポートフォリオCを選好する、と判断できます。

《解答例》 ポートフォリオC

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《問3》の「解答・解説」

(1) 外貨預金は、普通・定期の種類によらず、預金保険機構による保護の対象とはなりません。
(2) 格付が低い利回りほど、投資家が見返りとして要求する期待リターンは高くなります。
したがって、この場合、債券の利回りが高くなります。
(3) 一般に、インデックスファンドにおける運用コスト(信託報酬など)は、アクティブ運用を行う
投資信託より低く設定されています。

(4) ファンド・オブ・ファンズは、複数の投資信託を投資対象とする投資信託であり、記述のとおり、
個別の株式を投資対象とはしていないのが一般的です。投資家のファンド選択、リバランスなどの
手間を運用会社に任せることができる一方、運用コストが高くつくデメリットがあります。

《解答例》
① ×:外貨普通預金及び外貨定期預金いずれも預金保険機構による保護の対象とはならない。
② 〇:
③ ×:一般に、インデックスファンドの運用コストは、アクティブ運用を行う投資信託より低い。
④ 〇: